生成AIが広がりつつある今
企業がやるべきことは何か?(後編)

 2025.03.31  横山 敬一 氏

生成AIやDXの活用が叫ばれる中、現状まだファーストステップを踏み出すことができず、曖昧な課題感を持ったまま悩まれている企業も多いのではないでしょうか。この記事では生成AIの本質的な企業へのインパクトや、どのように向き合っていくべきかについて前編・後編に分けて記述させていただきます。

生成AIが広がりつつある今企業がやるべきことは何か?(後編)

生成AIがもたらす革新と可能性

生成AIを導入するに当たっての3つの壁

今後生成AIやAI技術は進展し、AIの技術的な性能は上がっていきます。
特に未来像からバックキャスト的に思考した場合、「5~10年後を見据えた時、企業の基幹システムやワークフローにAIが組み込まれて当たり前のように生成AIを使っている」と考えています。

一方で、現状の多くの企業が生成AIを導入するにあたってPoC段階になっていたり、検討状況になっていたり、今やるべきかを悩んでいる状況にあり、特に「生成AI技術はこれから向上していくのだから、今すぐ着手せずに数年後に発展した段階で導入すれば良いのではないか?」という意見も伺います。これには「AIの複利的効果」と「AI導入における3つの壁」という2つのポイントが重要であると考えています。

「AIの複利的効果」とは、AIが業務効率性を向上させることによって、既存事業ではPDCAサイクルの速度が向上する上、アセットやデータを蓄積し、既存の従業員が新規事業にリソースをさくことによって事業のレジリエンスを向上させることができるということです。後発になってしまうと、同じ領域でAIを前提としたワークフローを構築できているかどうかによってポジショニングが大きく変わってしまいます。これは効率性が足し算的にではなく、複利的に効いてくるために大きなものになります。

次に「AI導入における3つの壁」についてです。AIを導入するには「AI技術の壁」だけでなく「業務の壁」、「データの壁」があります。小さいスケールでもAI導入を進めた知見が社内に溜まっていない状態で、これからAIを導入しようとするとこの3つの壁が関わってくるため、単に技術が向上した未来においてすぐに使える状態に持っていくことは困難であると考えております。

生成AIを導入するに当たっての3つの壁

5~10年後にAI完全自動化や全社的なAI活用が進んでいるとしたときに、まず人間+AIを目指すというのが今やるべきことであると考えています。その過程でAI活用を前提とした「社内データの整理」「業務・ワークフロー」の整理に取り組んでいくことが重要であると考えております。

一般的なワークフローにおける課題は「効率性」と「属人性」にあります。ある業務が長年の経験者に依存してしまっているケースや人によってやり方がバラバラになっているケース、やり方が整理されていない・非効率的なために時間がかかってしまっているケースなど、「データ≒知見」と「業務・ワークフロー」が絡んでいます。

 「データの壁」としては、そもそもデータの量が少ないケースやフォーマットにばらつきがあるケース、散らばっていてすぐに使える状態でないケースといった課題があります。ここで重要なことは単なる情報共有や電子化といったものだけではAIが活用できない可能性があるということです。AI Readyな、構造化された状態のGoal・理想像を明確にして取り組んでいく必要があるために、具体的なユースケースに応じてスモールでもAI導入を進めることが社内への展開には重要であると考えております。これこそ今取り組むべき意義です。工数削減だけで考えた時に、必ずしも今のAI性能では完全に費用対効果が出ない場合でもこのような未来像へのステップとしてプロジェクトを推進すること自体に副次的効果があります。

 「業務・ワークフローの壁」としては、手順が整理されていない、人それぞれでやり方が異なる、経験値によって表面的に現れない問題を解決しているケースといった課題があります。こちらの方が「データの壁」よりなかなか突破しにくいことが多いと考えております。企業やそれに関わる人間が長年関わってきた業務はそもそも現状どうなっているか把握できていないこともしばしばあり、各個人レベルでやり方が異なる場合、現行の作業の合間でヒアリングするなど長期で実施していく必要があります。

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企業は今生成AIにどう向きあうべきか?

「データの壁」や「業務・ワークフローの壁」の両方において、一定整備することを社内の人間で行っていくことは可能です。しかし、その整理の仕方は目的を持って、かつ実際にAI活用されるユースケースを想定しながら整理しなければ、再びやり直しになってしまいがちであり、繰り返しになりますが今スモールにでもAI導入PJを進めていくことが重要です。

その上でAI+人間のワークフローを定義するには、「今のレベルでAIがどこまでできるか?」という論点と「技術的実現可能性とインパクトからどこからAIに任せていくべきか?」という論点が重要になります。

企業は今生成AIにどう向きあうべきか?

例えば、スライド生成AIという構想を考えた時に、スライド作成にも多くのステップが存在しています。アイデア出しやレビューなどの業務、その中で属人性の大きさや工数・そしてデータやAI技術的に実現可能かといった優先順位を策定することが重要です。

まずこのような現状を整理し、AIの導入を推進しながら「データの壁」や「業務・ワークフローの壁」を突破し、5~10年後に成熟したAI技術を導入できる器を作ること、その経験値を蓄積することが重要です。

まとめ

生成AI・基盤モデルの登場により、データが少なくとも多くの企業が幅広いタスクに短い時間でAI導入できるようになり、PDCAサイクルが高速化していくことから差がつきやすくなっていく時代が訪れています。
また同時に、完全にAIを戦力化した5~10年後の企業像を考えた時に、AIのプロジェクトを実施しながら「データの壁」「業務フローの壁」を突破していくことが重要です。

株式会社EpicAIでは企業のバリューチェーン全体にAIを活用しサイクルを高速化する状態を実現するため、幅広いAI技術をもとに顧客のフェーズに合わせてオーダーメイドで生成AIをはじめとしたAI技術の実装およびコンサルティングを行なっております。課題感があるもののどうすれば良いかわからない、何から着手すれば良いかわからないといった方は是非こちらからアクセスください。

執筆者紹介

横山 敬一 氏
横山 敬一 氏
株式会社EpicAI
代表取締役 CEO

東京大学グローバル消費インテリジェンス寄附講座(GCI)にて講師。株式会社松尾研究所にてチーフAIエンジニアを務め、株式会社EpicAIを創業。
株式会社EpicAIでは画像認識技術・マルチモーダル生成AI技術を活用したデータ活用・AI技術に強みを持っており、製造や建設・不動産の領域での図面データの活用ソリューションやカスタマーサポートへの生成AIソリューション等オーダーメイド開発のソリューションを提供しております。
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