コンタクトセンターが通話録音をする、その具体的な理由をご存知でしょうか。ここでは企業の経営者・管理職の方やEC担当の方に向けて、コンタクトセンターで通話録音を行うメリットや、通話録音システムを選ぶ際のポイントについて解説していきます。
コンタクトセンター(コールセンター)における「通話録音」とは
通話録音は、コンタクトセンター(コールセンター)において、オペレーターと顧客との会話を記録として録音するシステムです。両者の間で交わされた会話の内容は、通常、音声データとしてシステムに一定期間記録されます。このような取り組みは、顧客に対してのサービス改善のためだけでなく、会話中のトラブルを防いだり、万が一大きな問題に発展した際、なるべく早い解決を目指すための証拠としたりする目的で行われています。通話録音をしているコールセンターは多くなっており、現代では一般的な取り組みといえるでしょう。
通話の録音方法には、モノラル録音とステレオ録音の2種類があります。「モノ」に「1つの」という意味が含まれている「モノラル」という言葉のとおり、前者は1つのマイクで音声を拾います。平面的で、音の広がりを感じにくいという特徴があります。スマートフォンなどの携帯電話で録音する場合はこのタイプの方法が採用されているので、耳馴染みがあるかもしれません。一方、後者のステレオ録音は2つ以上のマイクを使用して音を拾う方法で、立体感や臨場感を感じられる音になります。話をしている人物の声の大きさや話し方などの特徴が聞き取りやすくなるのが、ステレオ録音の大きな魅力といえるでしょう。
コンタクトセンターが通話録音を行うメリット
コンタクトセンターが通話録音を行うメリットはさまざまありますが、ここでは「聞き逃し防止」「円滑なトラブル対応」「クレーマー対策」「人材育成」「オペレーター対応の品質管理」「コンプライアンス管理」の6つに分け、そのメリットを1つずつ詳しく解説していきます。
聞き逃し防止
コンタクトセンターで顧客からの電話に対応するオペレーターは、顧客からの問い合わせや要望などを確認し、必用であれば社内に確認して正しい回答を顧客に伝えなくてはいけません。しかし、顧客の話すスピードが速かったり、イントネーションが分かりにくかったりすると、上手く聞き取れないこともあります。
また、顧客からの問い合わせ内容も多岐に渡るので、それらを説明している間に話を聞き逃してしまう恐れもあるでしょう。通話録音システムがあると、そのような場合に後から通話内容を確認できるため、問い合わせ内容を理解できなかったり、聞き取れなかったりしたときにも困りません。聞き間違いを減らすことにも役立つでしょう。
そして、万が一聞き逃しても後から確認できるという安心感は、受け手の心理的な負担軽減にもつながります。録音がなければ、聞き逃してはいけないという思いから、必要以上に緊張を迫られるなど、心理的負担が大きくなってしまう恐れがあるのです。録音があることで、会話をメモすることだけにとらわれるのではなく、顧客との会話自体に集中でき、自然な会話が可能になります。
円滑なトラブル対応
日々多くの顧客との会話をしていく中で、何かしらのトラブルに発展してしまうこともあるでしょう。要望に対しての回答が上手くできなかったり、会話がスムーズにできず顧客を怒らせてしまったりすることは、残念ながら珍しい事象ではありません。また、中にはオペレーターを嫌な気持ちにさせる言葉を投げかけるような顧客もいるでしょう。そのようなトラブルが発生したときでも、通話を録音しておけば、トラブルの元はどちらにあるのかを客観的に確認できます。第三者にも、正しい状況を伝えることが可能になるのです。
録音していないと、言った・言わないの押し問答になる可能性が高く、どちらが正しいのかを公平に判断することは難しいでしょう。企業だけでは対応できないような大きなトラブルに発展した場合も、公正な場に証拠として提出できるので安心です。
クレーマー対策
通話録音システムを導入すると、電話がつながる前に自動アナウンスで会話を記録していることを顧客に伝えることができます。これにより、悪質なクレームを訴える顧客をあらかじめ減らす効果が期待できるでしょう。電話をかけてくる顧客の中には理不尽な要求をしたり、悪意のある言葉を投げつけたりする人がいるかもしれず、それに対応する社員の心理的負担はどうしても大きくなってしまいます。会話が録音されていることが事前に分かると、顧客側には話す言葉に気を遣おう、という意識が自然と働くため、悪質なクレーマーを減らせる可能性があるのです。オペレーターを守るという観点からも、抑止材料として通話の録音はメリットがあるでしょう。
いざというときは証拠として警察などに録音データを提出することも可能なので、悪質なクレーマー対策として録音は非常に有効なのです。
人材育成
通話録音したデータは、新人育成やオペレーター全員のスキル改善に役立てることもできます。
新人研修の一環として導入されている取り組みの1つに、先輩と顧客とのやり取りを聞く、という方法があります。マニュアルを読むだけでは分かりにくい電話対応について、実際のやり取りを側で聞くことにより、業務としてイメージしやすくするために行われるものです。多くのコンタクトセンターでこのような取り組みは行われていますが、このときリアルタイムの通話を研修材料にすると、毎回同じような内容が続いてしまったり、そもそも電話がかかってこなかったりなど、予測できない事態が起こることもあります。また、慣れない時期に大きなクレームの電話への対応を目の当たりにすることで自信をなくし、離職してしまう新人が出る恐れもあるでしょう。
