RAG (検索拡張生成) とは? 仕組みや活用例について解説

 2024.08.23  2024.08.30

近年では、FAQなどに生成AIを活用する事例が増えています。しかし、なかにはAIが誤回答を生成してしまうなど、さまざまな課題を抱えている企業も少なくありません。こうした問題の解決に有用な技術として注目を集めているのがRAG(検索拡張生成)です。本記事では、RAGの概要やファインチューニングとの関係、実装時の課題と活用例を解説します。

RAG (検索拡張生成) とは? 仕組みや活用例について解説

生成AIがもたらす革新と可能性

RAG(検索拡張生成) とは

RAGとは、生成AIの一部であるLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の回答精度を向上させる技術です。ここでは、

  • RAGの概要
  • 注目を集める背景
  • RAGとファインチューニングの違い

について解説します。

RAGの概要

RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の頭文字をとった略称です。Retrievalが「検索」、Augmentedは「拡張」、Generationが「生成」を意味するため、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれています。

RAGでは、自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)の技術を用いて人間が話す言葉を理解し、テキストを生成する大規模言語モデル(LLM)の情報と外部情報とを組み合わせることによって、正確な内容のテキストを生成することが可能です。具体的には、LLMが回答を生成する前段階で外部の最新情報を検索し、得られた情報を回答に反映させる仕組みです。RAGは、従来の生成AIの回答で課題になっていた情報の古さや誤回答のリスクを改善するのに有効な技術として注目が集まっています。

注目を集める背景

RAGが注目されるようになった背景には、LLMで課題とされてきたハルシネーション(Hallucination:AIの幻覚)の抑制と回避が期待される点にあります。通常LLMでは、入力されたプロンプト(質問や指示)に対して、学習済みのデータをもとに回答を生成しますが、AIはこの回答が正しいのか誤っているのかは判断できません。参照したデータベースの情報が古かったり、間違ったりしていると、LLMは不正確な回答を生成してしまうことがあります。これがハルシネーションと呼ばれる現象です。

一方、RAGでは、LLMがすでに学習済みの内容に加えて、インターネットや企業の最新のデータベースといった外部の最新情報も参照して回答を生成します。最新情報をベースに自社のビジネスに特化した回答を生成できれば、自社の信頼性の向上に有効です。

今後、AIのビジネス活用を進めていくためには、RAGの技術が不可欠であることから注目を集めています。

RAGとファインチューニングの違い

生成AIの回答精度を向上させる技術に「ファインチューニング」があります。RAGとファインチューニングは、AIの回答精度を上げるという目的は同じですが、回答精度を上げるためのアプローチに違いがあります。

ファインチューニングとは、人間の手によって、生成AI(LLM)自体が保有する情報をアップデートする作業です。具体的には、特定のドメインやニーズにあわせ、モデルに追加のデータを再学習させることで精度を向上させます。

これに対してRAGでは、生成AIに学習させるのではなく、AIが参照できるデータベースを用意します。わかりやすく例えると、人間が教師役となって、AI(生徒)に正しい知識を身につけさせようとするのがファインチューニングです。生徒が正しい知識にアクセスできるよう、教科書などの正確な最新資料を提供してあげるのがRAGに相応します。

LLMをベースにした生成AIサービスのひとつにChatGPTがあります。ChatGPTは、主にインターネット上のデータをもとに学習して回答するため、一般的な内容に対しては高い回答精度を発揮するものの、専門的な内容に弱いことが欠点です。この欠点を補い、企業が業務や自社製品などのFAQにChatGPTを使用する際は、RAGで特定のデータを参照させると効果的です。

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RAG(検索拡張生成)の仕組み:処理の流れ

RAGの処理のフェーズを、大まかに分類すると「検索」と「生成」とに分けられます。

1. 検索段階:Retrieval Phase

ユーザーが生成AIに質問を入力すると、RAGはその情報をもとに検索を実行します。RAGで活用する主なデータソースは、企業や組織が保有する内部データやインターネット上の最新情報です。RAGの検索方式には「ベクトル検索」「キーワード検索」の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

