コールリーズン分析を活用した外部FAQ構築のコツ

 2021.08.25  2024.08.26

昨今では、多くの企業がお客様からの問合せに対し、自己解決率向上のためWEB上にFAQ(ここではお客様向けのFAQのことを「外部FAQ」と呼びます)設置しており、今やお客様との接点において重要なチャネルの位置づけを占めています。では、外部FAQの質問文(Q分)を作るときにどのような情報を参考にして作成すれば良いのでしょうか。今回は、外部FAQを作成するときにありがちな思い違いや、質問文を作るときの推奨方法をお伝えします。

VOC(Voice of Customer)の取得から分析までの方法とは?

外部FAQ作成時によくありがちなこと

外部FAQの質問文は以下のような方法で作成することが多いのではないでしょうか?

  1. 商品・サービス企画担当者が「恐らくこのような質問がくるだろう」と想定して作成する
  2. FAQの検索キーワードを分析して0件ヒットをなくすよう作成する
  3. お客様窓口の担当者が過去問合せ内容を加味して作成する

商品・サービス担当者やお客様窓口の担当者が考える場合、細部まで目が行き届いた質問文が出てきますが、お客様目線が欠けているFAQになっていることもあります。そのため次のようなことがよく起こります。

  • 電話やチャットで頻度高く聞かれる問合せが網羅されていない
  • 一問一答の具体的な質問は多数あるが、お客様が具体的な質問に行きつく前のお困りごと、課題があげられていない
  • 機能・サービスの詳しい情報に偏ってしまっている
  • 説明に専門用語が入ってしまっている

実際お客様は自分が困っていることが何なのか上手く説明できない、WEBを見て解決したいけどそれこそFAQの複数キーワードに何をいれてよいのか分からないといったことがよくあります。自分が解決したい事象が何なのか明確に分かっているお客様は、QAのような細かな粒度の一問一答で自己解決が可能ですが、そこにいきつかないお客様も実は多くいらっしゃるのです。また、FAQに使われている言葉に専門用語が入ってしまっているけどお客様はそのような言葉は使わない、といったこともよくあります。

昨今ではこういった問題を解決するため、お客様の生の声、お困りごとを分析し(コールリーズン分析)質問文として採用する企業も増えてきています。お客様がどのような事象で困っているのか、何を解決したいと思っているのか?有人対応している電話やチャットテキストで最初に出てくるお客様の質問の仕方を分析してみると、企業側では見落としていた言い回しや言葉が出てくることがあります。例えば、「最適な料金プランを知りたい」という質問文を用意していたとしても、お客様が教えてほしいのは「月々の料金を安くしたい」ということがあります。その場合には「月々の料金を安くする方法はありますか?」といったQ(質問文)を用意し、Answer(回答)として「料金シミュレーション」に誘導するという変更をかけることで、お客様のお困りごとに合わせたQAになります。

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コールリーズン分析について

コールリーズン分析とは

電話の会話テキストやチャットテキストを分析することを「お客様がお電話・チャットを架けてきた理由を探る」という意味でコールリーズン分析とよく呼びます。

有人対応している会話テキストやチャットテキストはお客様が普段使っている言葉がそのまま出てくるため、弊社では外部FAQの質問文と回答文を作成する際のインプットデータとして推奨しております。電話の音声ファイルはあるけど、音声認識ツールを導入していないためテキストデータになっていないというセンターもあるかと思いますが、その場合もバッチテキストツールを使って会話をテキスト化することが可能です。応対履歴を分析してよくある質問文を出すことももちろん可能ですが、応対履歴はオペレーターさんが要約した文章のことが多く、そこから「お客様の生の声/言い回し」を探し出すことは難しくなります。もし電話の音声ファイルがあるならば、最低2,000通話ほどでもよいのでテキスト化して分析することで今まで気づかなかったお客様側からの質問文が出てくることがあります。

テキストマイニングツールについて

コールリーズン分析はいわゆるテキストマイニングツールを使って行います。テキストマイニングツールにも無償で提供しているものから有償のものまで様々な種類がありますが、弊社では会話テキストやチャットテキスト分析に強みを持っているツールを利用しています。

会話テキスト分析に強いツールの特徴として以下が考えられます。

  • 前処理として不要語が削除できる機能があること
    会話テキストにはオペレーターさんやお客様の口癖など不要語が多いため、この機能があると便利です。
  • キーワード単位ではなく文章単位で分析できること
    これにより後に行うルールによる分類が非常に容易に構築できます。
  • チャットテキストの場合はボットと有人チャットが一定のルールで自動で切り分けられること
    ボットと有人の両方で業務を行っている場合は、この機能があることで分析がしやすくなります。
  • チャットの場合の応対評価アンケートの結果がテキスト分析結果に紐づけできる機能があること
    評価が低いものだけを取り出してし質問文やチャットテンプレートの修正に活用するサイクルが迅速に回したい際に、この機能は有効です。

コールリーズン分析の注意点

上記のようなツールを用いて分析をしたとしても、すべてが自動で結果が出てくるわけではありません。そこには分析者が何のために分析をするのかが明確でなければなりません。
外部FAQの構築に置いては「お客様の発話から質問文に必要な言い回しを探す」といった目的に沿ってルールを作成して分類していくこと、またお客様のお困りごとを理解するためには最初の発話だけではなく文脈全体を理解することも大事になってきます。

