KCS(Knowledge-Centered Service)に準拠した運用設計が
コンタクトセンターの未来をどう変えるのか?

 2025.04.28  竹田 努

これまで第1弾のKCS(Knowledge-Centered Service)とは?コンタクトセンターの業務効率化と顧客満足度向上への革新的アプローチではKCSの基本概念、ナレッジの作成・維持プロセスを解説。第2弾の事例から見るKCS(Knowledge-Centered Service)に準拠した運用設計のメリットとポイントでは、導入企業の事例を紹介し、FAQの充実が問い合わせ減少につながった成功例や、ナレッジ活用の工夫について展開いたしました。今回の記事では、KCSを導入することで、コンタクトセンターの未来の姿がどう変わるのか?といった視点で紹介いたします。

KCS(Knowledge-Centered Service)に準拠した運用設計がコンタクトセンターの未来をどう変えるのか?

ナレッジ管理とは?手法や目的も併せて解説

KCSの現状と進化の必要性

企業が直面しているKCS運用の課題

KCS運用において、ナレッジの更新が適切に行われないと、古い情報が残り続ける問題が発生します。問い合わせ内容が変化してもナレッジが更新されなければ、利用者が誤った情報を参照し、問題解決が難しくなります。また、更新作業が特定の担当者に依存している場合、その担当者が異動や退職すると更新が滞り、運用の継続性に支障をきたします。さらに、更新頻度が低いと、実際の問い合わせ傾向と乖離し、ナレッジの活用率が低下します。
これらの問題の背景には、更新フローの煩雑さやナレッジ共有の文化の醸成不足、運用負担の偏りなど様々な事象があり、解決するためには組織的な対応を必要とします。

なぜ今、KCSの進化が求められるのか?

  1. 顧客の期待の変化
    顧客はより迅速な対応かつ正確なサポートを期待します。これに応えるためには、コンテンツが柔軟に進化し、最新の情報を素早く提供できるシステムを構築することが不可欠となります。
  2. 業務の複雑化
    業務を継続することで、業務範囲が広がり、問い合わせも多様化していきます。これにより、従来のナレッジでは対応しきれないケースが増加していきます。新たな業務要求に応じた、よりダイナミックで柔軟なKCS運用が必要とされています。
  3. 競争優位性の確保
    効果的なナレッジ活用は、企業の競争力を高める鍵となります。ナレッジを進化させ、より迅速で質の高いサポートを提供することが、他社との競争において重要な差別化要因となります。
  4. テクノロジーの進化
    AIや機械学習などの技術が進化し、顧客対応の効率化や精度向上が可能になりました。これらの最新技術を取り入れることで、ナレッジの更新作業や情報提供の自動化を進めることが可能になります。特に、AI連携による検索精度向上や問い合わせ傾向に基づく予測機能など、オペレーターを強力に支援することが求められます。
  5. 運用負担の軽減
    多くの例ではナレッジ運用が担当者に依存しており、更新作業や管理負担が大きいのが現状です。進化したKCSでは、AIや自動化を活用することで、運用負担を軽減し、担当者が創造的な業務に集中できるようにすることが求められています。

これらの要素を踏まえると、KCSの進化は単なる効率化にとどまらず、顧客満足度の向上、業務の柔軟な対応、競争力の強化、そして運用負担の軽減に繋がり、企業にとって不可欠な要素であると言えます。

コンセンタクトセンターにおけるナレッジマネジメントの革新
ナレッジマネジメント事例集

AI・自動化との融合でKCSはどう変わるのか?

現在、生成AIやRAG(Retrieval-Augmented Generation)などの最先端技術との融合が進むことで、KCSは大きな変革を遂げつつあります。これらの技術は、KCSの運用方法にどのような影響を与えるのでしょうか?

生成AIによるナレッジ更新の自動化

  • 生成AIは、企業が持つ膨大なデータや過去の問い合わせ履歴を解析し、新しいナレッジを自動的に生成する能力を持っています。これにより、従来の手動でのナレッジ更新作業が大幅に効率化され、ナレッジが常に最新の状態に保たれるようになります。例えば、生成AIが問い合わせ内容を分析し、その回答をリアルタイムで生成することが可能になり、オペレーターは迅速に対応することができます。

RAGによる検索精度と回答の質向上

  • RAGは、既存のナレッジベースから関連する情報を検索し、それを元に新たな回答を生成する技術です。この技術は、ナレッジベースに蓄積された情報を効果的に活用し、より精度の高い、かつ適切な回答を提供することを可能にします。問い合わせの種類が多様化する中で、RAGはナレッジベースの情報を引き出し、最も関連性の高い情報を迅速に提供するため、顧客対応の品質が格段に向上します。

効果的なKCS運用のための自動化活用

  • 自動化の技術は、KCSの運用における「進化」を促進し、企業の競争力を高める鍵となります。これらの技術を取り入れることで、KCSの運用はより柔軟で効率的になり、迅速に変化する市場や顧客の期待に応えることが可能になります。自動化による変革は、単に業務の効率化にとどまらず、顧客体験の向上やコストの負担軽減、さらには競争優位性の確保に直結します。

ナレッジベースの進化とパーソナライズ化

AI技術を活用することで、ナレッジベースは単に質問と回答の集積から、よりパーソナライズされた形に進化します。AIは顧客の過去の問い合わせ履歴や行動データを学習し、個々のニーズに最適化されたナレッジを提供することができます。これにより、顧客一人ひとりに対してより精度高く、満足度の高いサポートが可能になります。

