労働人口減少がコンタクトセンターに与える影響と対策

 2024.07.08  菊池 寛子

日本でもCXが浸透し、企業におけるカスタマーサポートの役割は日々重要性を増しています。
また、多様化する顧客ニーズに対応すべく、コンタクトセンターのオペレーターに求められるスキル要件も高くなっています。
しかし、日本国内においては労働人口が減少が一途を辿り、コンタクトセンターにおいても慢性的なオペレーター不足の状況にあります。
今回は労働人口減少による人手不足がコンタクトセンターにもたらす影響とどのような対策を打つべきかを考えていきます。

労働人口減少がコンタクトセンターに与える影響と対策

デジタルチャネルCX調査 2023年版

労働人口減少がコンタクトセンターに与える影響

労働人口減少が減少することで、実際にはコンタクトセンターにどのようなことが起こり得るのでしょうか。
考えられる影響を考えてみましょう。

① 採用

  • 競争の激化
    全国の有効求人倍率の推移をみてみると、2009年から右肩あがりであったもののコロナ禍で一旦下がり、2021年からまた上昇傾向にあります。
    ■有効求人倍率推移のグラフ(全体)
    労働人口減少がコンタクトセンターに与える影響

※数字は「労働力調査結果」(総務省統計局)より

労働人口全体が減る中で、他の業界と人材を巡る競争が激しくなり、コールセンターも人材確保が一層困難になっています。

②労働コストの上昇

  • 賃金の上昇
    少ない労働力を巡って企業間競争が激化し、賃金の上昇が不可避となっています。
    この結果、コールセンターのコストが増加しています。
  • 福利厚生の充実化
    働き手を確保するために、福利厚生の充実を図る企業も増えており、これもコスト上昇の一因となっています。

③ サービス品質の低下

  • スタッフの経験不足
    労働力不足により、一時的にでもスタッフ不足となるケースが増え、新入社員が即戦力として働くことを期待するようになります。これにより、サービスの品質が低下するリスクが高まっています。
  • 人材の定着率低下
    労働環境が厳しくなると、離職率が高まりがちで、結果として熟練スタッフの定着率が低下しやすくなります。

④企業競争力の弱体化

  • 顧客対応力の低下
    労働力不足が続くと、顧客対応力が低下し、結果として顧客満足度が低下する可能性があります。これが長期的には企業の競争力を削ぐリスクもあります。
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労働人口減少への対策

採用費の高騰だけではなく、企業競争力の弱体化を引き起こしかねない事態をどう回避すればよいのでしょう。
その対策について考えてみました。

①働き方改革と組織文化の改善

  • 研修とキャリアパスの充実
    長期的なキャリア形成をサポートするための研修プログラムを充実させ、定着率を向上させます。
  • ワークライフバランスの推進
    職場環境を改善し、従業員のワークライフバランスを重視することで、長く働き続けたいと思える職場を作り出します。

採用力をあげる、離職率をさげるという2つの効果が期待できるのが、働き方改革や組織文化の改善です。
しかし、これら改善は一朝一夕ではいきません。特に組織文化は定着するまでかなりの時間をかけて多くの人の意識を変えていく必要があります。
一方で、定着すれば、唯一無二のセンターにより、大きな効果を発揮する可能性があります。

②リモートワークの推進

  • 在宅勤務の拡大
    テクノロジーを活用して在宅勤務を推進することで、地理的な制約を超えて広範囲からの人材確保が可能となります。特に子育て中の親や介護をしている労働者にとって働きやすい環境が提供されます。 

弊社、ベルシステム24が2022年11月に実施した求職者を対象としたインターネット調査レポート「在宅コンタクトセンターの受容性調査レポート」では、あなたは在宅勤務で働きたいと思いますか?という問いに対して、約7割(65.9%)の方が「在宅勤務で働きたい」と回答しています。

労働人口減少への対策

※出典:デジタルチャネルCX調査 2023年版はこちら

在宅化は採用の差別化に有効だということがわかります。

但し、こちらも自社で行う場合は、在宅でオペレーションする環境を構築することから始まります。通信やセキュリティなどを考慮した物理的な環境構築もそうですが、ルールや目の前にSVが居ない環境でオペレーターが困らないような支援といったソフト面での運用構築も必要なため、費用と時間がかかります。

③自動化ソリューションやAIの活用

  • チャットボットやボイスボットなど自動応答ソリューションの導入
    AIを活用したチャットボットやボイスボット(音声自動応答)の導入により、労働力の補填が可能となり、人手不足を補うことができます。
    また、24時間365日での顧客対応も可能となります。
  • 音声認識ソリューションの導入
    お客様とオペレーターの通話音声がテキスト化されますので、終話後の応対履歴の入力の工程を削減することが可能です。これにより全体的な効率化が図れるため、オペレーターの人員を減らすことが可能です。
    また、品質管理のための通話内容のチェック工数の削減やVOC蓄積・抽出・分析が効率的に行えるようになる点もコンタクトセンターにとっては大きなメリットです。
  • RPA(ロボティックプロセスオートメーション)
    コンタクトセンターでの業務は様々な事務業務も発生します。
    定型な事務業務を自動化することで、スタッフがより高付加価値な業務に集中できるようにします。

④顧客の自己解決促進

  • オムニチャネル化
    顧客との接点をWebやチャット、メールなど多岐に渡らせることで、効率的な対応が可能になります。
    企業のWebサイト上で顧客が自己解決を図れるようにFAQやチャットボットにすぐにいけるように導線をわかりやすくしたり作り、回答やシナリオを適切にセットすることでオペレーターを介すことなく顧客は自己解決を図ることができますので、電話自体の呼量を削減できます。
    また、チャネルの最適化は多様化する顧客ニーズに対応しCX を向上させるためには必要な戦略なひとつです。

これらの対策を組み合わせることで、人口減少の影響を緩和し、サービスの質を維持しつつ競争力を保つことが可能となります。

まとめ

コンタクトセンターの多くの業務は、業務個別の知識やルールを習得する必要があるため、採用力をあげたとしても、離職率が高ければ品質の担保が困難になります。採用費も企業の経営状態を圧迫します。離職率を低減し品質を維持・向上させながら、デジタルチャネルや生成AIを活用して、業務自体を削減したり、自動化することが有効です。
そこでコンタクトセンターが労働人口減少による採用難という状況に立ち向かうためには、「離職率の低減」と「テクノロジーを活用した業務効率化」が重要と言えるでしょう。

執筆者紹介

菊池 寛子
菊池 寛子
新卒から10年以上ダイレクトマーケティング業界でフルフィルメント、通販事業の業務設計を担当し基幹システム・CRM構築などのPjtに参画。その後BPO業界に転身し、企業向けサービス、ソリューションの企画・開発を経験。現在はオウンドメディアでのデジタルマーケティングの運用を行っている。
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