コンタクトセンターにおいて、なぜコールレポートは必要なのでしょうか。
コールレポートを活用することで、コンタクトセンターの運営を見える化することができ、実態把握やパフォーマンスの改善に繋げることができることからコールレポートはコンタクトセンター運営には必要不可欠です。
しかし、コールレポートをどのように活用すればいいのか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はそのような悩みを解決するため、コンタクトセンターPBXに用意されているレポートの種類や、それぞれのレポートの活用についてお伝えします。
コールレポートとは
コンタクトセンターの運用にあたっては、業務ごとの入電状況、オペレーターごとの生産性の管理など、感覚値ではなく数値を根拠とした科学的なマネジメントをすることが求められます。この時に活用されるものがコールレポートです。
コールレポートでは、業務ごとの入電状況、オペレーターごとの生産性などを数値で出力することができます。
コンタクトセンターPBXによって、使用するツールや表示のされ方が変わることはありますが、大きく分けてコールレポートは、「リアルタイムレポート」と「ヒストリカルレポート」が提供されています。
それでは、これらを詳しく見ていきましょう。
リアルタイムレポート
リアルタイムレポートとは、現在の状況を表示するためのレポートです。
現在の状況とは、業務目線で言うとその業務を受電できる受付可能なオペレーターの人数、待ち呼の数や最大待ち時間の表示など、業務単位での状況が表示されます。
オペレーター目線では、各オペレーターごとのステータス(受付可能、通話中、後処理中、離席中など)が、オペレーターの一覧表や、円グラフの形式で表示することができます。
ヒストリカルレポート
リアルタイムレポートが今の状況を示すものだったものに対し、ヒストリカルレポートは、その名の通り過去がどうであったかということを集計するためのレポートです。
コンタクトセンターがどのような成績で運営されたか、ということを表すものになります。
ヒストリカルレポートの集計は大きく分けると、業務レポート、オペレーターレポート、トランク(回線)レポートがあります。この中でもよく使われるのは、業務レポート、オペレーターレポートではないでしょうか。
また、時間別レポート、日別レポート、週別レポート、月別レポートのように、複数の集計期間が用意されています。
コールレポートを見る目的
コールレポートは、センター運営の実績を見るものですが、同時にコンタクトセンターが健全に運営されているかという指標でもあります。
応答率が低すぎるセンターでは、繋がりにくいセンターとなりお客様の満足度を下げているかもしれません。または、応答率を高く維持できていても、その分オペレーターの稼働率が高すぎる場合は、オペレーターが疲弊しているかもしれません。その結果、退職につながる可能性もあります。
このように、コールレポートに表れる情報から、適切なコンタクトセンター運営となっているかをマネジメントしていきます。
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リアルタイムレポートを活用したマネジメント
リアルタイムレポートとは、コンタクトセンターの今の状況を表示するものになります。
従って、マネジメントも今起きている状況に対応するという流れになります。
リアルタイムレポートで表示される主な項目を紹介し、どのような視点で見ていくかを解説いたします。
ここでは弊社クラウドPBXサービスのBellCloud+(AVAYAベースのサービス)で表示されるレポートを元に説明いたしますが、他のコンタクトセンターPBXシステムでも考え方は同じです。
業務リアルタイムレポート
業務リアルタイムレポートは、業務ごとに情報が表示されます。
待ち呼、最大待ち時間
現在の待ち呼の数と、待ち呼のうちの最大待ち時間が表示されます。
待ち呼が発生した場合の対応は、後処理中のオペレーターに後処理を中断して待ち呼に対応するように指示をするか、別のオペレーターにスキルを一時的に付与し、一次受付をさせるかになります。
業務ごとのオペレーターのステータス内訳数
オペレーターのステータスとは、受付可、通話中、後処理中、離席中など、業務にログインしているオペレーターのステータスが数値で表示されます。
