生成AIサービスによって作成された画像やイラストは、個人で利用するだけでなくビジネスの現場でもさまざまな場面で活用が進められています。この記事では、画像生成AIの概要と簡単な使い方について解説した上で、ビジネスでの活用方法について紹介します。
生成AIによる画像・イラストの作成とは?
画像生成AIとは、作成したい画像のイメージを単語や文章などのテキスト形式で入力することで、AIが学習済みのデータを基に画像を生成する技術のことです。利用者の入力した内容によって、実写のようにリアルな画像やアニメ調のイラストなど、思い通りの画像を作り出すことが可能です。
従来は写真を撮影したり手作業で絵を描いたりする手間があったものが、画像生成AIを使えば(AIの性能や条件によっては)数十秒程度で作成できてしまうことから、画期的な技術として注目されています。一方でクリエイターにとっては、自分たちの作品が学習データに使われたり、仕事を奪われかねない脅威と捉えられていたりしていることから、今後の課題として著作権や倫理的な問題についても関心を持っておく必要があります。
生成AIについてはこちらの記事も参照してください。
商用利用は可能? リスクはある?
画像生成AIはすでにさまざまな企業・団体がサービスやツールをリリースしており、それぞれ規約が設けられています。生成した画像を商用利用できるかどうかは規約に定められています。商用利用を考えている際は利用規約をよく確認しましょう。
ただし、規約によって商用利用が許可されている場合でも、生成された画像によっては著作権侵害のリスクがある点に注意が必要です。学習データによっては、ブランドのロゴがそのまま生成されてしまったり、著名な人物の顔そっくりに生成されてしまったりする可能性もあります。そのような画像を安易に商用利用した場合、著作権や肖像権といった法的責任が発生する恐れがあります。
国内においては文化庁を中心として生成AIと著作権に関する検討を行っている段階であり、今後の展開によっては新たに画像生成AIに関する法律が整備される可能性があるため、今後も動向に注目する必要があります。
生成AIによる画像・イラストが注目される背景
近年、個人・ビジネスを問わず生成AIによって作成された画像・イラストが公開・使用され、話題を呼んでいます。画像生成AIが注目されるようになった背景としては、生成AI自体の市場拡大やサービス・ツールの普及が挙げられます。
AI市場の拡大
生成AIによる画像やイラストの作成が注目されるようになった背景には、AI市場全体の急速な拡大が挙げられます。総務省が公表した「情報通信白書(令和5年版)」によると、世界のAI市場規模は2022年に売上高で約18兆7,000億円(1,420億ドル)にまで成長する見込みで、これは前年比で78.4%もの増加です。その後も加速度的な成長が予測されています。
国内においても、AIシステムの市場規模が2022年は約3,900億円と、前年より35.5%増加しています。国内においても今後成長を続けることが予測されており、2027年には1兆円以上にまで拡大する見込みです。
このように、AI市場が拡大の一途をたどっていることで、研究者や投資家を始め社会全体でAIへの関心が高まっています。
一般向けサービスの普及
AI市場の拡大によって、生成AIに関する研究も一気に進展しました。テキストや画像などを大量に読み込んで学習する生成AIが開発されることで、さまざまな生成AIサービス・ツールが急速に普及しました。画像生成の分野では、2022年に深層学習(ディープラーニング)の技術を基にしたStable Diffusion(ステイブル・ディフュージョン)がリリースされています。
質の高いAI生成画像が生成されるStable Diffusionは、無料で利用できたことから広く注目を集め、SNSでもたちまち話題になりました。以降も、有料無料問わずAI画像生成サービスやツールが多数登場しています。当初、画像生成AIは希望通りのイメージを画像にする手段として、主に個人の楽しみとして利用されていましたが、実用的な技術という認識が広まるにつれ、ビジネスにおいても利用が進められつつあります。
AIで画像・イラストを自動生成する方法
画像・イラストを生成するには、まず画像生成AIサービスを提供しているページにアクセスするか、ツールをダウンロードして起動します。初めて挑戦する場合は、まず日本語の翻訳が提供されているサービスから始めましょう。
メニューから画像の生成を選択すると、テキストやキーワードを入力する画面が出てきます。ここに自身がイメージする画像をできるだけ詳しく説明したテキストを記入してください。例えば「ビル 夕焼け リアル風」といったように、画像の内容をできるだけ詳しく記述しましょう。このような指示文のことをプロンプトと呼びます。生成を実行すると、数十秒から数分程度で画像が作成されます。
サービスやツールによって、作成される画像のスタイルや雰囲気、クオリティは変わってきます。また、サービスによってはあらかじめスタイルを選択して画像を作成することも可能です。
希望通りの画像が作成できたら、画像をダウンロードして保存してください。なお、サービスによっては無料の範囲で1日に作成できる枚数が制限されている場合もあります。
ビジネスで活用される生成AIによる画像・イラストの作成
画像生成AIで作成された画像やイラストは、ビジネスにおいても社内向け・社外向けを問わずさまざまな活用方法が考えられます。
商品の開発やデザイン
商品開発やデザインの現場においては、主にコンセプト画像の作成に役立てられます。
画像生成AIは、入力されたキーワードを基に、ランダムで複数の画像を生成するのが一般的です。そのため、時に思いがけない画像が生成される場合があります。その中には人間の先入観に囚われない、シュールな作風や斬新なタッチの写真・イラストもあります。これらの画像やイラストからインスピレーションを得て、斬新なアイデアやコンセプトを生み出すことが可能です。サービスによっては無料で作成できるため、アイデア出しの作業においてもノーコストで活用できます。
広告等のコンテンツ制作
バナー画像や宣伝写真など、広告におけるコンテンツ制作にも画像生成AIが活用できます。商品のターゲットが明確に決まっていて、作成したい画像のイメージが十分に固まっている場合、それを詳細にテキストで指示することで、ターゲットにマッチした効果的な画像を作成することが可能です。
外部のデザイナーに画像作成を依頼した場合、費用だけでなく事前の打ち合わせや確認作業や修正指示といった時間的なコストも発生します。画像生成AIを利用した場合は、これらのコストがカットできるだけでなく修正も繰り返し可能なため、大幅にコストと作業時間を削減できます。
また、これまでフリー素材を利用していた場合も、AI生成によるオリジナルの画像に切り替えられるため、消費者に独自性を打ち出すことが可能です。
マニュアルなどの社内資料
セミナー資料やマニュアルなど、社内向けの資料に画像を挿入することで、伝えたい事項を的確に伝えられるようになります。特に作業手順などのマニュアル類は、視覚的に伝達できるようになるため、研修や引き継ぎの能率化が図れるなど、社内の業務効率化に役立てられます。
社内マニュアルは定期的なアップデートが必要な場合もありますが、画像生成AIがあれば画像もすぐに作り直すことが可能です。それによってマニュアル担当者の作業時間も削減でき、コア業務に集中できるようになります。
まとめ
生成AIはビジネスにおいて、画像生成だけでなく文章作成やチャットボットの機能強化といった多岐にわたる分野での活用が進んでいます。これらの技術を効率的に活用することで、業務効率化を実現し、結果的に企業の利益拡大に貢献することが期待されています。特にコンタクトセンターでは、生成AIを搭載したチャットボットを導入することにより、オペレーターの業務負担軽減や対応品質向上を実現できます。今後も、生成AIの進化はビジネスのあらゆる側面に革新をもたらすと考えられ、これにより新たなビジネスモデルの創出や、より高度なサービス提供が可能になるでしょう。
- TOPIC:
- 生成AI
- 関連キーワード:
- 生成AI
- 運用ノウハウ・ヒント
- ナレッジ