コンタクトセンターにおいて後処理時間を減らすことは、非常に重要なポイントです。そのための方法を探している企業担当者もいるでしょう。 本記事では、そのような人に向けて、コンタクトセンターの後処理の意味や後処理時間を減らす重要性、そのポイントなどについて解説していきます。
コンタクトセンターの後処理時間の意味
コンタクトセンターにおける「後処理時間」とは、顧客との電話を切ってから行う、事務作業処理時間のことです。 具体的な業務内容としては、応対記録を入力したり、顧客から聞いた意見をまとめたりするなどの作業が挙げられます。また、商品やサービスの注文があればそれを入力したり、要望をまとめたりする作業も伴うでしょう。
電話と同時にすべてを入力していくのは難しいため、電話を切った後にこのような作業を進めます。話しながら進めたり、後でまとめて入力しようとしたりすると、顧客との会話がおざなりになってしまう恐れや、細かな点を忘れてしまうなどの問題が発生する可能性があるので注意が必要です。
そのため、基本的には、1件対応した後、すぐに作業時間を設ける場合が多いでしょう。なお、このような後処理にかかる時間の平均値は「平均後処理時間」といわれますが、英訳の「After Call Work」を略して「ACW」とも呼ばれることもあります。
後処理時間に関係する指標「平均通話時間」「平均処理時間」
「平均通話時間」は「Average Talk Time」を略して「ATT」とも表記されます。
その名の通り、オペレーターが電話をかけてきた顧客と会話をする時間の平均を指す用語です。コンタクトセンターの中には、ATTの短縮に力を入れているところもあります。
たとえば、1件あたり20分かけて顧客対応をしていた場合は、1時間で3件しか対応できない計算になります。
しかし、1件の対応時間を15分にできれば1時間で4件の対応が可能になり、さらに、1件あたり10分にすれば6件の対応ができるのです。
短縮できるかどうかは、問い合わせ内容や顧客の会話ペースなど、相手の影響を大きく受けてしまうので、受け手だけの力量で改善されるものではありません。
通話時間を短縮させたいがために、詳しく話を聞くことなく会話を終わらせてしまったり、早口で話したりしてしまうなどといった恐れもあります。そのため、ATTを短くしたいと思っても早く切りたそうな雰囲気を顧客に感じさせてしまうやり取りは避けましょう。
一方、「平均処理時間」は「Average Handling Time」を略して「AHT」と表記されます。
AHTは通話・電話の保留・通話後の後処理にかかる時間をすべて合計した数値の平均を表わすものです。平均通話時間(ATT)と平均後処理時間(ACW)を足したものが平均処理時間(AHT)になります。
そのため、平均処理時間を減らしたいのであれば、平均通話時間もしくは平均後処理時間のどちらか、あるいは両方にかかる時間を減らす必要があります。
平均処理時間を減らすためには
ATTは先述のような理由で意図的に短縮することが難しいため、ACWを短縮させることを優先するほうがAHTの数値を小さくできるでしょう。
後処理は受け手の技量や努力によって短縮可能な範囲といえます。後処理時間を短縮するポイントはいくつかあるので、後ほど紹介していきます。
平均通話時間を減らしたい場合
ATTを短縮する場合は、会話内容を録音し、その中身を分析するコールフロー分析を実施してみましょう。特に有効なのが、顧客との会話を文字に起こす「テープ起こし」を活用することです。会話を文字にして見直すことで、音声だけでは気付きにくい改善点が見つかる可能性が高くなります。
たとえば、難しい専門用語を用いるなど端的に分かりやすい説明ができていないことが原因で顧客に何度も同じ説明していたり、しっかりヒアリングができないことで2度3度と聞き直していたりといった問題点を見つけるのにも役立つでしょう。
このような分析をする場合は、電話をしている本人だけでは改善点に気付きにくい可能性が高いです。会話を対応ステップ(ヒアリング時、回答・提案時など)ごとに分けたうえで、複数人のグループを組んで検証し、気になったところを本人に伝えるといいでしょう。
また、研修時などには、シーン別の適切なシナリオを用意して、ロールプレイング研修を行うなどといった方法も有効です。
コンタクトセンターにおいて後処理時間を減らす重要性
後処理時間は生産性や顧客満足度に大きく関係するため、コールセンターを運営していくために重要視するべきポイントです。後処理時間の増加を防ぐため、多くの企業が工夫を凝らしています。
コンタクトセンターにおける後処理時間を減らすことはAHTの短縮につながります。AHTを導く計算式の特性上、ATTの短縮のメリットと同様になりますが、AHTの短縮は営業時間の中でより多くの顧客対応が可能になるということを示しています。
