近年、コンタクトセンターで新たに導入が進んでいる「チャットボット」や「ボイスボット」。これらと語感の似た用語に「ボイスチャット」がありますが、ボイスチャットはそれらとは全く別のシステムです。
本記事では、ボイスチャットの概要や、コンタクトセンターにおける既存の自動化システムとその課題について解説します。
ボイスチャットとは
ボイスチャットとは、ネットワークを通じ、2人以上の相手と音声を用いてメッセージを交換するシステムです。リアルタイムにやり取りできることが特徴のひとつです。ボイスチャットを行う際は、専用のマイクやスピーカー、もしくはヘッドセットなどのハードウェアを使用します。
現在はオンラインゲームの利用者同士のコニュニケーションで多く利用されており、「スカイプ」のようなインターネットを使ったビデオ通話などもボイスチャットの一種です。
ボイスチャットは双方のネット回線速度が十分な場合、固定電話と遜色ない音質で通話ができ、遅延はほとんどありません。
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コンタクトセンターにおける自動化システムと課題
需要が拡大しているコンタクトセンターですが、離職率の高さや人手不足が悩みの種となっています。その解決策として、寄せられる問い合わせに対して自動で対応するシステムが活用されています。現在導入されている自動化システムには、チャットボットやIVR、音声認識などがあります。これらのシステムにはさまざまなメリットがあるものの、決して万能ではなく、それぞれ課題も抱えています。
チャットボット
チャットボットとは、人が入力したテキストの意味を認識し、蓄積されたデータを基に全自動で回答を行うプログラムのことです。プログラムは、ユーザーが入力したテキストの内容に対し、決められたパターンに従って回答を返します。
顧客は、スマートフォンからでもPCからでも、Webページに設置されたボタンをクリックするだけで気軽に質問することができます。LINEなどのメッセンジャーアプリの利用が進んだことなども背景として、近年はさまざまな企業へ導入が拡大しています。
事前にデータを学習させる手間はかかりますが、これまでは手動で行っていた単純な問い合わせへの回答をすべて自動化できるようになります。加えて、複数の顧客からの問い合わせに対して、同時回答も可能となるため、省人化に非常に有効です。
また顧客側も、365日24時間いつでも利用し、問い合わせ内容への回答を瞬時に受け取れます。それにより、顧客満足度の向上も期待されています。
最近ではチャットボットにAIを搭載することで、これまでは不可能だった大量のFAQデータを抱えるコンタクトセンターでも導入できるようになりつつあるようです。
その一方で、チャットボットが質問に対して正確な回答を返すためには、膨大な量のデータを整備しなければならないという課題もあります。事業者が提供するザービス内容によっては、チャットボットでの対応に不向きな場合もあります。また、チャットボットは複雑な質問には対応できないため、適切なタイミングで素早くオペレーターにつなぐ仕組みが必要です。
IVR
IVR(Interactive Voice Response)とは、音声案内によって自動で応答する装置のことです。コンタクトセンターなどに電話をかけた際、最初に流れる音声ガイダンスなどが該当します。
IVRは、顧客から入電があった際、音声案内や入電理由に応じた番号入力の案内を流し、対応する部署のオペレーターに電話を振り分ける仕組みです。中には宅配便の再配達受付サービスなどのように、オペレーターが対応せず、番号の入力などで完結できる場合もあります。
最近では、本人確認に必要な情報もIVRから収集できるようになっています。個人情報はこれまでオペレーターが口頭で確認していましたが、IVRなら本人確認に必要なフローをオペレーターにつながるまでの待ち時間で行えます。顧客にとって時間短縮になることはもちろん、オペレーターにとっても、業務の負担軽減へつながるでしょう。
ただしIVRにも弱点はあります。例えば、分岐が多くなる問い合わせは、ガイダンスによる振り分けを行わず、直接オペレーターにつなげた方が早い場合があります。顧客側からすれば、IVRではガイダンスに従って番号を入力していかないとオペレーターにつながらないため、ストレスを感じやすい点がデメリットです。
また、質問したい内容がどのカテゴリに該当するのかわかりにくい場合、顧客はガイダンスを最後まで聞いてから「その他」を選択しなければならないため、無駄な待ち時間が生じてしまいます。
音声認識
音声認識システムとは、AIが音声を認識してリアルタイムでテキストに書き起こしてくれるシステムです。コンタクトセンターでは、オペレーターの後処理時間の短縮に役立てられています。
また、顧客の声の調子から感情を分析し、怒りのトーンを察知してアラートを出す機能などもあります。この機能を使えば、一般のオペレーターでは対応が難しいコールを素早く監督者に引き継げるようになり、クレームの防止やオペレーターの精神的負担の軽減などにも効果的です。
テキスト化機能を使ってオペレーターの対応を効率的にフィードバッグしたり、テキストから回答文を自動検索し、オペレーターにサジェストしたりするなど、企業によってさまざまな方法で活用されています。
音声認識システムの課題としては、精度の低さが挙げられます。顧客の声が小さかったり、ノイズが多かったりすると、システムが音声を正確に認識できません。そのため、コンタクトセンターに導入する場合には、個室ブースを設けるなど音声を正確に認識できる環境を整える必要があります。
音声認識システムもチャットボット同様、膨大な音声データとテキストデータをAIに学習させることで精度を高めています。実務に対応できるようにするためには、それなりの量のデータとそれを覚えさせる期間が必要です。
コンタクトセンターにおけるボイスチャットの有効性
従来の音声認識やIVRの課題を解決するために登場したのが「AI for VoiceBot」です。これは、音声認識と自然言語認識技術を駆使した、IVRソリューションです。顧客の問い合わせ内容を、音声認識エンジンで解析し、要件を特定して適切なオペレーターにつなぎます。
従来のIVRでは、「自分の問い合わせしたい内容が、どのカテゴリに分類されるのかわからない」といった問題が、顧客側に生じていました。「AI for VoiceBot」なら、顧客の音声を認識して、問い合わせされている内容を自動的に適切なカテゴリへ振り分けます。そのため、ガイダンスの途中で顧客が迷う心配もありません。
また、事前に設定されたヒアリングフローを基に、音声チャットボットで顧客の入電理由を簡易的にヒアリングすることも可能です。ヒアリングした内容は、着信の直前にオペレーターへとポップアップで通知されます。これにより、対応時間の短縮を実現します。
まとめ
ボイスチャットは、ネット回線を通じて通話ができるシステムです。これと響きの似たチャットボットという言葉は、全く性質が異なるシステムを指しており、テキストや音声を通じて自動的に会話を行うもののことです。
最近では、AIを搭載した音声チャットボットが登場しています。コンタクトセンターの運営でお悩みの方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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