よく「コールリーズン分析をしたけど知っている結果しか出てこなかった」という声を聞くことがあります。コールリーズン分析をする目的として「QAを作成する」というところだけに囚われてしまうとそのような結果に陥ってしまいます。お客様のよくある問合せは、それこそコンタクトセンターの方は日々接していて肌感覚でもご存じのところ。分析した結果今まで見つかっていなかった質問文が出てきた!というのはよっぽどのレアケースです。コールリーズン分析から質問文を探す目的は「お客様から多く寄せられる問合せ」が何なのか?を知るだけではなく「お客様がどのような言い回しで問合せをしてきているのか?現在作成されている質問文はお客様の言い回しに合っているのか?聞いていることは同じでも、表現を変える必要はないのか?」といったものになります。その目線合わせを担当者間でも実施することが重要となります。

QA・コンテンツ作成のTIPS

コールリーズン分析でお客様からの問合せ内容を特定したあと、QA作成前にもう1ステップ踏む必要があります。それは問合せ内容をQA型とNonQA型に分けることです。

QA作成のコツ

ここでいうQA型の話題とはその名の通り、一対のQuetionとAnswerで成り立つ、一問一答の話題のことを指します。主に契約情報や個人情報に依存しない、複雑な条件分岐の無い問い合わせが、このQA型に分類されます。一方で、NonQA型とは、複雑な分岐や条件判断を伴う、より人の判断が必要になるような問い合わせを指します。個人情報を聴取し、顧客特定を行わないと回答できないような問合せはNonQA型に当てはまります。また、商品やサービスの詳細を踏まえていない、お客様の主観的な課題やお困りごとなどもNonQAに入ります。

お客様からの問合せ全体に占めるNonQA型の割合が多い場合には、一問一答型のFAQとして示せるQAの数が少なくなってしまうかもしれません。細かいQをいくら揃えたとしても、お客様が知りたいものにたどり着けないといったことが考えられます。その場合には無理に一問一答のQAを増やすのではなく、抽象的な質問を入り口に、具体的な質問へ辿らせるようなリンクを張ったり、シナリオ型のチャットボットでスムーズにボタン選択できるように設計していくことが大事です。関連した質問を近くに置く施策を実施している企業は多いと思いますが、関連した質問だけではなく、詳細な質問をまとめてもう少し抽象度の高いものにまとめてみる、といった手段も必要となります。

コンテンツ作成のコツ

FAQのKPIとして、お客様の解決率を取得し、それを改善指標としているケースは少なくないのでしょうか。

しかし、質問に対しての回答文だけではその指標を達成できない、つまりお客様に解決が提示できないものも多いため、それ以外の改善策が必要になります。

回答文で全て解決できるのがもちろん一番よいですが、難しい場合にはマイページやその他企業内ページへのリンクを貼り、その遷移率をKPIとしてウォッチするのもよいと考えます。FAQを見に来ていただいたお客様に迷うことなく目的に沿ったページに案内することも外部FAQページの役割であると言えます。

QA作成後のブラッシュアップ

QAを作成している皆さんなら当たり前に実施していることかと思いますが、FAQは作成して終わりではなく、実際にお客様に使っていただいてどれくらい解決に寄与しているかを図っていくことが重要です。FAQの場合は先ほどあげたようなKPIをきちんと設定し、新規QA作成、修正後にどれだけ効果があがったかを定期的に分析、改善していくことが必要となります。QA担当をWEB制作部隊が担っていることもありますが、QAコンテンツについてはセンターに近い、もしくはセンターと連携している方が分析を行って改善していくことが良いでしょう。なぜなら、分析した結果を元に新しい質問文を考えたり、既存の質問文を修正したときに、日ごろお客様の声をよく聞いているセンターの担当者の意見も聞けるところにいると、よりよい質問文が作成できます。もちろん回答文についてはサービスや商品担当の方に文言を考えていただく必要がありますし、WEBサイト全体でのアクセス数や検索、ページ遷移との検証も必要になるのでWEBご担当者との連携も必要になります。そのため、出来ればQA担当者はスーパーバイザーとの兼任などではなく専任化するのが望ましいです。

専任担当者は外部FAQだけではなく、コールリーズン分析結果を用いて内部ナレッジ修正や内部QA作成、その他リーズン分析結果からセンター改善のヒントは様々出すことが出来るので、そちらも合わせて専任化することで、お客様とのタッチポイントの全てにおいて改善がなされていきます。

 

関連記事:コールリーズン分析の重要性とは?活かし方とVOCとの関係性も解説

まとめ

外部FAQの質問文については、会話テキストやチャットテキストを分析することでよりお客様の問合せ内容に合わせた質問文(Q)を作成することが可能です。ただ、お客様の問合せ内容にはQA型とNonQA型があるので、各企業の問合せ傾向に合わせてQAページの構成を変えたり、チャットボットを組み合わせていくことも今後は必要です。

FAQ作成ご担当者は自社の質問文(Q)は本当に「お客様の言い回し」に沿っているか?を改めて分析してみると良いでしょう。

執筆者紹介

高美 由果理
高美 由果理
入社後、新聞社、スポーツメーカー、保険、通販業務などのコンタクトセンター運用を経験。その後新規事業開発推進部に異動し、BtoBイベント施策立案や実行、アウトバウンド専門センター企画及び立ち上げを推進。その後コンサルティング部に異動し、センター統合業務コンサルティング、音声認識ツール導入、テキストマイニング、チャットボット導入PRJなどを多数実施。
最近ではコールリーズン分析を起点としたオムニチャネル戦略や、商品・サービス改善などのPRJ全体管理を行っている。
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