近年、さまざまな業界においてテレワークの導入が進んでいます。コンタクトセンターにおいても、在宅化を検討する企業は少なくありません。そこで本記事では、コールセンターが在宅化を進めるべき理由や、運営をリモート化するメリット・デメリットを解説します。併せて、在宅化を成功させるポイントも紹介します。
コールセンター・コンタクトセンターが在宅化を進めるべき理由
コールセンターやコンタクトセンターが在宅化を進めるべき理由はさまざまですが、1つには、イレギュラーな事態への対応力向上が挙げられます。
例えば、大規模な災害が発生した場合、交通機関の麻痺により従業員がオフィスへ出勤できない恐れが考えられるでしょう。また、感染症が流行すると、感染リスクの増大が懸念されるため、通常通りの業務を行うことは難しいでしょう。業務を在宅化することで、このようなイレギュラーな事態にも対応できるのです。
さらに在宅勤務化は、諸事情により自宅を離れられない方の採用が可能となり、雇用の促進につながります。慣れ親しんだ自宅で時間を有効に使いながら働けるため、人材定着率の向上も見込めます。併せてペーパーレスやツールも導入すれば、業務効率化や生産性向上も実現できるでしょう。
コールセンターとコンタクトセンターの違いとは?
コールセンターとコンタクトセンターはしばしば混同されがちです。どちらも顧客対応が主な業務ですが、コミュニケーションの形態は異なります。
一般的に、コールセンターは電話による対応を行います。顧客からの問い合わせやクレームなどの電話に対し、オペレーターが受け答えをします。一方のコンタクトセンターは、電話だけでなくメールやファックス、チャット、SNSなど、さまざまな手段を用いてコミュニケーションを取ります。
コンタクトセンター運営をリモート化するメリット・デメリット
コンタクトセンター運営のリモート化にはさまざまなメリットがありますが、いくつかデメリットも存在します。それぞれ正しく把握したうえで導入を検討しましょう。
リモート化によるメリット
リモート化によるメリットとして、まずコストダウンの実現が挙げられます。在宅で対応可能な環境を整えれば、オフィスを縮小化できるため、備品を最小限にとどめつつ水道光熱費や通信費などの削減も可能です。
また、在宅勤務ならオフィスへの通勤が困難な方を採用できます。「持病や障害を持っていて自宅を離れられない」「家族の介護に付きっきりで通勤する時間がない」といった層を採用に結びつけ、人材不足の解消が見込めます。
さらに、リモート化によって従業員は通勤する必要がなくなるため、時間を有効に使えるようになります。そうなれば従業員満足度が高まり、モチベーションを高く保ちながら業務に臨めるため、さらなる生産性の向上が期待できます。通勤が不要になれば災害時などの対応力も上がることから、BCP対策としても有効です。
リモート化によるデメリット
リモート化のデメリットとしては、管理者がその場で各員の業務をチェックできないことが挙げられます。管理の目が行き届かないため、従来のオフィス勤務と同じようには、「作業者がきちんと業務を行っているのか」把握しにくいのです。
また、セキュリティ面の問題も挙げられます。コンタクトセンターは、顧客の個人情報を扱うケースも少なくありません。顧客の個人情報は適切に管理しなければならず、万が一外部へ流出してしまうと大問題です。リモート環境下では、従業員が適切に個人情報を管理しているか把握しづらい一面があります。
ほかにも、個々の従業員が別々の場所で勤務を行う都合、コミュニケーションが取りにくくなってしまう点も問題です。その結果、従業員が孤独感を抱いてしまう、情報共有がしにくい、といった問題が発生する可能性は否めません。
コンタクトセンターの在宅化を成功させるためのポイントは?
