コールレポートを活用したコンタクトセンターマネジメント(応用編)

 2021.10.11  2024.04.24

前回の「コールレポートを活用したコンタクトセンターマネジメント(基礎編)」では、コールレポートを活用したコンタクトセンターマネジメントについてお伝えしました。(まだご覧になっていない方はぜひご覧ください。)

コンタクトセンター全体の改善施策にも取り組みつつ、全体施策ではカバーしきれないオペレーター個人ごとの弱点にフォーカスをあてることで、さらなる改善を目指す方法について書きました。

今回の応用編では、具体的な改善活動についてお伝えいたします。

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平均応答時間(ASA:Avarage Speed of Answer)とは

コンタクトセンターの状況を把握するためにコールレポートを活用し、各レポート指標を分析することで、その指標が悪化している原因を特定し、改善活動を行います。

ここではケーススタディとして、平均応答時間を取り上げてみたいと思います。一般的なものであれば応答率かと思いますが、平均応答時間を改善すること=応答率を改善することにもつながります。

平均応答時間(ASA:Avarage Speed of Answer)とは

平均応答時間とはお客様が電話をかけてから、オペレーターにつながるまでの1件当たりの平均時間です。応答時間合計÷応答件数という式で算出することができます。

待ち呼に入ることなくすぐにオペレーターにつながる場合の平均応答時間は、数秒(3~5秒程度)です。これが、1分を超えるとお客様をお待たせしすぎているという印象になり、常に待ち呼が立っている状態となっているという状況です。

平均応答時間は、お客様に通話料がかからないフリーダイヤルですと、長めになることもあります。通話料がかからないので、繋がるまで待っているというお客様も多いでしょう。

平均応答時間は顧客満足度にもつながる指標

この時間が長いということは、オペレーターにつながるまでにお客様を待たしていることになりますので、待っている間に電話を切られて呼損となったり、長時間待たせることによる顧客満足度の低下を招くなど、お客様の印象を悪くしてしまいます。繋がりにくいセンターという印象を与えてしまうということです。

お客様をお待たせする=応答可能なオペレーターがいないということになりますが、これが突発的な入電増による一時的なものなのか、常に起こっている慢性的なことなのか、後者であれば改善が必要になります。

慢性的に平均応答時間が長いことは応答率の悪化にもつながる

慢性的に平均応答時間の数字が悪いということは、常に空きオペレーターがいない状態で待ち呼が発生している状況になっているはずです。お客様を長くお待たせすると呼損になるケースも増えてきますので、お客様をお待たせしない=平均応答時間を改善するということが、呼損を減らし応答率の改善にも繋がるわけです。

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平均応答時間が長い要因を調査する

平均応答時間が長いということは、オペレーターにつながるまでにお客様が待っているということです。言い換えると、お客様が電話をかけてきた際に、空きオペレーターがいないということになります。

空きオペレーターがいないので、お客様を待たせているということになるのですが、考えられる要因として以下のようなケースが挙げられます。

平均処理時間が長いために空きオペレーターがいない

平均処理時間とは、1件当たりの通話時間と後処理時間を足したもので、この処理時間が長いということは、一人のオペレーターが1時間あたりに対応できるコールの数が少なくなるということです。
そのため、全オペレーターで対応できる数以上のコールが入ってくると対応しきれないということになります。

入電数に対してオペレーターの数が少ない

入電数に対して対応するオペレーターの数がそもそも足りていないケースです。しかし、オペレーターを増やすということはその分運営コストが上がるわけですから、簡単に増やすということもできない場合もあります。

要因はセンターのキャパシティー不足

結果的には、どちらのケースもセンターキャパシティーに対してコール数が多いことが要因となっています。コール数に見合った十分なセンターキャパシティが確保されているのであれば、待ち呼が発生するケースが少ないかもしれません。

それでは、センターキャパシティを増やすにはどうすればいいのでしょうか?大きく分けると、オペレーターを増員する、オペレーターの生産性を向上させる、という方法があります。
しかし、簡単にオペレーターの増員ができるでしょうか?それには、オペレーションブースの増設も必要になってきますので、大掛かりな話となってしまいます。

生産性向上によるセンターキャパシティの拡大

オペレーターの増員という手段に行き着く前に、できることがあります。それは、オペレーターの生産性を上げることです。

例えば、1時間あたり4件処理できるオペレーターが10人のセンターで、1時間あたりの処理件数を60件に改善したいとします。

オペレーターを増員する方法では、5人増員することで、4件×15人で60件となります。

生産性を向上させる方法では、1時間あたりの処理件数を6件に改善し、6件×10人で60件となります。

どちらも1時間あたりの処理件数は60件となり、同じ処理キャパシティとなります。

1時間あたりの処理件数を2件向上させることで、オペレーターを5人増員したことと同じ結果となります。しかも、オペレーターの数は10人から変わっていませんので、センター運営コストが増えることもありません。

こうも簡単に改善ができるかという話もありますが、まずは、生産性を改善できる余地がないかということに取り組んでみましょう。

オペレーターの生産性を向上させるには

それでは、オペレーターの生産性を向上させるには平均処理時間(AHT:Average Hundling Time)を改善することが重要です。処理時間とは通話時間(保留時間含む)と後処理時間の合計で、コール1件の処理にかかる時間のことです。

例えば、平均処理時間が10分であれば1時間あたり6件処理することができ、15分であれば1時間あたり4件の処理となります。オペレーターが30人のコンタクトセンターなら、180件と120件となり、1時間あたり60件も処理件数に差が出ます。

