生成AIによる音声合成とは|
ビジネス利用のメリットと注意点

 2024.05.15  2024.11.29

生成AIを用いた音声合成技術の進歩で人間の声を自然に再現できるようになり、コンタクトセンター業務への活用がますます期待されています。本記事では、生成AIによる音声合成の概要を示し、合成音声の作り方を紹介します。また、コンタクトセンター業務における活用シーンやツール選択の注意点などについても解説します。

生成AIによる音声合成とは| ビジネス利用のメリットと注意点

生成AIがもたらす革新と可能性

音声生成AIとは?

生成AIとは、深層学習を用いて、画像や文章など多様なコンテンツを生み出せるようにした人工知能(AI)の総称です。なかでも音声生成AIは、大量の音声データをコンピュータに与えて、その特徴を学ばせたAIで、コンピュータが声の特徴を解析した結果に基づいて人工的に新たな声をつくる、音声合成が可能です。
特定の人間の声を学習させた音声生成AIがあれば、機械特有の不自然さを感じさせることなく、その人によく似た声と話し方で文章を読み上げるコンテンツを制作できます。

音声認識との違い

音声生成AIの関連技術としては、コンピュータが人間の声の特徴をつかんで真似をする音声合成以外にも、音声読み上げや音声認識が知られています。
音声合成は、人間の声を自動的かつ機械的に作る技術です。さらに、音声読み上げは音声合成技術を用い、テキストデータを音声データに変換して出力する技術です。
いっぽう音声認識は、音声データをテキストデータに変換する技術です。つまり、音声合成・音声読み上げと音声認識とでは、データ変換の方向性が逆になるという違いがあります。

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合成音声の作り方

合成音声を作る主な方式には、単語や文節ごとに録音しておいた音声を文章になるようにつないで再生する録音編集方式と、ルール通りに音声波形断片データを編集して合成音を作り出す規則合成方式の2種類があります。この規則合成方式の代表格として知られ、現在広く使われているのが、コーパスベース合成方式です。

コーパスベース合成方式では、録音した人間の音声データを大量に収集し、これをテキストとセットにして作成した、音声コーパスと呼ばれる音声データベースが必要です。そして、この音声コーパスの音声波形を利用して、音声を合成します。
コーパスベース合成方式は、音声波形の作り方の違いによって、波形接続型音声合成方式と統計モデル型音声合成方式の2種類に分かれます。
波形接続型音声合成方式は、細分化した音声データを、自然言語処理や音声信号処理といった技術を駆使してつなぎ合わせる方法です。まず、音声コーパスの音声データを音声素片と呼ばれる最小単位の音声波形になるまで分割し、音声合成用のパーツを作成します。次に、音声合成の対象となるテキストを解析して音素に分解し、自然な読み上げができるようにアクセントや構文といった情報を取得します。これらの情報をもとに選択した、最適な音声波形のパーツをつなぎ合わせることで、品質の良い音声の合成が可能です。

これに対し、統計モデル型音声合成方式は、テキストと音声の関係を表す統計モデルをもとに、音声波形を予測して合成する方法です。まず、音声コーパスの音声データから得られる音響特徴量とテキストから得られる言語特徴量を用いて学習を行い、統計モデルを作ります。次に、音声合成の対象となるテキストを解析して言語特徴量を求め、統計モデルで音響特徴量を予測した結果から、音声波形を合成します。

音声生成AIの業務上の活用シーン

業務で音声生成AIを活用できるシーンとして、代表的なものを以下に2つ紹介します。

音声生成AIで新規のコンテンツを生み出す

音声生成AIは、音声入りの新たなコンテンツを作成したい場合に、多様な活用が可能です。たとえば、企業紹介の動画に魅力的で好感度の高いナレーションをつけられれば、企業への印象やイメージがアップする可能性があります。また、社内研修用の教材に音声読み上げ機能をつければ、目と耳の両方から情報が入れられ、学習効果がさらに高まることが期待できます。
さらに、ゲームやアニメなどの制作を行っている企業の場合には、声優の代わりに音声生成AIを利用してキャラクターにセリフを言わせることで、人件費を削減できます。また、セリフの音声は多言語にも対応できるので、作品を世界に広めたい場合にも有効です。こういった新たなコンテンツを生み出すことで、企業はビジネスチャンスをさらに広げられます。

