コンタクトセンターは、顧客とビジネスとをつなぐ重要なタッチポイントです。それゆえに、その維持管理には大きな負担がかかります。特に近年、ビジネス環境がめまぐるしく変化する時代となり、どのように運営・強化していけばよいか、さまざまな課題に悩まされている組織も少なくありません。今回はボイスボットがどのようにコンタクトセンターの課題を解決できるのかをご紹介します。
コンタクトセンターが抱えるさまざまな課題
長らく課題とされてきたのは、やはり人的コストです。そもそも採用すべき人材が不足しがちになっているのに加えて、平均賃金が上昇し、コールセンターのランニングコストを圧迫するようになりました。業界最大級のコンタクトセンターサービス事業者であるベルシステム24においても、毎年数%ずつ増加しているとのことです。
一方で、ユーザーの環境やニーズが急速に変化していくことに伴って、企業には多様なサービスや商品が求められるようになりました。コンタクトセンターにとっては、問い合わせの内容が複雑化していくことが深刻な問題となっています。人材不足と相まって、高品質なサポートをどのように維持すべきかという課題が残されています。
2020年の新型コロナウイルス感染症蔓延は、コンタクトセンターの業務にも大打撃を与えました。従来から在宅勤務型のコンタクトセンターは存在していましたが、センターオフィスに勤めるほうが一般的でした。コロナ禍によってテレワークを余儀なくされ、対応に難儀した読者も多いことでしょう。いわゆるBCP対策の強化も、コンタクトセンターの大きな課題の1つです。
また、繁閑の差についても従来から大きな問題として挙げられています。流行のSNSで話題になって、瞬間的な呼量増に対応しきれなくなるケースが増えているそうです。
IVRやチャットボットだけでは課題を解決できない
こうした課題に対して、「自動音声応答システム(IVR)」が利用されています。基本的には、システムが設問と回答リストを読み上げると、カスタマーが回答となる番号を入力して応えるという仕組みです。従来から利用されているシステムですが、多くの課題が残されています。すべての項目を読み上げるには時間がかかってしまいますし、受付や取り次ぎが主な機能で、細かな問い合わせへ直接的に応えられるわけではありません。ベルシステム24の調査によれば、カスタマーの満足度は“40%”ほどと低評価です。
特に高齢者にとって、IVRは使いにくいものです。読み上げられる回答リストを正しく覚えておかなければ、回答すべき番号を選ぶことができません。耳が遠く、設問を聞き取れないことも多いでしょう。そのつど回答のボタンをプッシュすることも、高齢者には敷居の高い作業です。
応対の自動化を目指して「チャットボット」を採用するコンタクトセンターも増えています。もちろんチャットボットは有用なソリューションの1つではありますが、上述のような課題をすっかり解決するものとは言えません。なぜなら、電話での問い合わせを好むカスタマーをチャットボットではカバーできないためです。高齢者はその傾向が強く、チャットそのものを利用することができないケースも少なくありません。
定型業務を自動化できるボイスボット
そこで注目したいのが「ボイスボット」です。特に2020年のコロナ禍以降、需要が急速に伸びています。ベルシステム24は、2026年には全問い合わせの20%(約3.3億件)を占めると予測しています。
ボイスボットは、カスタマーの発声を音声認識によって聞き取り、音声合成によって自動応答する仕組みです。受付や取り次ぎの機能を持ちつつ、バックエンドの業務システムと連携してIVRよりも高度な応対ができます。
現在の音声認識技術は、非常に高い認識率を発揮しています。また音声合成技術も品質が高く、カスタマーにとっても自然な応対に聞こえるほどになっています。チャットボットやIVRは、高齢者にとってハードルが高いと述べました。ベルシステム24の調べによれば、音声認識・合成技術はこの数年で急速に進歩しており、年代によらずボイスボットを違和感なく利用できるとのことです。Amazon Echo/AlexaやGoogle Home/Nestなどのスマートスピーカーが普及していることも要因の1つかもしれません。
ベルシステム24の研究によれば、現在のボイスボットは“定型業務の自動化”に最適としています。つまり、一部の定型化された業務を自動応答し、つど対応が必要な細かな応対を人が担当するという役割分担です。上述のような先端技術によって対話の往復が可能となり、短いセンテンスであれば十分に情報を聴取できます。基幹系システムやAIなど他のシステムと連携し、処理を依頼したり、事務手続きを行ったりすることが得意です。
一方で、現在のボイスボットは、ヒトのような柔軟な対応には適していません。カスタマーのニーズや態度によって対応を変える業務のほか、細かなニュアンスを読み取ったり、長文をヒアリングしたりすることも向いていません。カウンセリングや苦情対応などの業務には適していないのです。