それでは、処理時間を構成する各要素について見ていきましょう。

通話時間

まずは、通話時間の適正値を見極めます。極端に短くすればいいということではなく、お客様と必要な会話を行いつつ、無駄な部分を減らしていくことが必要です。通話時間も、オペレーターごとにばらつきが出てきている事が多いです。そのベストプラクティスとなるオペレーターと、そうではないオペレーターの間にある差は何なのか。

お客様との会話をコントロールできている、知識が豊富なためお客様の問合せ内容をすぐに理解できるなど、通話時間が短い要因を探っていき、通話時間の長いオペレーターへのトレーニングに活用します。

保留時間

保留の中には必要な保留と不必要な保留とがあります。不必要な保留とは、本来知識を習得していれば発生しない保留となります。まずはこの保留を削減していくことに努めます。

保留が発生している要因を調べます。特定の窓口で長いのか、新人ほど長い傾向にあるのかなど。

知識を習得できていない要因が、トレーニングが不足しているのか、手元の資料が足りていないのか、FAQの整備に問題があるのか、これも見ているだけでは分かりません。オペレーターにヒアリングを行い、どこに問題点があるのか探っていくことが必要です。

後処理時間

後処理時間についても、ボトルネックとなっている部分を見つけていくことになります。

また、後処理として決められている手順も本当に必要な項目なのか、必要性を検討してもいいでしょう。過去から慣例的に行っていて、そのまま変更していないということがあるかもしれません。

後処理についても、時間の短い人、長い人が出てくることでしょう。これも考え方は同じです。長い人と短い人の違いを探っていきます。システム操作の理解度が低い、キーボードの入力が遅い、お客様との会話をまとめることに時間がかかるなど、これらはよくある要因です。

前回のブログでもお伝えしたように、コンタクトセンター全体を見るのではなく、オペレーター個人ごとにフォーカスして、改善点を洗い出していきましょう。オペレーターごとに数字が悪化している要因は異なります。全体施策も行いつつ、個人にフォーカスした取り組みもしていきましょう。

コールレポートを活用した改善活動

ここまで見ていただいたように、取り掛かりは平均後処理時間を短縮することでした。それが、最終的には処理時間を短縮して、生産性の改善につながりました。このように、ある指標を改善するためには、複合的に絡み合っている要因を網羅的に改善していく必要があります。

まずは改善のターゲットを決める

処理時間を短縮するため、通話時間、保留時間、後処理時間の短縮について説明いたしました。これらを一度に改善することができればいいのですが、なかなか難しいのではないでしょうか。というのも、それぞれの改善施策は別のものになってくる可能性が高いからです。

全てを一緒にと欲張るのではなく、今月は保留時間の改善にターゲットを決めて取り組みというような方法をお勧めいたします。

次に要因分析を行う

悪化している要因=改善ポイントとなります。余韻分析も、「こうだろう」「ああだろう」といった推測で行うのではなく、しっかりと科学的に分析する必要があります。

窓口ごとのバラつき、問合せ内容ごとのバラつき、オペレーターごとのバラつきなど、ベストケースとワーストケースをコールレポートの中から見つけ出します。これらの区分ごとに並べたときに「A窓口だけ悪い」「入社後半年以内の人に偏っている」など、改善のターゲットが見えてくると思います。

ターゲットが見つかったら、そのターゲットが悪化している要因は何なのかということを分析していきます。オペレーターであれば、直接ヒアリングして聞くことも有効です。実際の応対をモニタリングしたり、各行動を計測したりします。

改善施策を立てる

悪化の要因が判明したら、それに向けた改善施策を立てていきます。改善施策は、センター全体をターゲットとすることもあれば、オペレーター個々に対して行うことも必要です。
よくあるのは、センター全体の施策を行ったが改善が進まなかったというケースです。これは、オペレーター個々に着目していないために起きていることなので、オペレーター個人ごとの改善施策も行うことで、センター全体のボトムアップにつながります。

改善施策の実行と測定

改善施策を行った結果は、コールレポートを出力して計測していきます。これも、週ごとや月ごとに結果を並べ、改善の推移を測定していきます。

改善施策の見直し

改善施策がうまくいけば、コールレポートに結果が表れてきますが、残念なことに、改善結果に表れてこないということもあります。この場合は、改善施策の検証を行いましょう。改善施策は有効だが結果が出るまでに時間がかかるのか、それとも改善施策自体が合っていないのか。
継続的に見直していくことで、より良い改善施策となっていきます。

改善チームの専門化

ただし、これらの改善を現場管理で忙しいSVに兼務で行ってもらうことができるでしょうか?現場管理も、改善活動もどちらも中途半端になってしまうのではないでしょうか。
おすすめは、専門チームを立ち上げ、短期的に取り組むことです。

まとめ

コールレポートを活用したコンタクトセンターの改善についてお伝えいたしました。ここに挙げたものはあくまで一例ですので、改善手法は他にもいっぱいあります。

しかし大切なことは、改善活動をやりっぱなしにするのではなく、改善活動の結果を測定し、活動の中身を常に見直していくことです。

執筆者紹介

宮本 俊之
宮本 俊之
ベルシステム24に入社後はオペレーション部門に配属となり、インバウンド、アウトバウンドのオペレーションマネージメントを14年に渡り経験。その後2008年より、システム関連部門へ異動し、外部のお客様へシステムの提案、導入を行っている。オペレーション部門出身という経験を活かし、業務目線でのシステム提案を得意とする。
現在は、BellCloud+のサービス構築、お客様への提案、導入を行っている。
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