行き当たりばったりでリモート勤務を導入しても、運用面でさまざまな課題が発生してしまう恐れがあります。導入前に、在宅化を成功させるためのポイントを把握しておきましょう。
ルールやマニュアルの整備
従来とは異なる働き方になるため、ルールを定めなくてはなりません。勤務時間や業務開始・終了の通知方法、コミュニケーションの取り方などをルール化しましょう。
加えて、業務で発生する費用をどのように負担するのかも決める必要があります。オフィス勤務の場合、光熱費や通信費などは会社が負担していました。しかし、リモート環境下では従業員の自宅が職場となるため、自宅の照明や回線を使用します。これにより生じる諸費用を会社と従業員のどちらが負担するのか、どのような割合で負担するのかを決めておきましょう。
また、業務に関するマニュアルの整備も必須です。在宅勤務では、業務で不明なことがあっても、すぐ上司に相談できません。網羅性の高いマニュアルが用意されていれば、わからないことがあっても自ら調べて解決してもらえるでしょう。
コミュニケーションを取りやすい環境の構築
リモート勤務環境下においては、必然的にコミュニケーション不足が発生します。コミュニケーション不足が業務に影響をおよぼす可能性は十分考えられるため、管理者は配慮しなくてはなりません。
対策としては、コミュニケーションに関するルールを設ける方法があります。週に一度はWeb会議を行う、定期的にオフィスで集まりミーティングをする、1日1回はやり取りを行うなど、コミュニケーション不足を解消できる環境を構築しましょう。
これらの実現にあたっては、ツールの導入も欠かせません。リアルタイムでやり取り可能なチャットツールの導入がおすすめです。スピーディなやり取りができるうえ、ファイルの共有も可能です。ITツールについては、次で詳しく解説しましょう。
ITツールの導入
在宅勤務の仕組みを構築するうえで、ITツールの導入は外せません。勤怠管理ツールやコミュニケーションツール、Web会議システムなどの活用を検討しましょう。
勤怠管理ツールは、クリックで業務の開始・終了時間を記録できるタイプが一般的です。勤怠データを集計し、出力できるものもあります。コミュニケーションツールについては、先述のビジネスチャットツールがおすすめです。テキストによるスピーディな情報共有が実現されます。Web会議システムとは、オンラインで会議を行えるツールのことで、ZoomやSkypeなどが代表的です。
労務管理やセキュリティ管理機能を実装した、コンタクトセンターシステムの導入も併せて検討してみましょう。高度なセキュリティシステムを実装したツールなら、個人情報の流出も回避し得るでしょう。業務状況を一元管理できるものもあるので、管理者の負担軽減にもつながります。
電話応対用システムのクラウド化
まず考えられるのは、クラウドCRMの導入です。「CRM」とは日本語で「顧客関係管理」を意味し、顧客情報の一元管理を実現できるツールのことです。クラウド化すれば、個々が離れた場所で業務を行っていても、クラウドでスムーズな情報共有を実行可能です。
また、クラウドPBXの導入により、インターネット回線を利用して自宅にコンタクトセンター環境を構築できます。クラウドCTIでPBXとCRMを連携すれば、業務効率をより高められるでしょう。
在宅勤務の仕組み化の成功例は?コールセンター運営企業の実例
在宅勤務の仕組み化を進めるにあたっては、すでに導入し成功している企業を参考にするのがおすすめです。ここでは、コンタクトセンターのリモート化に成功している企業の事例をいくつか紹介します。
ベルシステム24
「ベルシステム24」は、2011年10月から在宅コンタクトセンターサービスを展開し、完全リモートでのコンタクトセンター運営を行っております。導入当初は、やや生産性の低下が見られたとのことですが、従業員が業務に慣れていくにつれて、在宅前とほぼ同程度の生産性を実現しました。
同社ではさまざまなITツールを導入し、リモート環境下での業務に活かしています。覗き込み、なりすましの検知によるセキュリティ対策を講じつつ、離席状況、稼働状況もツールでチェックしており、在宅でもオフィス勤務と同じような管理が実現されています。また、朝礼や終礼にはZoomやTeamsを使用し、コミュニケーションを取る機会を増やしているのも特徴です。実際に同社でリモートワークに移行した従業員からは、高い評価を得ているようです。「時間を有効活用できるようになった」「子どもの送り出しやお迎えができる」など、リモートワークへの移行を歓迎している様子が伺えます。
サイボウズ
ソフトウェア開発企業として知られる「サイボウズ」は、過去にコールセンター業務をリモート化した経緯があります。きっかけは、大型台風の接近でした。従業員が被害に遭うことを恐れ、一部の業務を在宅化したのです。
同社では、一部のコールセンター業務をリモート化するにあたり、ITツールを有効活用しました。グループウェアやチャットツールを使用し、リモートワーク環境下でもスムーズにコミュニケーションを取れる体制の構築に成功しています。
まとめ
コールセンターやコンタクトセンターのリモート化により、企業はさまざまなメリットを得られます。ただし、デメリットがあるのも事実なので、それも理解のうえで導入を検討しましょう。
リモート化を成功させるには、ルール化やマニュアルの整備、ツールの導入、コミュニケーションを取りやすい環境の構築などが重要です。
ベルシステム24では、コンタクトセンターが抱えるさまざまな課題を解決できるソリューションサービスを提供しています。CRMソリューションも提供しているため、併せて検討してみましょう。
この記事の推奨者
現在は、企画部門でコンタクトセンターのDX推進を目的にRPAや予測分析ツールのオペレーション内での活用支援を行っている。
- TOPIC:
- トレンド