企業と顧客をつなぐ重要な役割を担うコンタクトセンターですが、オペレーターの人手不足に加え、離職率の高さが問題となっています。そこで今注目されているのが、「AI(人工知能)による感情分析を活用してオペレーターのストレスを緩和させよう」という試みです。本記事では、AIによる感情解析の概要とメリットについて詳しく解説します。
コンタクトセンターの課題
コンタクトセンターは慢性的に人手不足の状態です。その原因は単にコンタクトセンターという職種に人材が集まらないというだけでなく、雇用したオペレーターの離職率が高いことにあります。
コンタクトセンターには、日々顧客からさまざまな問い合わせが寄せられます。顧客の疑問や不安を解消し感謝の言葉をもらうこともあれば、辛辣な意見や辛い言葉を投げかけられることも少なくありません。なかでもクレーム処理はもっとも難しく、オペレーターのストレスが溜まりやすい仕事なのです。
ここでSV(監督者)がオペレーターのストレスケアや管理をしっかり行えていれば、オペレーターの離職率が極端に高まることはないでしょう。ですが、オペレーター一人ひとりにまでは、SVの目が行き届いていないのが現状です。このような状態が続けばオペレーターの離職を防ぐことはおろか、優秀な人材を育成することも難しくなるでしょう。
優秀な人材が育たないコンタクトセンターでは顧客満足度を向上させられないため、結果として企業の成長も見込めなくなってしまいます。そこで今、AI技術を活用した感情解析を使って、オペレーターのストレスを緩和させようとする企業が増えてきているのです。
AI(人工知能)による感情解析とは
AIによる感情解析とは、読んで字のごとく「人間の感情を人工知能が解析する」というものです。長年、人間の感情は人間にしか理解できないと考えられてきました。そのため、「AIに人の気持ちがわかるの?」と疑問に思う方も少なくありません。
しかしAI技術の進歩はめざましく、人間の表情や声色、言語などを分析して相手がどのような感情を抱いているのかを、今日では分析できるようになりました。
解析内容はサービスの提供元によってさまざまですが、主に「悲しみ」「不安」「怒り」「恐れ」「好き」「喜び」などの感情に振り分けられ、解析を受けた人物が置かれている心理状況を客観的に把握することが可能です。そしてそれらのデータを基に、オペレーターのストレスを数値化し、心理的負荷がかかりすぎている従業員を特定します。
そうすることで、ストレス値の高いオペレーターに対して適切なケアが行えるようになり、離職の抑止につながると考えられているのです。
AI(人工知能)による感情解析の方法
AIは「テキスト」「表情」「音声」の3要素に基づいて人間の感情を解析します。1つの要素だけで解析するのか、複数の要素を組み合わせて解析するのかは、サービスの提供元によって異なります。ここからは、AIによる感情解析の方法を見ていきましょう。
テキスト
AIは自然言語処理(普段自然に使っている言葉を処理する技術)という技術を使って、人間の書いた文章から感情を分析します。文章中に出現する単語や言葉遣い、文脈、表現などさまざまな要素に基づき、文章を書いた人間がポジティブな感情であるか、ネガティブな感情であるかを判断するのです。
また、自然言語処理で抽出したデータを活用して、テキストマイニング(出現しやすい単語や文章の傾向などを分析する技術)を行うことで、さらに感情解析の精度を高めていきます。なお、AIは初めに基本的なデータと判断基準を与えれば、あとは自分で学習することが可能です。顧客とのやり取りなどからデータを集めるため、継続的に精度を上げられます。
表情
人間と人間が顔を合わせて話すときのように、AIはカメラで人間を観察し感情を読み取ります。これは「顔認識技術(画像認証機能)」によって実現されています。例えば「うれしいときは笑顔になる」「怒っているときは口角が下がる」「悲しいときは涙を流す」など、表情と感情の関連性をAIに教え込むことで、人間の感情を解析できるようになるのです。
また今後AIの研究がさらに進めば、表情以外にも視線の位置や目の動き、瞳孔が開いているかなど、人間のさまざまな動きを観察することで、感情解析の精度を上げていけると考えられています。そうなれば、本人ですら気がついていないような微妙な心の動きなどもAIで感知できるようになり、ビジネスへ活用できるシーンも増えると期待されています。
