CSATとは、企業が提供する商品・サービスに対する顧客の満足度を数値化したものです。本記事では、CSATの概要や測定する方法、計算方法、活用のメリット・デメリット、役立つツールなどについて、わかりやすく解説します。本記事を通じて、CSATの概要を理解し、顧客満足度を数値という客観的な形で把握する方法を学べます。
CSAT(顧客満足度)とは
CSATとは「Customer satisfaction Score(顧客満足度)」の略称です。自社の製品・サービスに顧客がどれほど満足しているかを示す指標のひとつです。詳しくは後述しますが、CSATでは通常、5段階評価のアンケートなどで顧客満足度を調査し、回答結果を数値化します。数値化することにより、顧客満足度という本来は定性的なデータを定量化してわかりやすく把握できるようになります。
現状の顧客満足度の把握は、自社の製品・サービスを改善し、リピーターを獲得するために役立ちます。CSATのスコアが良ければ、その数値をそのまま顧客への訴求材料として使うのも効果的です。CSATはブランド力やロイヤリティの向上につながるため、多くの企業が重要な指標として考えています。
CSATとNPS®の違い
CSATと似た指標にNPS®(Net Promoter Score:正味推奨者比率または顧客推奨度)があります。顧客ロイヤリティを数値化したもので、顧客が企業および製品・サービスにどれだけ愛着をもっているかを示す指標です。NPS®では「顧客が同じ製品やサービスを継続して購入したいと思っているか」「ほかの人にも勧めたいと思っているか」など、CSATだけでは測れない要素を調査します。企業価値を上げるためには、NPS®を向上させることも重要です。
CSATとNPS®とでは算出方法など、いくつかの点で違いがあります。CSATとNSPは、満足度と推奨度のどちらを把握したいかによって使い分けます。どちらの指標も顧客と良好な関係を築くための重要な物差しですが、製品・サービスの改善に役立てるには、把握すべき基準を明確にし、うまく使い分ける必要があります。
CSATを測定する方法
CSATを測定する方法に特に決まりはありませんが、広く採用されている手法はアンケート調査です。測定・分析の効率化を図るには、ITツールを活用するのが有効です。以下では、CSATの測定方法と管理・分析方法について解説します。
アンケートを使用して測定する
CSATの測定方法で最も一般的なのはアンケート調査です。昨今はWebサイトの専用フォームやメルマガ、SNSなど、インターネット上でのアンケート調査が広く行われています。ただし、アンケート調査を煩わしく感じる人もおり、回答率は決して高いとはいえません。顧客満足度の把握には、できるだけ多くの回答を集める必要があります。煩わしく思われないよう、回答者に負担の少ないアンケート調査システムを構築することが重要です。
CSATの測定は、一般的に顧客が製品・サービスを利用した直後に実施すべきです。例えば、カスタマーセンターならユーザーの問い合わせに対応した直後に測定すれば、記憶が鮮明に残った状態での回答を得られます。新製品の発売時やキャンペーンの終了後など、重要なイベントが実施された直後に行うのも効果的です。
ツールで顧客情報を管理・分析する
CSATを効率的に計算・分析し、さらに活用するためにはITツールが役立ちます。例えば、顧客情報を一元管理できる「CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理システム)」の導入は、顧客のニーズを把握するために有効です。また、顧客情報や商談内容、営業業務を管理する「SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)」は、データを抽出・分析し、結果を可視化することによって、顧客満足度をわかりやく把握できるようになります。さらに、大量の文字情報から構文の意味を解析・整理・抽出し、統計を可視化する「テキストマイニングツール」もアンケートの管理・分析をする際に便利です。
CSATのスコア基準
調査した自社のCSATを適正に評価するためには、得られた数値が業界全体や競合他社と比べて高いのか、低いのかを知らなければなりません。各業界の平均的なCSATスコアの基準を知るうえでは、ACSI(American Customer Satisfaction Index:米国顧客満足度指数)が広く使用されています。ACSIは、世界規模で研究された、各業界の顧客満足度を示すベンチマークです。
ACSIを参照すれば、自社のCSATスコアが業界標準に対してどの程度の位置にあるのかを把握できます。定期的に基準スコアと自社のCSATスコアとを比較すれば、改善策が有効であったか否かも評価できます。
CSATスコアの計算方法
続いては、アンケートで測定することを前提に、CSATスコアの計算方法を解説します。
【ステップ1】
