コンタクトセンター(コールセンター)では、さまざまなストレスによるオペレーターの離職率の高さが長年の課題となっています。本記事では、厚生労働省が推進するメンタルヘルス対策を紹介します。オペレーターの精神的負担を軽減し、継続的な雇用を可能にするために、ぜひお役立てください。
深刻化するコンタクトセンターの離職率
コンタクトセンターにおけるオペレーターの離職率は、具体的にはどれほど高いのでしょうか。
「コールセンタージャパン」による2018年の調査によれば、新人スタッフの1年以内の離職率は、多くの企業で30%以上を越えていることが判明しています。しかも、22%もの企業が、離職率が70%を超えていると回答しているのです。
反対に、新人スタッフの離職率を10%以下に抑えているのは、全体でたった25.6%の企業しかありません。(引用元:https://callcenter-japan.com/magazine/3838.html)
このデータは、多くのコンタクトセンターにおいて新人スタッフの3人に1人、企業によっては10人中7人以上もの人材が1年以内に離職してしまうことを意味します。しかも、上記の調査では、この離職率の高さは年々増加しつつあることも示されているのです。
これが人事マネージメントの観点から見て看過できない数字なのは明らかでしょう。そして、この深刻な離職率の高さを引き起こしている要因のひとつに、「理不尽なクレーム対応や過度のノルマによる、オペレーターへの過重なストレス」が挙げられます。
メンタルヘルス対策とは?
オペレーターの高い離職率の主因であるストレス。これを軽減するには、職場が一丸となって、心の健康に配慮したメンタルヘルス対策を行うことが大切です。
しかし、メンタルヘルス対策とは、いったいどういったものなのでしょうか。第一に、心の健康が損なわれた労働者の状態を、通常の元気な状態まで引き上げることが、メンタルヘルス対策の目的です。
大別すると、メンタルヘルス対策は一次予防から三次予防までの3フェイズに分けられ、それぞれ「メンタルヘルス不調の予防」「メンタルヘルス不調者の早期発見と適切な対応」「メンタルヘルス不調者の職場復帰の支援」とされています。
メンタルヘルスケアと聞くと、一般には二次、三次の段階を想定する方が多いかもしれません。しかし問題を抜本的に解決するには、企業側で、従業員たちのメンタルヘルスが不調になりにくい職場環境を普段から整えること、すなわち一次予防に取り組むことも非常に重要なのです。
厚生労働省が推進する「4つのメンタルヘルスケア」
厚生労働省(以下:厚労省)は、労働者のメンタルヘルスケアは4つの立場から行われるものとしています。以下では、そのそれぞれの内容について解説していきます。
厚労省の資料全文:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
セルフケア
厚労省が推進する4つのメンタルヘルスケアのうち、最初のひとつが「セルフケア」です。これはすなわち、従業員自身によるメンタルヘルスの適切な自己管理を意味します。
効果的なセルフケアを行うためには、新人教育や研修などを通してメンタルヘルスについての問題意識を高め、適切な知識を身につける必要があります。
とりわけ精神的負荷を受けやすいオペレーターの育成においては、職務上受けるストレスについて適切な理解やケアの方法を、オペレーター・管理者の双方が十全に学んでおくことが非常に大切です。セルフケアは、職場の全員が取り組むべきメンタルヘルスケアの第一歩なのです。
ラインによるケア
第二のメンタルヘルスケアは、「ラインによるケア」です。ラインによるケアとは、職場の管理監督者が実施すべきメンタルヘルス対策を意味します。その具体例としては、部下からの相談に対応したり、職場環境の改善を行ったりすることが挙げられます。
職場で受けるストレスは、従業員個人の努力だけではどうにもならないことも少なくありません。クレーム対応を請け負うオペレーターの場合は、特に理不尽なクレーム対応によるストレスを抱えがちです。上司として、あるいは組織として常日頃から従業員の心に気を配り、継続して働きやすい職場づくりに取り組むことが重要です。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
第三のメンタルヘルスケアは、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」です。これは、企業に所属する医療専門職(産業医や産業保健師など)からの支援を意味します。
セルフケアのための研修や、ラインによるケアである職場環境の改善を効果的に行うには、専門家との連携が欠かせません。精神状態がやや気がかりな従業員については、直接の上司だけではなく、こうした専門スタッフに対応してもらえるよう、体制を整えておくべきでしょう。
