「ヘルプデスク」と「サービスデスク」は、似た言葉ですが厳密には異なります。業務の効率化を目指す管理職の方であれば、その違いを理解しておくことが大切です。本記事では、この2つの言葉の違いや、サービスデスク構築の際に知っておくべき4つの種類について解説します。
ヘルプデスクとサービスデスクの違い
「ヘルプデスク」と「サービスデスク」は、いずれも「問い合わせ対応をする」という点で共通しています。そのため一般的に、両者は同じようなイメージを持たれることが多く、区別されずに扱われることも珍しくありません。
しかし、ヘルプデスクやサービスデスクを設ける企業であるならば、定義や違いを正確に理解し、使い分けができなければなりません。
以下、それぞれの業務内容や求められる役割について詳しく説明していきます。
ヘルプデスクとは
ヘルプデスクは、顧客の問い合わせに応じて使用方法を教えたり、不具合のトラブルシューティングを行ったりするなど、主に受動的な役割を担います。サービスデスクよりも前、およそ1980年代後半から設けられるようになりました。
サポートする範囲が限られていて、範囲外の内容については他部門に回すことも多く、受け付けないこともあります。そのため、「利用者が問い合わせ内容を改めて説明しなければならない」「問題が解決するまで時間がかかる」といった問題が指摘されてきました。
なお、ヘルプデスクには社外向けと社内向けのものがあります。
社外向けでは、自社製品を利用するお客様からの質問に答えたり、クレーム対応したりするのが主な役割です。具体的なサービス内容は企業によって異なり、企業が公開しているサービス仕様書などに記載されています。
一方社内向けは、自社の従業員からの問い合わせに対応するのが仕事です。システム部門に設置されることが多く、社内システムに関する技術的なことについて、例えば操作方法や障害への対応方法などについて回答します。
サービスデスクとは
サービスデスクは、ヘルプデスクよりも対応範囲が非常に広く、積極的かつ能動的にサービス提供を行います。ヘルプデスクと同じく利用者からの質問やトラブルに対応する以外に、新製品や新サービスの紹介や契約、ITサービスやFAQなどの情報発信、インシデント管理や構成管理などを一元的に扱います。よりIT領域に踏み込んだサービスが特徴です。
したがってヘルプデスクのように、「サポート範囲外である」として問い合わせを別部門へ回すことは基本的にありません。その分、サービスデスクで働くスタッフは、自社製品・サービスの契約やその取り扱い、技術的なことなど包括的に対応できなければならないため、高い専門性も求められます。
サービスデスクは、ITサービスマネージメントでのベストプラクティスをまとめた「ITIL」でも重要視されています。単に、目標達成に向けた活動(プロセス)の1つと捉えるのではなく、プロセスを実施するために用いる部門・部署(機能)であると捉えるのです。
ITILにおいては、単一窓口を設けてインシデントをコントロールすることが必要とされています。単一の窓口にすることですべての情報を集約させ、1つのインシデントから得られたノウハウを発信したり、別のインシデントに役立てたりできるからです。
質の高いサービスデスクを設けるのは簡単ではありませんが、ヘルプデスクの設置に比べてメリットも多くあります。情報を効果的に蓄積できる上、サービスレベルが高まって顧客満足度が向上しやすく、コスト削減も図れます。以下、さまざまなサービスデスクの種類に関わるメリットについて、デメリットやコストも併せて具体的に見ていきましょう。
サービスデスクの4つの種類とは?
今後一層需要が増していくサービスデスクには、大きく分けて以下の4種類があります。それぞれでメリット・デメリットが異なりますので、自社に合う形態で導入することが大切です。
中央サービスデスク
「中央サービスデスク」は、1つの拠点に機能を集約させることで、問い合わせの内容やインシデント情報を一括管理できます。スタッフを1箇所に集中させることで教育や管理が容易になり、業務効率化やコスト削減を図りやすいのがメリットです。ただし、遠方の利用者へ現地対応しなければならない場合、時間がかかってしまうのはデメリットでしょう。
ローカルサービスデスク
「ローカルサービスデスク」は、各営業所に設けるタイプです。中央サービスデスクのような高い管理性は持たず、ヘルプデスクに近いサービスにとどまるのが一般的です。
お客様との距離を縮め、各地にいる利用者に迅速な対応ができるのがメリットです。顧客企業と同じビル内に設置されるケースもあり、メールやチャット、電話での対応のみでは解決しきれない場合でも、すぐに訪問して直接トラブルに対応できます。
一方、多くの営業所にスタッフを常駐させなければならず、企業の負担は大きくなってしまいます。
バーチャルサービスデスク
「バーチャルサービスデスク」は、ITツールを活用してサービスデスクをバーチャル化したタイプです。インターネットを介して、分散する各サービスデスクを1箇所に集約させられ、利用者から見れば中央サービスデスクのように機能します。
ツールを導入して環境を整備することで実現可能なため、リモートワークやアウトソーシングとの相性もよく、柔軟に組み合わせて設置できるのがメリットです。近年では企業の特定の業務全体を専門業者へアウトソーシングするBPOがよく利用されており、サービスデスク機能の全体を委託することも検討できます。
ただ、スタッフ同士が離れているため、サービスの均一性・一貫性を確保しづらいのがデメリットです。コミュニケーションツールを活用するなどして情報共有を効果的に行う必要があります。また、ツール導入にかかるコストや手間も考慮に入れなければなりません。
フォロー・ザ・サン
「フォロー・ザ・サン」は世界各地に分散されたサービスデスクを連携させ、24時間体制で対応するタイプです。
国境を跨いだ企業活動をしている場合や、24時間対応が求められる場合に有利です。1か国のスタッフだけで24時間対応を実現しようとすると、深夜や休日の労働を求めてしまうことになるでしょう。そこで、複数国のスタッフが各国の顧客に対応する環境をつくることで、無理のないシフトで稼働させられるようになります。
ただし、国を跨ぐゆえに情報共有やツール導入がより難しくなるという課題もあります。
まとめ
サービスデスクは、受動的かつ補助的な業務にとどまっていたヘルプデスクを、高度かつ戦略的に発展させたものです。サービスデスクは、情報の発信といった能動的な業務も幅広く担い、企業活動全体を支えていきます。
サービスデスクには主に4つの種類があります。リモートワークにも対応しやすいバーチャルサービスデスク、24時間対応がしやすいフォロー・ザ・サンなどから、自社に適したタイプを選びましょう。
また、自社製品・サービスに対し包括的な対応をしていくことで、利用者の問い合わせ内容やインシデント情報などデータの集約にもつながります。データ活用が促進されるという側面もあることから、サービスデスクはDX時代にも即していると言えるでしょう。
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