CSATのアンケートでは多くの場合、顧客に対して以下のような質問を行い、5段階評価で回答してもらいます。
- 質問例
「当社のサービスにどのくらい満足しましたか?」 - 解答例
(1)非常に不満
(2)不満
(3)どちらでもない
(4)満足
(5)非常に満足
【ステップ2】
収集したアンケートをもとに「(5)非常に満足」や「(4)満足」という回答が、全体の回答数に対してどのくらいの割合を占めているのかを計算します。計算式は以下の通りです。
- CAST=(「非常に満足」と回答した顧客数※/アンケートの全数)×100%
※「満足」という回答を含めても可
こうした計算を通してCSATスコアを割り出し、製品・サービスの改善に役立てます。先述のように、継続的な調査でCSATスコアの推移を確かめ、施策の効果を検証することが大切です。また、アンケートの作成時には、回答精度を高めつつも顧客の負担が少なくなるように、答えやすい質問の設定を心がけましょう。
顧客満足度調査でCSATを採用するメリット
顧客満足度を調査する方法にはさまざまな種類があります。そのなかでもCSATを採用する利点として挙げられるのは、測定の容易さ、指標としての認知度の高さ、回答者に与える負担の少なさです。
簡単に測定できる
CSATの大きなメリットは、「サービスにどのくらい満足しましたか?」などの簡単な質問で測定できることです。集計や計算の方法も5段階評価をもとにしたシンプルなものなので、迅速に結果を分析して次のアクションに活かせます。さらに、このようにごく簡単な形式で測定できるので、WebサイトやSNS、メールなどさまざまなチャネルで簡単に実施できるのもメリットです。
指標としての認知度が高い
CSATは世界的に知られている顧客満足度指標であり、その信頼性と精度の高さから、多くの企業で標準的に使用されています。先述のACSIを参考にすることで、業界標準との比較を行うことも容易です。実際、企業がホームページで自社のスコアを公開していることもあるため、業界標準や競合他社と比較しながら、自社の顧客満足度を客観的に評価しやすいというメリットがあります。このように、CSATは信頼性の高いデータなので、マーケティングやプロモーションにおいてもさまざまな仕方で活用可能です。
回答する顧客の負担が少ない
CSATは、回答する顧客側の負担が少ないという特長もあります。上記のようにCSATのアンケート調査は、シンプルな質問をひとつ行うだけで済むので、顧客はごく短時間で回答できます。そのため、質問に答えることで顧客に与えるストレスや疲労感を最小限に抑えることが可能です。顧客になるべく負担を与えないことは、フィードバックの数を多くするためにも重要な要素です。
CSATのデメリット
CSATには上記のような利点もある一方で、いくつかのデメリットも存在します。特に留意すべきなのは、算出したスコアの正確性に関する懸念です。
自己申告制であるためスコアが偏りやすい
CSATではアンケートによって自己申告制で調査するので、回答に偏りが生じやすいという問題があります。例えば、顧客の主観的な判断やその時の気分に左右されることが多く、回答が一貫しないことがあります。特に日本人は中間の選択肢を好む傾向があるので、実態にかかわらず、「どちらともいえない(5段階評価での3)」が多く回答されがちです。そのため、得られたデータがどのくらい実情を反映しているのか、慎重な判断が要求されます。
顧客状態の細部までは調べられない
基本的にCSATで実施するアンケート調査は、「製品・サービスに満足しているか」というシンプルな質問で完結しているので、顧客の詳細な意見や感情までは把握できません。つまり、製品・サービスに満足している顧客がどのくらいの割合なのかは把握できても、「なぜそうした結果になったのか」という理由や背景までは理解しにくいわけです。そのため、詳細なフィードバックを得たい場合は、個別に電話や対面によるヒアリングを行うなど別の調査が必要になります。
バイアスの影響を受けやすい
自己申告制であることとも関係しますが、CSAT調査はさまざまなバイアスの影響を受けやすいことにも注意が必要です。そもそも、アンケートへ積極的に答えてくれるのは、非常に満足している顧客か非常に不満な顧客に偏りがちです。そのため、回答者自体の属性に一定のバイアスが生じてしまっていることが懸念されます。また、直近の体験が強く印象に残っていて、それに引っ張られた回答をしてしまうことや、社会的なバイアスが影響して模範的な回答をしてしまうこともあります。なかには「面倒なので、すべて3で回答する」などのいい加減な回答があることも考慮すべき点です。
測定したCSATの活用方法
いくらCSATを測定しても、測定結果を実際の施策に反映しなければ意味がありません。測定したCASTは例えば、
顧客の現状・不満状況の把握に使用する
自社への期待値の把握に使用する
といった形で積極的に活用します。
顧客の現状・不満状況の把握に使用する