また、企業におけるメンタルヘルス対策の基本指針、「こころの健康づくり計画」の策定に当たっても、産業医などの専門家の意見は欠かせません。
事業場外資源によるケア
第四のメンタルヘルスケアは、「事業場外資源によるケア」です。「事業場外資源」とはすなわち、企業の外部にある専門機関や専門家を意味します。具体的にその主な例を挙げると、精神保健福祉センターや保健所など、地域の保健機関のほか、厚生労働省が主体となって運営している「こころの耳」や「産業保健総合支援センター」などがあります。
また、クリニックなどの一般の医療機関もここに入ります。産業医などが職場にいない場合、通院中の従業員に対して、企業としてどんな対応や配慮を行えばいいか、医療機関と連携して見定めることも有効な手法です。その際は、必ず通院している従業員の許可を受けてから、連携する必要があります。
また、精神的不調を感じてもどこに相談すればいいのかわからない従業員を手助けするために、企業としてあらかじめ信頼できるクリニックなどを把握しておくことも大切です。
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メンタルヘルスケアの進め方
上記では、「誰が」メンタルヘルスケアに取り組むべきなのかを解説しました。ここからは、「どのように」メンタルヘルスケアを行うべきなのか、その進め方について解説します。
教育研修・情報提供
メンタルヘルスケアを推進するためには、まず従業員と管理監督者の双方が、メンタルヘルスについて高い問題意識と適切な知識を持つことが重要です。とりわけ、離職率の高さが深刻なコンタクトセンターにおいては、この問題を見て見ぬふりはできません。
メンタルヘルスケアについて学ぶ上では、産業医や産業保健師をはじめとする専門家の助言も受けた上で、メンタルヘルスについての教育研修・情報提供を実施することが大切です。ストレスのかかりやすい職場であるコンタクトセンターならば、あらかじめこうした教育研修の担当者を専門に雇用したり、育成したりすることも一考の価値があります。
職場環境の把握と改善
従業員がメンタルヘルスを崩す一因は、職場環境に存在する場合も多々あります、オペレーターの職務などは、その最たるものと言えるかもしれません。
仕事の何が従業員に精神的に負担を与えているのか知るには、まず従業員の意見やストレスチェック制度を活用して、職場環境や業務の問題点を洗い出すことが大切です。問題点が把握できたら、従業員のサポート体制を構築し、業務効率化などを実現していくことを通して、組織全体として積極的に解決策を講じましょう。
例えば、オペレーターの業務なら、メール対応やチャット対応などの電話以外の窓口を積極的に設置し、一人当たりのコール数が減るような対策を講じることなどが考えられます。
メンタルヘルス不調の早期発見
いくらメンタルヘルスについて予防対策を敷いても、従業員が精神的に不調になることはありえます。精神的な不調や病気も、体の病気と同様、重症化する前に早期に発見することが非常に重要です。
そのためには、産業医による定期的な巡視や、管理者が普段から積極的に従業員とコミュニケーションを取るなどして、問題を発見しやすい環境・相談しやすい環境を作ることが重要です。また、従業員が自身のメンタル状態についてセルフチェックする時間を定期的に作ることも効果的でしょう。
職場復帰における支援
従業員のメンタルヘルス不調が重症化し、休職にまで至ってしまった場合に備えておくことも大切です。その具体策としては、休業した従業員が円滑に職場復帰し、再び職務に当たれるようにするためのプログラムを策定することなどが挙げられます。この際考慮すべき課題としては、対象の従業員について、今後の職場配置や処遇、労働条件、雇用契約などを十分に考慮し、人事・労務における適切な運用を判断することです。
またこうした場合のメンタルヘルス対策は、従業員一人ひとりのケースで柔軟に行う必要があるため、従業員の主治医と適切に連携しなくてはなりません。
現状では、離職率が非常に高いコンタクトセンター。だからこそ企業側で、不調を感じたオペレーターも安心して休みやすく、そして復帰しやすい体制を構築しておくことが大切なのです。
まとめ
本記事では、厚生労働省が唱えるメンタルヘルス対策について紹介しました。心の不調を早期発見し、予防すること。そして、不調に陥った従業員の円滑な職場復帰へ向けた体制づくり。こうした対策を、職場全体で取り組むことが非常に重要です。オペレーターが休業したり、離職したりすることは企業にとっても大きな損失です。
オペレーターのメンタルに配慮した職場構築にぜひ取り組んでください。
この記事の推奨者
Salesforce 認定アドミニストレーター
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