今日、顧客体験の重要性が強く認識される中で、「カスタマーサクセス」というアプローチが注目を集めています。しかし、この新しいタイプの顧客サービスは、従来の「カスタマーサポート」とどこが違うのでしょうか。
本記事では、カスタマーサクセスの特徴やメリット、実施の目的や適したサービス、カスタマーサポートとの違いなどについてわかりやすく解説します。
カスタマーサポートとは
カスタマーサポートとは、商品・サービスに関する顧客からの問い合わせや相談などに対応する仕事です。顧客からの問い合わせチャネルは電話、メール、チャットなどさまざまですが、基本的にその仕事は顧客から連絡を受けたときに始まります。
カスタマーサポートの基本的な仕事内容は問い合わせ対応、トラブル対応ですが、「どの顧客がどのような問い合わせをしたのか」、「どの商品にどのような不具合が出たのか」などのナレッジを企業内に蓄積・共有するのも大きな役割です。よって、カスタマーサポートの役割には、企業の顧客管理や商品開発などに寄与する側面もあります。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、顧客が製品・サービスを有効活用できるように能動的に支援する取り組みです。つまり、カスタマーサクセスとは言葉通り、製品・サービスの利用に伴う顧客体験を「サクセス(成功)」させることを目指しします。
たとえば、機械製品にはユーザーがスムーズにその製品を利用できるようにマニュアルが付属するのが一般的ですが、これもカスタマーサクセス戦略のひとつに位置付けられます。あるいは、キッチン家電の販売において、「その家電で作れるおすすめ料理のレシピ」を付録として付けるといった、付加価値的なサービスもカスタマーサクセスのひとつです。
このように、カスタマーサクセスにおいては、顧客が製品・サービスの価値や魅力をより効果的に引き出せるようにさまざまな仕方で支援します。
カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違い
続いては、上記の基本的な特徴を踏まえた上で、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの主な違いを解説します。
顧客との関わり方の違い
カスタマーサポートは基本的に、顧客から連絡を受けて初めて動き出す「事後対応的」なサービスです。また、顧客の問題が解決したら、サポート業務もそこで終了します。
それに対して、カスタマーサクセスは、より能動的な性質を持っています。たとえば、システムの導入支援やマニュアルの提供などのオンボーディングサービスは、顧客が困らないように「先回り的」に用意して提供するものです。また、カスタマーサクセスは、カスタマージャーニー全体において継続的に顧客へサービスを提供していきます。
適したサービスの違い
カスタマーサポートは、基本的にあらゆるジャンルのビジネスにおいても必要となるサービスです。どのような製品・サービスでも、顧客が何らかの疑問やトラブルに遭遇する可能性がある以上、その問い合わせ窓口の存在は欠かせません。
他方、カスタマーサクセスは特定の問題の解決に役立つようなソリューション系のサービスやサブスクリプションサービスに特に適しています。というのもソリューション系のサービスに対して顧客が本質的に求めているのは、そのサービスの利用によって自らの課題を解決することにあるからです。
いくらサービスの中身が優れていようと、肝心の課題を解決できなければ、「利用して良かった」とユーザーが感じることはありません。その意味では、顧客にとってのソリューション系サービスの価値は、カスタマーサクセスの成否にかかっています。
また、サービスの継続利用によって売上を上積みしていくサブスクリプションサービスでは、顧客を維持することが利益に直結します。したがって、サブスクリプションサービスでは顧客のニーズを継続的に満たすためにカスタマーサクセスへ取り組むことが非常に重要です。
目的の違い
カスタマーサービスの仕事は、顧客に生じた何らかの問題を解決することです。程度の差はあれ、問題が生じて問い合わせせざるを得なくなった時点で、顧客はマイナスの感情を製品・サービスに抱いています。カスタマーサービスの目的は、このマイナスの感情を最低限に抑えることであるため、基本的に収益へ直接寄与することは期待されていません。
これに対してカスタマーサクセスの目的は、製品・サービスの利用体験を成功させて顧客満足度を上げ、顧客生涯価値(LTV)を向上させることです。アップセル・クロスセルなどを通して、収益へ貢献することも求められます。
KPI/KGIの違い
仕事内容や目的の違いから、カスタマーサポートとカスタマーサービスでは、KPIないしはKGIも異なります。カスタマーサポートで使われる測定基準は、問い合わせへの対応率や、問い合わせメールへの返信速度などがメインです。
他方、カスタマーサクセスで使われる指標は、顧客の定着率、解約率、LTV、リピート率、アップセル/クロスセル、顧客満足度などが主に使用されます。
カスタマーサクセスを導入するメリット
カスタマーサクセスを導入することで、企業は「LTVの向上」「解約率の低下」「フィードバック機会の増進」などのメリットを得ることが可能です。
顧客生涯価値(LTV)の向上
顧客生涯価値(Life Time Value)とは、一人ひとりの顧客が企業にもたらした利益の合計額です。しばしばLTVと略されます。昨今のビジネスにおいては、新規顧客を数多く獲得して利益を上げていくよりも、既存顧客と良好な関係を維持構築してLTVを向上させていくことが重視されています。
カスタマーサクセスの成功を通して顧客満足度を向上させ、顧客の定着率向上やクロスセル・アップセルを促進することで、LTVの向上が期待できます。
解約率(チャーンレート)の低下
解約率の低下も想定されるメリットです。カスタマーサクセスによって、顧客が製品・サービスに満足感を覚えれば、解約率を下げることが可能になります。サブスクリプションサービスでは、顧客の解約率または定着率が利益に直結するので、ここを改善することはとても大切です。
フィードバックの機会の獲得
カスタマーサクセスは企業から顧客への一方的なアプローチではなく、顧客側からフィードバックを受けることも可能です。ユーザー自身の目線から製品・サービスへの意見や感想をヒアリングできれば、その情報を商品開発や顧客対応の改善へと還元できます。事業の持続的な成長に役立てらるでしょう。
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まとめ
カスタマーサービスは顧客から問い合わせや相談を受けてから事後的に対応する仕事です。その性質上、カスタマーサービスは顧客体験において生じたマイナス感情をゼロに近づけるのが目的になります。
他方で、カスタマーサクセスは顧客が製品やサービスを有効活用できるように先回り的に支援する仕事です。カスタマーサクセスは、顧客が製品・サービスの価値を最大限に引き出せるように助け、顧客体験においてプラスの感情価値を生み出すことを目指します。
サブスクリプションサービスの普及や、LTVの重要性などを考えると、カスタマーサクセスをはじめとする顧客体験を向上させる施策の必要性は今後ますます高まってくると考えられます。いまのデジタル時代において顧客体験を向上させるアプローチとはどのようなものか関心のある方は、以下の資料もぜひご参照ください。
参考資料:「デジタル時代にふさわしい 顧客へのアプローチとは」
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