CSATスコアは、顧客が自社の製品・サービスに対してどの点が良かったのか、また、どの点が気に入らなかったのかを把握するうえで有用です。例えば同じような不満を持った回答が多ければ、その部分を重点的に改善していけば、効率的に顧客満足度を向上できます。
自社への期待値の把握に使用する
CSATの調査を通して、製品やサービスの購入前に抱いていた期待に沿ったものだったか、期待以下だったのかなどを把握することで、自社の製品・サービスがどれだけ顧客に期待されているかを窺い知ることが可能です。また、期待値の高い顧客が多い場合は、自社に対して愛着を持ってくれている人が増えていることがわかります。自社への期待値が高い顧客は、今後リピーターになったり、自社の製品・サービスを他人へ推奨したりしてくれる可能性が高いので、優先的にアプローチするのがおすすめです。
CSATスコアを向上させる方法
CSATを向上させるためには「製品・サービスそのもの」「ユーザーの動線やプロセス」「顧客のサポート体制」を改善・向上する必要があります。
製品・サービスの品質を向上させる
第一に注力すべきは、製品やサービスそのものの品質向上です。顧客満足度が低い場合、その主な原因はやはり製品やサービスそのものに対する不満と考えられます。製品・サービスの品質を効果的に改善するには、アンケート結果の分析や顧客へのヒアリングを通して、顧客が不満を抱いている具体的なポイントを特定し、それに応じた施策を講じることが重要です。
ユーザーの導線・プロセスを見直す
購入や申し込みなどのサービス導線やそのプロセスも顧客満足度に影響を与える要素です。例えば、「購入手続きが複雑」、「待ち時間が長い」といった問題があれば、製品・サービス自体の品質が良くても顧客の不満を招きかねません。そのため、ホームページのUI/UXを改善するなど、サービスにつながる導線やプロセスをできるだけ簡潔でわかりやすいものにすることが求められます。
顧客のサポート体制を向上させる
顧客サポートの質も、顧客満足度に大きく影響を与えます。製品やサービスの使用時に何か不明な点やトラブルが生じても、そこで迅速に問題を解決できれば、顧客満足度に与える悪影響を最低限に抑えることが可能です。「顧客情報の活用を通してオペレーターの対応品質を上げる」、「FAQページを充実させて、顧客が自己解決を図れるようする」など、カスタマーサポートの充実も積極的に図りましょう。
顧客満足度を測定できる、CSAT以外の3つの指標
顧客満足度を測定する指標は、CSATのほかにもあります。ここでは代表的な3つを例に解説します。
1. GCR(目標達成率)
GCR(Goal Completion Rate)とは、顧客の目的やニーズを満たしているかを数値化したもので、製品・サービスに対する顧客の「目標達成率」を把握するために重要です。企業サイトのFAQ回答後に「情報は役に立ちましたか?」などのポップアップを設定すると、計測が可能です。目標達成率が低い場合は、顧客が求めていたのは何かを把握することにより、改善が見込めます。
2. CES(顧客努力指数)
CES(Customer Effort Score)とは、顧客が目的を達成するためにどれくらい努力が必要だったかを測る指標です。数値が高いほど顧客満足度が下がります。CESは、顧客が製品・サービスをどのくらい使いやすいと感じたかなどを確認するために有用です。
おもに顧客がサービス使用した後のタイミングで「利用したサービスは問題なく使えましたか?」といった質問を用意しておき、回答を得ることで測れます。使いにくいなどの回答が多い場合は、何らかの改善が必要かもしれません。
3. CSI(顧客満足度指数)
CSI(Customer Satisfaction Index)は、世界30か国で使用されている「顧客満足度指数」です。製品やサービスに関連する複数の質問をし、回答から平均値を求めて顧客満足度を測ります。おもに「顧客期待値」「顧客不満度」「顧客忠実度」「知覚品質」「知覚値」の5つの項目から算出されます。データ数が多ければ多いほど信頼度の高い数値が得られるため、政府機関やグローバル企業などで多く用いられます。
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まとめ
CSATとは、企業が提供する製品・サービスに対しての顧客満足度を数値化したものです。多くの場合、Web上でのアンケート調査などを通して測定されます。CSATはシンプルな質問で顧客満足度を測れる反面、そのような結果になった詳しい理由を知るには不向きな面もあるので、そのほかの手段も併用するのがおすすめです。CSATを活用することで、顧客の不満や自社の期待値を把握し、サービス改善や営業活動に活かせます。
*Net Promoter®およびNPS®、Predictive NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
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