さらにそれらの技術が確立された場合、自社のデジタルサイネージ(デジタル技術を活用した広告媒体)や製品を見た人、イベントに参加した人がどれだけそのものに興味を示しているかなどが一瞬で数値化できるようになります。そこで得たデータを基に、企業は改善策や修正ポイントを見出せるようになり、ビジネスシーンにおいても役立つと考えられているのです。
音声
人間の声には無意識的に感情が乗っている場合が多く、これを分析することは感情解析をする上で非常に重要です。顔認識技術のときと同様に「うれしいときは高い声」「怒っているときは低い声」という特徴や、抑揚のつけ方、声の強弱などさまざまなデータをAIに教え込みます。そうすることでAIが自発的に学習し、人間の発する音声から感情を解析できるようになるのです。
この技術をコールセンターで活かせば、顧客の声から感情を読み解き、その顧客の心理状況に適したアプローチができるようになります。また同時にオペレーターの感情も解析することで、ストレス値を算出することも可能です。さらに成約率の高いオペレーターや、優秀なオペレーターの音声を解析することで、顧客対応に悩むほかのオペレーターに正しい見本としてフィードバックすることもできます。
感情解析をコンタクトセンターに活用するメリット
ここからは、感情解析をコンタクトセンターで活用する2つのメリットを紹介します。
オペレーターのモチベーション向上
オペレーターのモチベーション向上は、コンタクトセンターにとって最大の課題です。この問題を解決するためには、一人のオペレーターに負荷がかかりすぎたり、クレーム対応が集中したりするのを防ぐ必要があります。本来ならSVが現場を見て回り、オペレーター一人ひとりの状態を把握することが望ましいでしょう。しかしそれが不可能なときは、積極的にAIの感情解析を活用しましょう。
AIの感情解析を利用すれば、AIがSVの代わりにオペレーターのストレス値を算出してくれます。それによりストレス値が高いオペレーターを見つけ出し、すぐに対処できるようになります。その結果、オペレーターのモチベーションが向上すると考えられているのです。
また、AIの感情解析サービスには、解析データを基にしてオペレーターを賞賛したり慰めたりする機能が搭載されたものもあります。顧客の語気が強まったり、オペレーターの声が落ち込んだトーンになったときにはバーチャルアシスタントが慰めたり、対応のサポートをしてくれます。
さらにこのデータをSVに送信し情報が共有されれば、即座にフォローすることが可能です。AIの感情解析を導入すれば、SVがいない現場でもオペレーターが安心して働けるようになるでしょう。
業務の効率化
感情解析サービスの導入によってオペレーターのモチベーションが向上すれば、仕事の成果にも反映されます。その結果、オペレーター業務の効率化につながり、顧客満足度も向上すると期待されているのです。
「従業員満足度の低いオペレーターが対応すると、顧客の満足度も低くなる」と言われており、オペレーターのモチベーション(従業員満足度)と顧客満足度は関連していると考えられます。そのためオペレーターのモチベーション向上は、業務効率化を図る上で重要な項目と言えるのです。
また、人間は他人の気持ちを推し測り、コミュニケーションを取る能力を持っています。これは、EQ(心の知能指数)と呼ばれています。もちろんEQの高さには個人差があるため、高い人もいれば低い人もいるでしょう。
AIの感情解析を導入すれば、AIが顧客の感情を読み取り、適切なアプローチを提案してくれるようになります。そのため、EQが低い従業員でも、顧客の気持ちに寄り添ったコミュニケーションが取れるようになるのです。これはオペレーターのみならず顧客にとってもメリットと言えるでしょう。
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まとめ
感情解析を活用してオペレーターの心理状況を把握することで、適切なケアが行えるようになり、オペレーターの離職防止に役立ちます。また、オペレーターのモチベーションや満足度が向上すれば顧客満足度のアップも見込めるため、AI感情解析の導入は企業にとってもメリットが大きいと言えるでしょう。
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