今後、AIやRAGなどの技術がKCSの中心に組み込まれることで、ナレッジの進化とその活用方法は大きく変わると考えられます。
企業はこれらの技術を活用して、より高品質なサポートを提供し、業務を最適化することが求められています。
当社では、こういった生成AIやRAGを用いて、KCSをより高度化するための技術を開発しており、KCS運用と、生成AI技術によるハイブリッドなKCS運用を目指し、HOL「HybridOperationLoop」の立ち上げを開始しております。
「Hybrid Operation Loop」は、生成AIとヒトによるコンタクトセンターでの業務ループ構造を設計し、回答の自動生成に特化した生成AIと、ナレッジの自動生成に特化した生成AIをプロセスに組み込むことで、応対の通話データからナレッジベースを自動生成する技術・仕組みを搭載したベルシステム24独自開発の自動化ソリューションです。

AI・自動化との融合でKCSはどう変わるのか?

未来のコンタクトセンター像 – KCSを基盤とした新たな顧客体験

コンタクトセンターの進化は、ただ単に顧客からの問い合わせに対応することにとどまらず、顧客体験(CX)を中心にした全体的なサポートシステムに変化しています。これからのコンタクトセンターは、KCSを基盤にして、より高度で柔軟なサービスを提供することが求められます。

オペレーターの役割変化

単なる回答者ではなく高度な問題解決のスペシャリストへ

  • 従来のコンタクトセンターオペレーターは、顧客からの問い合わせに対して単純な回答を提供することが主な役割でした。しかし、今後はオペレーターの役割が大きく進化します。KCSを基盤としたコンタクトセンターでは、オペレーターは「顧客体験のデザイナー」として、単なる回答者ではなく、顧客が抱える複雑な問題を解決するスペシャリストとして活躍します。

AIエージェントとの協働

人+AIのハイブッドモデル

  • 未来のコンタクトセンターでは、AIエージェントと人間オペレーターの協働が不可欠です。AIエージェントは、顧客からの一次対応を自動化し、簡単な問い合わせに即座に対応することができます。これにより、オペレーターはより複雑で高度な問題に集中できるようになります。より難易度の高い問題に直面した場合には、オペレーターはAIを活用しながら問題解決を行います。

KCSが支える自己解決の世界

FAQ・チャットボット・コミュニティを通じたサポートモデルの発展

  • KCSの根底にある考え方は、顧客が自己解決できる環境を提供することです。これを実現するためには、FAQ、チャットボット、さらにコミュニティが重要な役割を果たします。FAQやチャットボットは、顧客が簡単にアクセスでき、迅速に解決策を見つけられる手段を提供します。さらに、ユーザーコミュニティの活性化も重要です。顧客同士が情報を交換し合い、問題解決のために助け合うことができる場を提供することで、KCSは単なるサポートの枠を超えて、顧客同士のつながりを生み出す力を持ちます。

これらの要素を総合的に取り入れることで、未来のコンタクトセンターは、よりパーソナライズされた、効率的で、顧客中心のサービスを提供できるようになります。KCSを基盤にしたアプローチは、単なる問題解決を超え、顧客の期待を超える体験を提供するための重要なカギとなるでしょう。

今から準備すべきこと

企業が今から準備すべきポイントは、AI時代に適応したナレッジ管理の運用やセキュリティ強化、そしてオペレーターのスキルシフトです。これらの要素をいかに適切に整備し、運用するかが今後の競争優位性を生むカギとなります。
AIによる自動生成されたナレッジの精度管理が重要です。誤情報を防ぐため、明確なガイドラインを策定し、定期的なトレーニングとレビューを実施する必要があります。
これにより、AIが生成するコンテンツの正確性を保証し、顧客に対する信頼性を高めることができます。
また、データガバナンスとセキュリティ強化は欠かせません。機密情報や個人情報を適切に管理するため、アクセス権限やデータ暗号化を強化し、コンプライアンスに則った運用を行うことが重要なポイントになります。
さらに、オペレーターにはナレッジ管理やAI活用スキルの向上が求められます。AIと協力して働けるスキルを身につけ、生成されたナレッジの精度を評価し、問題解決に活かす能力を育成することが重要です。オペレーターの経験と専門知識を尊重し、AIとの協働を成長機会として捉え、積極的に巻き込むことで、共に新たな価値を創造する文化を築くことが鍵となります。

まとめ

KCSの運用は、ナレッジの更新が不十分だと古い情報が残り、誤った解決策を提供するリスクがあります。これにより顧客満足度が低下し運用が滞ってしまいます。そのためにもAIや自動化技術を活用することで、ナレッジの更新が効率化され、問い合わせ内容に即した最新情報が提供可能になります。KCSの進化を通じて競争優位性を高めることで、迅速な対応と高品質な顧客サポートが実現すると確信いたします。

執筆者紹介

竹田 努
竹田 努
2004年に入社後、10年ほどは大型コンタクトセンターを中心に、オペレーション、経営企画、営業(プライシング)、事業管理部門など経験。その後アソシエイトパートナーとして、各種業界(通信、金融、メーカー、小売り、サービス業)のコンタクトセンターのソリューション導入、生成AIの活用や、データ活用など幅広い分野でプロジェクトを牽引。プロジェクト管理、統括責任者としての実績が豊富で、顧客に寄り添うことをモットーにしております。
ナレッジCXデザインサービス

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