このとき、あらかじめ録音した通話音声を活用し、新人に聞かせたい内容だけをピックアップして研修材料とすれば、上述した問題を解消することができるのです。特に対応が優れているオペレーターの通話内容を教材にすれば、より良い対応をより多くのオペレーターに学んでもらえるというメリットもあります。
限られた研修時間を有効活用できるだけでなく、さまざまなパターンの音声を用意しておくことによって、幅広い対応方法を教えることもできるでしょう。
こうした録音音声は、新人だけでなく、全社員の教育にも活用することが可能です。オペレーターの中には、話し方が少々きつかったり、早口過ぎたりする人もいるかもしれません。しかしそうした問題点は、本人の主観的な目線では実感しにくいことが多くあります。注意するだけでは改善の効果があまり出ない場合も、実際の会話を聞いてもらうことによって、納得して改善に取り組んでもらいやすくなるのです。「自分の話し方には癖があるかも」と本人が自覚することで、改善スピードは飛躍的に早められるでしょう。
オペレーター対応の品質管理
オペレーター対応の品質管理では、応対マナーや案内の正確性など、複数の観点からチェックを行う必要があります。このとき、通話録音データがあれば、一人一人の応対レベルをより具体的に確認することができます。改善した方がよい部分を明確に見つけて、個別の業務スキルを向上させることが可能になるのです。また、対応状況を詳細にチェックすることは、正しい評価を下すことにもつながるでしょう。しっかりと評価をしてもらえていると実感することは、社員のやる気の向上にも関わります。
コンプライアンス管理
通話を記録されていると自覚することは、社内のコンプライアンスを向上させることにもつながるでしょう。不用意な発言をしないように気を付けたり、顧客に対してよりよい対応を心がけたりするオペレーターの増加が期待できます。一人一人がそのような自覚を持ちながら日々の業務にあたることは大切ですが、会話の内容を後から確認する手段がない場合、ついつい気が緩んでしまうこともあるかもしれません。録音には、そういった気の緩みを抑制するメリットがあるのです。
通話録音システムを選ぶ際のポイント
ここからは、通話録音システムを選ぶ際のポイントを「コンタクトセンターに必要な機能」「外部システムとの連携」「コスト面」の3つに分けて解説していきます。通話録音システムにはさまざまな種類があります。自社に合わないものを選んでしまうと、使いにくかったり、導入のメリットが得られなかったりする場合もあるでしょう。そのような事態を防ぐためにも、選ぶポイントを押さえて、自社にとって使いやすいシステムを選択してください。
コンタクトセンターに必要な機能
一口に通話録音システムといっても、付帯している機能はさまざまあるため、必要な機能がついているものを選ばなくてはいけません。たとえば、オペレーターの教育に活用したいなら、通話データがテキスト化できる機能がついていたり、会話内容をリアルタイムで確認できる通話モニタリング機能がついていたりするシステムを選ぶのがよいでしょう。ほかに、通話開始後に追いかけ再生できる機能や、クレーマー対策に特化している機能がついているシステムもあります。システムに求める機能を明確に洗い出し、過不足のないシステムを選択しましょう。
外部システムとの連携
顧客管理システムや音声認識システムなどの外部システムと連携できるかどうかも、選ぶ際の重要なポイントになります。よくあるのが、顧客管理システムと連携するケースです。顧客についての情報を確認しながら会話を進められるので、よりスムーズに会話を進行できるでしょう。ほかにも、たとえば音声データをテキスト化する際に役立つ音声認識システムと連携すれば、テキスト化した音声データを社員教育などに活用できるでしょう。
コスト面
通話録音システムは、クラウド型とオンプレミス型の2種類に分けられます。クラウド型はその名のとおりクラウド上で管理ができるため、インターネット環境さえあれば簡単に導入が可能です。自社にサーバーを置く必要がないため、初期費用が少なく済むというメリットがあります。一方のオンプレミス型は、導入のために工事が必要になったり、ソフトウェアを購入する必要があったりします。初期費用の面では、クラウド型に比べて高くなってしまうでしょう。なるべく初期費用を抑えたいなら、クラウド型を選ぶのがおすすめです。
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通話録音をする際の注意点
通話録音システムを導入する場合、顧客に無断で通話音声を録音することは避けましょう。録音する際は、あらかじめ顧客にその旨を知らせる必要があります。通話を開始する前に、会話の録音を実施している旨をアナウンスで流すのが一般的です。そのまま電話を続けた場合は、顧客も録音に同意したとみなします。なお、録音していることを伝える際は、「サービス向上のため」などの理由を付け加えたアナウンスにすると、顧客の警戒心を和らげられるでしょう。
まとめ
コンタクトセンターでの通話録音には、オペレーターの心理的負担を軽くする、悪質なクレームを防止するなど、さまざまな効果が期待できます。導入する場合は通話録音システムを選ぶ際のポイントを参考にしながら、自社に合うものを検討してください。
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