スタッフ1人あたりの電話対応数が増え、人員の増員をしなくてもそれまで以上の業務を遂行できるようになります。そのため、コストをかけて人手を増やさなくても生産性を上げられるでしょう。
また、対応できる数が増えることで、電話がつながりにくいというイメージの解消や、クレームを減らす効果も期待できます。コンタクトセンターにおける顧客満足度は、電話のつながりやすさも大きく関係するといわれています。
企業の多くが応答率目標を90%に定めているのも、この数値を維持できれば電話対応数が増え、顧客に不満を感じさせずに応対できると判断されるためです。90%までとはいかなくても、管理体制や十分な従業員数を確保できているところであれば、80%以上維持することは難しくありません。このくらいの応答率であれば、顧客もつながりにくさを感じることなく話ができるので、満足度は高まる傾向があります。
一方、応答率が下がってしまうと、電話をかけてもつながらない状態が多くなります。聞きたいことがあるのにいつ電話してもつながらないため、顧客満足度も低下するでしょう。そうならないためにも、後処理時間を減らすことで応答率を上げ、顧客満足度の向上を目指すことが大切です。
しかし、AHTを短くしようとするあまり、顧客に不快感を与えたり、従業員がミスを起こしやすくなったりする可能性も否めません。そのため、時間短縮だけを目標にしない、適切な管理をしていくことが重要です。
コンタクトセンターにおける後処理時間を減らすポイント
ここからは、後処理時間を減らすための具体的なポイントを3つ紹介していきます。できるところから改善を行い、後処理時間を短縮することで、生産性と顧客満足度を高めていきましょう。
オペレーターの能力を改善する
コンタクトセンターでの後処理時間が多くかかってしまう理由の1つとして、オペレーターの能力が関係しています。人によっては、顧客情報や要望などを入力するために必要なキーボードの入力スピードや、作業自体にかかるスピードが遅い場合もあるでしょう。このような事務処理のスピードは個人差が出やすい部分です。
無理に早くさせることは難しいかもしれませんが、できるだけ改善できるように、業務効率化が図れる部分はないのかを検討したり、タイピングスピードを上げる練習をしてもらったりするなどのスキルアップを促すことも効果があるでしょう。企業としては、必要に応じてスキルアップ研修や勉強会を開催したり、本人にアドバイスをしたりしていくことが大切です。
後処理に必要以上の時間をかけてしまうと、1時間に受けられる電話数が減ってしまいます。指導者的立場の人がスタッフ全員をモニタリングしながら適宜指示をするのもよいでしょう。スタッフの能力を揃えることは難しくても、改善することは可能です。問題がある人物を見つけて、適宜指導していきましょう。
しかし、後処理時間を減らすことだけを目標に、処理スピードを速めるように指導してしまうと、オペレーターの心理的負担が大きくなってしまう可能性もあるので、行き過ぎた指導をしないように気を付けることがポイントです。
処理の方法や内容を見直す
個人の処理能力には大きな問題がないにもかかわらず、全体の後処理時間が改善しない場合は、そもそもの処理フローが複雑すぎている可能性も考えられます。入力事項が必要以上に多く、煩雑になっている場合もあるので、入力すべき情報を見直すなどの改善を行っていきましょう。
また、後処理における明確なルールが定められていない場合、どの程度の情報を記録に残すかが個人に任されてしまいます。そのような状況では、詳細まで記録を付ける人や必要最小限だけを残す人など、個人差が出てその作業にかかる時間にもバラつきが出ます。
このような問題を防ぐためには、あらかじめルールを明確にして、個人差が出ないように工夫し、必要のない後処理に無駄な時間をかけないように徹底することが大切です。
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システムの導入を検討する
また、人材育成だけで改善できない場合は、後処理を効率化するシステムの導入を検討するのもおすすめです。システムの中には、コンピューターと電話の機能を統合するものもあります。
顧客のデータベースと連動し、電話している顧客の個人情報や過去の応答履歴などを表示してくれる機能が備わっている場合もあります。ほかにも、モニタリング機能や録音機能が備わっているものもあるので、それらを活用することでオペレーターの業務改善に役立てることも可能です。
まとめ
コンタクトセンターの後処理時間を短縮させることで、生産性や顧客満足度を高められる効果が期待できます。後処理時間はコールセンターが主体となって改善可能なので、本記事で紹介したポイントを踏まえながら実行してみてください。
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