  • ベクトル検索
    単語の意味を捉えて関連情報を検索する方式です。文脈を理解する能力が高く、関連性の高い情報を見つけ出せるというメリットがある反面、開発コストが高い点はデメリットに挙げられます。
  • キーワード検索
    用語や文字列のパターンをもとに情報を検索する方式です。比較的簡単に実装でき、高速に動作しますが、大量のデータを扱う際にはパフォーマンスが低下する可能性があります。

実際に実装する際には、それぞれのデメリットを補うために、双方を組み合わせた「ハイブリッド検索」を採用するケースもあります。

2. 生成段階:Generation Phase

検索段階で取得した情報をもとに、LLMはユーザーの入力に対してテキストを生成します。具体的なプロセスは以下の通りです。

  1. 情報統合:ユーザーの質問と検索段階で取得した情報を統合する
  2. テキスト生成:統合された情報を基にして、適切な回答を生成する
  3. 回答の提供:生成された回答をユーザーに返す

RAG実装時の課題

RAGの導入は大きなメリットが期待できる反面で、実装時に押さえておくべきいくつかの注意点があります。

  • 出力結果が外部情報に左右される
  • 意図せず、機密情報を生成する懸念がある

といったことです。

出力結果が外部情報に左右される

RAGを導入しても、AIの回答精度がデータソースに依存していることに変わりはありません。そのため、検索先の情報に問題がある場合は、回答精度に悪影響を与える可能性があります。したがって、RAGで参照させる情報源は、常に正確性や最新性を保つことが重要です。上述したようにAIは正誤判断ができません。回答内容に関するファクトチェックを実施する必要もあります。

意図せず、機密情報を生成する懸念がある

RAGの実装時には、社内機密情報の取り扱いに十分な注意が必要です。RAGで参照させるデータベースに機密情報が含まれていると、本来であれば一般従業員が閲覧権限をもたない情報が生成される可能性があります。機密情報の漏洩を防止するには、RAGが参照するデータに対し、機密レベルに応じた厳格な制限をかけるなどの適切な対策が求められます。

RAGの活用例:顧客対応の業務効率化・精度向上

RAG(検索拡張生成)の具体的な活用例に、コンタクトセンターにおけるチャットボットが挙げられます。顧客対応の自動化やオペレーターの情報確認を効率化するには、AIチャットボットの導入が有効です。しかし、チャットボットが誤った回答を生成するリスクにも目を向けなければならず、これには相応の人的リソースを投じなければなりません。

RAGは、こうした問題の解決にも有効です。RAGを活用して、チャットボットにFAQやオペレーションマニュアルといったデータソースを検索させることにより、正確な最新情報をもとにした回答を生成できるようになります。これにより、誤回答のリスクを大幅に低減できれば、従来は人力での確認が必要だった作業をほぼ自動化することも可能です。同時に、オペレーターによる回答のバラツキを減少させ、標準化された高品質な対応も実現できます。その結果、顧客への対応品質が向上し、顧客満足度の向上も期待できます。

まとめ

RAG(検索拡張生成)は、生成AIに特定のデータベースを参照させることで、回答精度を上げ、正確で信頼性の高い情報提供を実現する技術です。例えば、コンタクトセンターのチャットボットにRAGを活用すれば、その回答品質を向上できるため、顧客対応業務の自動化や効率化の促進が期待できます。

AIをはじめとする最新のIT技術は、コンタクトセンターのシステムや業務革新の可能性を秘めています。ベルシステム24が提供するクラウド型次世代コンタクトセンター基盤「BellCloud+®」では、無人化対応を実現するチャットボットや音声認識、テキストマイニング、感情解析など、AI技術を活用したさまざまなシステムと連携できます。

最新の技術を駆使したコンタクトセンターシステムの導入を検討している企業担当者の方は、ぜひご相談ください。

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