しっかりプロセスを踏んで最適化を目指す
ボイスボットの導入には、「分析」「設計・構築」「設定・導入」「計測・改善」というプロセスを踏んでいく必要があります。
どのような業務であれば効果が得られるのか、どうすれば実現できるか、採算は取れるのか ── 第1ステップの分析は特に重要です。ボイスボットは、チャットボットほどロジカルに設計することが難しいためです。
デバイスの画面を使ってやり取りするチャットボットは、場合によって選択肢を提示したり、画像を表示したりすることができます。ボイスボットは音声のみでやり取りするため、わかりやすい設問の提示が難しいのです。もともとコールセンターでは、オペレーターの感性や蓄積されたノウハウでカスタマーとの応対品質を高めてきました。その知見を再現することは非常に困難です。
ボイスボットソリューションは、チャットボットソリューションと比べても少なく、デファクトスタンダードと呼べるものがありません。音声を扱うシステムは高度で、PBXとの連携も重要であるためです。そのためシステムを選ぶ際には別の要素 ── ベンダーの経験(分析、設計・構築、コンタクトセンターの知見・実績など)に注目することも重要です。
またボイスボットを活用する際のポイントとして、オペレーターとの連携には十分に注意が必要です。ベルシステム24によれば、現在のところボイスボットでカバーできるのは応対の「10%」程度と見込んでいます。現状の環境や技術では、オペレーターの業務をカバーするハイブリッド運用が適しているということです。
こうした点に注意して最適化できれば、ボイスボットは人材不足や応対品質の向上、BCP対応などに役立つシステムです。すでに複数の事業者でボイスボットとオペレーターの業務を分担し、オペレーターのテレワークを増やしたり、業務時間を短縮しながら品質の低下を防いだりといった効果を上げています。ただし、チャットボットよりもシビアに時間をかけて最適化していく必要がある点には注意しましょう。
本格的な活用もスモールスタートも
ベルシステム24では、2つのボイスボットソリューションを用意しています。1つは、クラウド型次世代コンタクトセンター基盤「BellCloud+」のボイスボットオプションです。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)との共同で開発された技術で、本格的なボイスボット活用のためのフル機能を実装しています。CTCとベルシステム24は、共同でウェビナーを開催するなど、積極的なボイスボットの開発と普及に取り組んでいます。
本格的なボイスボットシステムは、初期コストもランニングコストも大きくなりがちです。まだ有効性が十分に検討できていない段階でも、どのような機能が得られるのか、一部の業務から試してみたいというニーズもあるでしょう。
そこでボイスボットを試してみたい/スモールスタートしてみたいという読者には、ベルシステム24の「ekubot VoiceLITE」がオススメです。外部システムやオペレーターなどとの高度な連携には対応していませんが、安価な月額利用料で簡単なシナリオを作成して電話業務を代替させることができます。
例えば、コールセンターが混雑しているときに、あふれ呼の一時応対/折り返し受付の業務を担当させることが可能です。混雑状況を伝えて折り返し電話を案内し、あらかじめ要件や名前などを確認しておくことで、オペレーターがスムーズに応対できるようになります。資料請求や予約受付などにも最適で、名前・住所・資料や予約の種類などを聞き取ります。オペレーターは受付データの内容をチェックして、システムへの登録や発送処理を担当します。
シナリオの作成には専用のUIが用意されており、チュートリアルや設定漏れチェック機能、シナリオチェック機能なども実装されています。直感的な操作で、シナリオの作成方法やポイントなどを学ぶこともできます。
ボイスボットの機能を試すだけであれば、ekubot VoiceLITEを無償でテストすることも可能です。ボイスボットを体感することで、どのような業務に向いているのか検討しやすくなることもあるでしょう。コール数には限りがありますが、初期費用も利用料も0円です。
まとめ
前述したように、ボイスボットは2020年から急速に需要が伸びており、将来的にコンタクトセンター基盤の1つになることが予想されています。AI技術の分野では、音声から感情を読み取るなどさまざまな技術が開発されています。未来のボイスボットは、より高度で人間らしい応対すら実現可能になるでしょう。
ベルシステム24では、BellCloud+やekubotの機能をより充実させ、進化させていく計画です。いまのうちに採用しておくことで、将来的な新技術をいち早く採り入れることが可能となります。自社の新しい競争力として、ボイスボットを検討してみてはいかがでしょうか。
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