ボイスボットでサービスの質を向上させる

AIを搭載した自動音声応答システムである「ボイスボット」をコンタクトセンターに導入すれば、サービスの質を向上させられます。ボイスボットが最初に電話を受け、人間でなければ対応できない電話だけをオペレーターにつなぐことで、電話をかけた顧客の待ち時間もオペレーターの負担も軽減させられます。また、自動音声であれば24時間対応が可能なので、顧客はいつでも時間を気にせず、必要な時に音声による対応を受けられます。それにより、顧客満足度の向上が期待できます。

さらに、システム管理部門など社員からの質問を頻繁に受ける部署にボイスボットを設置するのも有効です。ボイスボットに社内でよくきかれる質問とその回答を学習させ、答えられるようにすれば、社内での情報共有を円滑にするといった効果が見込めます。
最先端の音声合成技術が使われたボイスボットは、機械であることを感じさせない自然な話し方ができるので、極力、顧客に機械的な印象を与えたくない場合にも役立ちます。

ビジネスで利用するメリット

音声生成AIをビジネスで利用した場合には、主に以下の2つのメリットが期待できます。

業務効率化につながる

音声生成AIによる音声合成を活用することで、収録に必要な作業時間とコストを減らせるので、業務効率化につなげることが可能です。
人間が音声を吹き込んでコンテンツを作成する場合には、音声の収録に使用するスタジオ代や機材代に加え、収録のために招集したスタッフの人件費がかかります。また、収録しなければならない音声のパターン数が増えるほど収録時間も長くなり、かかった時間に応じて費用もかさみます。
しかし、音声生成AIを利用すれば、収録に絡む一切の費用は必要ありません。コンピュータとソフトウェアとテキストデータがあれば、収録なしに効率よく音声生成作業を進められます。

多言語対応できる

音声生成AIを利用すれば、日本語で入力したテキストを音声に変換して出力できますが、その際には日本語だけでなく、英語、中国語、フランス語などさまざまな言語が選べます。逆に、外国語で入力されたテキストを日本語の音声に変換して出力することも可能です。
そのため、たとえば外国語で書かれた資料を日本語に翻訳して音声読み上げできるようにすれば、瞬時に内容を把握できるようになり、外国人顧客とのコミュニケーションにも役立ちます。

音声生成AIのツールを選ぶ際の注意点

音声生成AIが搭載されたツールを選ぶ際には、必要な運用コストとツールで出せる音声の品質を確認して、自社のニーズに合ったものを選ばなければなりません。ここでは、企業でよくあるニーズと選ぶ際の注意点として、2つの例を紹介します。

例1)商用利用可能なのか確認したうえで導入するべき

ビジネスで利用する場合には、必ず商用利用可能か否かをチェックして、商用利用可能なツールを選んで導入しましょう。商用利用が認められていないツールを商用利用した場合には、権利の問題で訴えられ、大金を支払うことになりかねません。

例2)用いたい言語に対応可能なのか確認したうえで導入するべき

業務で使用する予定の言語に対応しているか否かも、チェックすべき項目です。言語の種類が限られているツールが多いため、外国語の音声を使用したい場合には必ず確認しましょう。

まとめ

音声生成AIは、音声入り新規コンテンツの製作やボイスボットによるサービスの質向上に利用でき、企業の業務効率化に有効活用できます。特に、生成AIチャットボットをコンタクトセンターで活用すれば、より多くの顧客に即座に対応でき、オペレーターの負担を軽減できます。また、顧客がいつでもサポートを受けられたり、多言語機能で外国人顧客とのコミュニケーションにも役立つことで、顧客満足度の向上も期待できます。

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