特に注意しなくてはならないのは、受付可の人数です。この数が0ということは、この業務を受電可能なオペレーターがいないということになりますので、次にかかってきた電話は待ち呼になってしまいます。
なるべく通話や後処理を早く切り上げ、受付可のステータスにもっていくことで、繋がりやすいコンタクトセンターを目指します。
それには、次に説明するオペレーターリアルタイムレポートを見て、オペレーターごとの稼働状況をマネジメントします。
オペレーターリアルタイムレポート
オペレーターリアルタイムレポートは、オペレーターごとに情報が表示されます。
オペレーターごとの現在のステータス(受付、通話中、後処理中、離席中など)と、そのステータスに変わってからの経過時間が表示されます。
オペレーターリアルタイムレポートを使ったマネジメント例を挙げると次のようなものになります。
まずはオペレーターのステータスを確認する
一覧で表示されている各オペレーターのステータスを確認し、全体のステータスの内訳を確認します。ほとんど後処理中で受付可のオペレーターがいない場合は、次の入電が待ち呼になることが予測されます。
ステータスごとの経過時間を確認する
ステータスごとに明らかに長い時間のものが無いか確認をします。
例えば、通話時間の長いものがあれば、クレームなど何らかのトラブルが発生しているのではないかと推測し、モニタリングを開始します。
ヒストリカルレポートを活用したマネジメント
ヒストリカルレポートには、業務レポートとオペレーターレポートがあるとお伝えしました。それでは、これらのレポートを使ってどのようにマネジメントをしていけばいいのでしょうか。
ヒストリカルレポートについて
ヒストリカルレポートには、業務レポート、オペレーターレポートなどがありますが、レポートで出力される項目は、同じようなものとなっています。一部オペレーター系レポートにはない項目(着信数など)もありますが、考え方は同じです。
簡単に項目例を挙げるとこのようなものです。
件数系項目
着信数、応答数、放棄呼数、応答率
時間系項目
平均応答時間、平均通話時間、平均保留時間、平均後処理時間、平均待ち時間
これらの数値を活用して、業務マネジメントをしていくわけです。
件数系数値の説明
件数系の数値は、コンタクトセンターへ電話がかかってきたボリュームを表しています。
着信数
PBXに対して着信した件数です。
応答数
着信した件数のうち応答できた件数です。
放棄呼数
着信した件数のうち放棄(呼損)となった件数です。
応答率
着信した件数のうち応答できた件数の割合です。
時間系数値の説明
時間系の数値は、処理したコールの処理効率を表しています。
平均応答時間
PBXに着信してから応答するまでの平均時間となります。Average Speed of Answerの頭文字をとって「ASA」と呼ばれることもあります。この時間が長いと、応答するまでに待ち呼で長い時間待たせることが多いということになります。
平均通話時間
応答したコールに費やした通話の平均時間となります。Average Talk Timeの頭文字をとって「ATT」と呼ばれることもあります。コンタクトセンターPBXの種類によっては、通話時間には保留時間が含まれないことがあります。平均通話時間は業務特性により適切な時間というものがありますので、ただ短ければいいというわけではありません。
平均保留時間
通話中に保留に費やした平均時間となります。
平均後処理時間
応答したコールに費やした後処理の平均時間となります。
平均処理時間
通話時間と後処理時間を足した1コール当たりの平均時間となります。Average Hundling Timeの頭文字をとって「AHT」と呼ばれることもあります。
平均待ち時間
受付可のまま次の電話を待っていた平均時間となります。この時間が長い場合は、コールに対してオペレーターの余裕があるという判断ができます。逆に平均待ち時間が0に近い場合は、ひっきりなしに電話が入ってきて、コールに対してオペレーターの余裕がないということになります。
あまり余裕がありすぎるのも問題ですが、余裕が無さすぎるのも問題です。余裕がない場合は、オペレーターが電話の間に一息つく余裕もない状態ですので、処理件数が多くなるものの、それに比例してオペレーターが疲弊してしまうことになりますので、あまり健全な状態とは言えません。
