顧客関係(カスタマーリレーション)を良好に維持することは、利益の増大を図るために不可欠です。本記事では、カスタマーリレーションに関連した用語として、カスタマーリレーションズ、カスタマーリレーションシップ、カスタマーリレーションシップマネジメントそれぞれの定義を解説し、取り組むメリットや事例を紹介します。
カスタマーリレーションシップとは
カスタマーリレーションシップとは、日本語で「顧客関係」という意味で、企業と顧客との信頼関係を示す用語です。顧客との接点を持つマーケティングや営業活動、カスタマーサポートなどにおいて、カスタマーリレーションシップは企業のイメージを向上させ、事業を拡大するために欠かすことのできない概念です。
企業が売上を向上させるには、一から新規顧客を開拓するよりも、既存顧客にリピート購入してもらう方が効率的であり、高い費用対効果を得られることが知られています。そのため、カスタマーリレーションシップを良好に保つことを、多くの企業が重要視しています。
カスタマーリレーションズとは
カスタマーリレーションズという言葉には、使われ方によって意味する内容が少し変わってきます。
まず、企業と顧客との信頼関係そのものを指す場合です。この場合の意味は、カスタマーリレーションシップと同じです。
次に、顧客との信頼関係を向上させるための取り組みを指す場合です。例えば、さまざまなチャネルから収集した購買データなどをもとに顧客との関係を構築していくマーケティング活動や営業活動などが該当します。あるいは、カスタマーサポートやカスタマーサクセスなどの活動もカスタマーリレーションズの一環です。
最後が、上記の活動を担当する部門を指す場合です。つまり、営業部門やマーケティング部門などをカスタマーリレーションズと呼ぶことがあります。
カスタマーリレーションズという場合、一般的には二番目の使われ方が多いようです。ただし上記のように、人や場面によって意味している内容が異なる可能性があるので、文脈に応じて何を指しているのか判断するようにしましょう。
カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)とは
カスタマーリレーションズに似た言葉に、カスタマーリレーションズマネジメントという用語があります。日本語では「顧客関係性管理」という意味です。英語(Customer Relationship Management)の頭文字を取ってCRMと呼ばれることもあります。
CRMとは簡単にいうと、企業が顧客との関係を適切に維持・改善できているかを管理・分析し、最終的に売上を増大させることを目標とした経営手法です。基本的な意味合いはカスタマーリレーションズと似ていますが、多くの場合、より具体的な手法を指しています。
CRMをクラウド上や自社運用(オンプレミス)で効率的に行うための「CRMツール」というITソリューションも存在します。CRMといわれたら、CRMツールのことを思い浮かべる人もいるかもしれません。CRMツールを利用すれば、さまざまなチャネルや部門で収集した顧客データを一元管理できます。これにより、部門を横断して顧客情報を共有・活用し、顧客に最適な対応を提供できるようになります。
カスタマーリレーションズのメリット
カスタマーリレーションズないしはCRMに取り組むことで、企業は顧客満足度の向上など、いくつかのメリットが得られます。
顧客満足度・顧客維持率が向上する
カスタマーリレーションズやCRMに取り組むことで、顧客に対してよりよい対応を提供できるようになり、その結果として顧客満足度の向上が期待できます。顧客満足度の高い顧客は、自社の製品やサービスに対して強い信頼や愛着を抱いてくれます。これらの顧客のリピート購入率は高く、ちょっとしたきっかけで競合他社へと流れてしまうような可能性は低い(つまり顧客維持率が高い)と考えられます。これがカスタマーリレーションズへの取り組みで得られる大きなメリットです。顧客維持率が向上することで、売上予測の精度も上がり、経営戦略を立てやすくなります。
コストカットをしつつ売上向上が期待できる
カスタマーリレーションズに取り組むことによって向上が期待できるのは顧客満足度や顧客維持率だけではありません。高い費用対効果=低コストでの売上向上も期待できます。一般的にマーケティングの世界では、新規顧客を獲得するには、既存顧客の購入を促す場合に比べて5倍のコストがかかるとされています(1:5の法則)。新規顧客の獲得を熱心に行うよりも、カスタマーリレーションズを通して既存顧客との関係をより良好なものにした方が、高いコストパフォーマンスで売上を伸ばすことが期待できます。
カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)の事例
CRMはさまざまなことに活用できます。次に「アドレサブル広告」や「プライベートDMP」、そして「コールセンター・コンタクトセンター」におけるCRMの活用例を紹介します。
アドレサブル広告
アドレサブル広告とは、どの顧客がどのような広告に関心を持ちやすいかを特定し、当該顧客に対して最適な広告を提示するマーケティング手法です。「アドレサブル(Addressable)」はAddress(指定する)の形容詞であり、「ユーザーを特定できる」という意味です。主にオンラインマーケティングで活用される手法です。
アドレサブル広告では、購買履歴や広告への反応率といった、企業が保有する顧客データにもとづき、訴求度が高いと予想される顧客を特定して広告を配信します。例えば、自動車販売店なら車の購入に関心のあるユーザーに、また飲食店ならグルメに関心の高いユーザーに対してピンポイントでアピールできます。アドレサブル広告を活用することで、コンバージョン率を上げながら、広告費用を抑えることが可能です。顧客にとっても自分の関心がある広告が多く表示されるようになり、あまり関心のない広告の表示回数は減ります。アドレサブル広告の活用により、顧客満足度の向上が期待できます。
プライベートDMP
プライベートDMPとは、自社が運営するWebサイトなどを通して収集した顧客データや広告配信などのデータを管理・分析して、マーケティング活動に活かすためのプラットフォームです。「DMP」とは「Data Management Platform(データ管理プラットフォーム)」の頭文字を取った略称です。対して、他社の提供する匿名の顧客情報が蓄積されたプラットフォームは、パブリックDMPと呼ばれます。
アブレサブル広告が顧客を特定して最適な広告を配信できるのも、プライベートDMPを活用しているからです。状況に応じてプライベートDPMとパブリックDMPとを併用することにより、さらに効果的な広告を配信することも可能です。
コールセンター・コンタクトセンター
CRMはマーケティングや営業だけでなく、コールセンターやコンタクトセンターでも活用できます。コールセンターは企業が持つ重要な顧客接点のひとつであり、対応品質の良し悪しは顧客関係にも大きな影響を与えます。
例えば、顧客の購買データや問い合わせデータをCRMツールに蓄積しておけば、顧客から何か問い合わせを受けたとき、過去の情報をすばやく参照して、最適な対応を取れるようになります。また、コールセンターに寄せられた顧客からの問い合わせや要望などは、製品やサービスの改善をするためのヒントになります。よりよい製品・サービスを開発する意味でも、コールセンターやコンタクトセンターがCRMに取り組むことは重要です。
まとめ
顧客データを収集・分析してカスタマーリレーションズやCRMに取り組むことで、各顧客に最適化された施策を実施することが可能になり、顧客との関係を維持しやすくなります。新規顧客を獲得するのに比べ、既存顧客との関係維持の方がコスト効率に優れているので、カスタマーリレーションズに取り組むことは重要です。
カスタマーリレーションズに取り組む際は、自社の特性や課題をあらかじめ分析したうえで戦略を練ることがポイントになります。既存顧客の維持に課題を抱えている企業の方は、カスタマーリレーションズに取り組んでみることをオススメします。当社はまさにCRMをこれまで多く活用してまいりました。いつでも是非ご相談くださいませ。
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