会話型AI(対話型AI)とは、機械学習や自然言語処理などの技術を用いてコンピュータが人間と自然な会話をできるようにする技術のことです。この記事ではその概要や仕組み、種類、適した業務について解説します。さらに、コンタクトセンターで会話型AIを導入することで得られるメリットについても紹介します。
会話型AI(対話型AI)とは
会話型AI(対話型AI)とは、テキストや音声などを用いて、人間とコンピュータが自然に対話を行うことを可能にするテクノロジーのことです。代表的な例としては、Androidのデバイスに搭載されている「Google アシスタント」や、iPhoneなどに搭載されている「Siri」が挙げられます。
会話型AIは、生成AI技術を活用して、自然な会話を行うことを目的としています。生成AIは新しいコンテンツやデータを生成する技術ですが、会話型AIもその一部として、ユーザーと自然に対話を行うためにテキストや音声を生成します。したがって、会話型AIは生成AIの一形態と見ることができます。
会話型AIの仕組み
会話型AIは、主に機械学習(ML)と自然言語処理(NLP)の技術が用いられています。機械学習とは、膨大なデータを読み込ませ、そこからパターンを繰り返し学習させてAIに知能を持たせる技術です。一方の自然言語処理は、人間の会話の中にある曖昧な表現までコンピュータに理解させ、自然言語を使って文章を生成する技術です。この技術を組み合わせることにより、AIは人間が書いたり話したりした言葉の文脈や意図を理解し、自然な返答を自動で行います。
会話型AIは、機械学習や強化学習の技術を活用して、ユーザーとの対話を繰り返し学習し、経験を積むことでさらに精度が向上します。より複雑な対話やコンテキストを理解し、自然で適切な返答ができるようになります。
会話型AIの主な種類
会話型AIには主に2つの種類があります。
チャットボット
チャットボットとは、テキストベースで人間相手にコミュニケーションを行えるように設計されたプログラムのことです。たとえば、ユーザーが自動入力または選択肢から選ぶことにより質問を行うと、人間の会話に近い形でAIが回答してくれます。そのため、PC・モバイル環境における社内サポートや顧客向けの各種問い合わせなどで、幅広く活用されています。
チャットボットには、いくつか種類があります。定型的な問い合わせ業務によく使われているのが「シナリオ型チャットボット」です。これは想定されるシナリオに沿ってあらかじめ回答を準備しておくタイプのチャットボットで、フローチャート形式で会話が進み、適切な回答に導きます。ユーザーの意図に合った正しい回答を提供しやすいのがメリットで、医療や技術系などの問い合わせに適しています。
一方、ディープラーニングや機械学習などの技術を用いて、より複雑な質問に対応できるのが「生成AI型チャットボット」です。生成AI型チャットボットは、ディープラーニングや自然言語生成(NLG)技術を活用して、質問者の意図を深く理解し、適切な回答を生成します。画像を用いた対話や抽象的な表現を含む会話にも柔軟に対応でき、従来のシナリオ型チャットボットに比べてさらに多様な質問に対応できます。そのため、従来のシナリオ型よりもさらに幅広い用途で活用可能です。
ボイスボット
ボイスボットとは、音声認識AIと音声生成AIを活用したシステムのことです。ユーザーがテキストを入力することなく、音声でコンピュータと対話できるため、家電やカーナビなどの音声アシスタントとして幅広く活用されています。
現在、多くのコールセンターやコンタクトセンターでは、IVR(Interactive Voice Response)という音声認識技術を用いた自動応答が導入されています。IVRは、ユーザーの音声入力を受けて、選択肢に基づく音声ガイダンスを提供するものですが、AIを搭載したボイスボットでは、音声認識と音声生成を組み合わせることで、より自然で柔軟な会話が可能になります。
会話型AIに向いている業務
会話型AIに向いている業務のひとつが、カスタマーサポートです。会話型AIを活用すれば、待ち時間の短縮や夜間・休日の対応、人的コストの削減などが可能になり、業務効率化を実現できます。
すでに会話型AIは現在、幅広い分野で活用されています。運送業やホテル、エンターテインメント施設などの各種受付・予約のほか、コールセンターやコンタクトセンターなど、例を挙げればきりがありません。
中には、オンライン上でAIチャットボットによる悩み相談を展開しているところもあります。また、カスタマーサポートの窓口をWebサイトだけではなく、LINEなどのメッセージアプリにも設けて間口を広くし、顧客満足度の向上に努める企業も増えています。
さらに会話型AIは対顧客だけでなく、社内での情報共有に活用することも可能です。具体的な例としては、社内の福利厚生などに関するFAQや、社内ヘルプデスクなどが挙げられます。
コンタクトセンターが会話型AIを活用するメリット
コンタクトセンターが会話型AIを導入すると、以下のようなメリットが得られます。
顧客満足度が上がる
コンタクトセンターが会話型AIを導入することで、簡単な問い合わせならば365日24時間対応可能になります。仕事などでオペレーターが対応できる時間になかなか電話がかけられない顧客にとっては、自分の都合の良いタイミングで対応してもらえることは大きな利点です。
また会話型AIを導入すれば、簡単な問い合わせに対してはAIが回答を担うことで一部自動化が可能です。それにより電話の待ち時間が短縮され、顧客は長い間待たされることなく迅速に回答を得られます。さらに、AIが出した回答であれば、対応の質に差が生じることがなく、一定のクオリティーを保てます。
これらのメリットにより、総合的に顧客満足度の向上が期待できます。
従業員の負担が軽減する
会話型AIを導入すれば、簡単な内容の質問であれば、AIによる自動応答が可能です。これにより、従業員の負担が軽減するだけでなく、複雑な問い合わせにオペレーターが集中できるため、対応品質の向上も見込めます。
またAIを活用すれば、FAQなどを用いてオペレーターが的確な回答を行えます。その結果、業務の属人化や対応品質の格差が緩和され、クレームも発生しにくくなるでしょう。
クレーム対応は、従業員に多大なストレスを与える業務のひとつです。減少すれば従業員の精神的負担が減らせます。コンタクトセンター業界は人の入れ替わりが激しく、慢性的な人手不足に陥りがちなため、従業員の負担軽減は安定的な人材確保につながります。
マーケティングへの活用ができる
会話型AIの導入は、顧客や従業員だけでなく、経営層にとってもメリットがあります。なぜなら、コンタクトセンターに寄せられた顧客の声をAIが収集・分析して、マーケティングに活用できるからです。
AIは顧客からのデータやフィードバックを分析する能力に優れており、この分析結果をマーケティング戦略に活用できます。たとえば、顧客の嗜好や行動パターンを把握することで、製品やサービスの改善、ターゲット広告の最適化、さらには新規顧客の獲得につなげられます。
まとめ
会話型AIは、機械学習や自然言語処理などの技術を用いて、人間と話しているかのような自然な会話を可能にする技術です。テキストをメインとした「チャットボット」や音声での会話に特化した「ボイスボット」といった種類があり、さまざまな企業の問い合わせ業務などに活用できます。
特に会話型AIは人間に近い応答ができるため、コンタクトセンターと親和性の高い技術です。導入すれば、顧客満足度の向上や従業員の負担軽減に加え、マーケティングへの活用が見込めるなど、大きなメリットが期待できます。
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