オペレーターレポートを活用したマネジメント例
業務レポートではセンター全体に均されていましたが、オペレーターレポートは、オペレーター個人ごとのレポートとなります。
オペレーターレポートでマネジメントは「個人ごとのばらつき」がないかということを見ていきます。
センターの処理効率の底上げをしたいと考えた場合に、全体的な施策では限界があるケースもあります。この場合は、オペレーターレポートを見ることでオペレーター個人にフォーカスしていきます。
オペレーターレポートから処理件数が少ない人をピックアップします。少ない人は多い人と比較して、どこがボトルネックとなっているのか。通話時間が長いのか、保留時間が長いのか、後処理時間が長いのか、オペレーターごとに処理効率が落ちている理由は違いますが、どこかに処理効率を引き下げる要因があるはずです。
全体施策での改善も図りつつ、オペレーター個人にもフォーカスすることで、より改善が進みます。
コールレポート活用の応用編
コンタクトセンターの業務改善
コンタクトセンターの運営には業務改善が必要となります。よくある業務改善例として、応答率を上げる、通話時間を短縮する、後処理時間を短縮するなど、コンタクトセンターのパフォーマンス改善を目標として掲げることが多いです。
例えば、応答率を改善するとした場合は、センターの処理キャパシティを向上させることでより多くのコールに対応することができ、応答率を改善することができます。簡単なのは人員投入ですが、かけられるコストが限られている中では、簡単に人を増やすことは難しいでしょう。
それではどうするかというと、処理時間を短縮することによりセンター全体の処理キャパシティを向上させることになります。結果的には、処理時間を短縮することが応答率の改善にも繋がります。
ヒストリカルレポートはあくまで平均値のレポート
ヒストリカルレポートは過去の状況を出力してくれますが、それは集計周期における合算値や平均値であるということです。1時間単位のヒストリカルレポートであれば、ある1時間における着信数、応答数、放棄数などは合計値ですし、通話時間、後処理時間など平均値ということになります。
何が言いたいのかというと、特に時間に関しては平均となりますので、例えば突発的に通話時間が長いものがあったとしても、1時間の平均に均されてしまっているため、そのような異常値を見つけることが難しいことがあります。
1コールごとのローデーターを活用する
ヒストリカルレポートでは突発的な異常値を見つけることは難しいとお伝えしましたが、コールセンターPBXによっては1コールごとの詳細なローデーターを出力することが可能です。1コールごとのデータとは、通話1件ごとの情報となり、対応したオペレーター情報、通話時間、保留時間、後処理時間などが含まれています。より詳細な情報から異常値を見つけていきます。
異常値とは何か?
異常値と書くと仰々しいですが、先ほども出てきたようなばらつきを探すということになります。
1コールごとのデーターを元に分析を行いますので、誰がどの業務を受信したかということも分かるわけです。
- 特定の人の処理時間が長い
⇒業務習熟度の問題やスキルの問題ではないか?個別にトレーニングを行ったり配置換えを行う。 - 特定の業務だけ処理時間が長い
⇒その業務に対するトレーニングは適切か、FAQは整備されているか? - 通話時間が長いのか?後処理時間が長いのか?
⇒通話時間が長くなっている要因、後処理が長くなっている要因を分析する。後処理が長いのであれば、後処理時間を短縮するための施策を検討する。
まとめ
簡単にコールレポートを活用したマネジメントについてお伝えいたしました。ヒストリカルレポートを活用し、コンタクトセンターの今の状況を可視化することで、お客様にとっても、働くオペレーターにとってもコンタクトセンターの運営が健全であるかマネジメントをしてみてください。
なんとなくこうだろうという感覚的なマネジメントではなく、コールレポートを元に数字を使った科学的なマネジメントを行うことで、より効果的な改善を図ることができるようになるでしょう。
執筆者紹介
現在は、BellCloud+のサービス構築、お客様への提案、導入を行っている。
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