ビッグデータの取得が容易になった現在、その膨大なデータを分析してビジネスに活かそうとする試みが、さまざまな業界で活発化しています。しかし、データ分析の具体的な内容や方法について、十分に知らない人もまだまだ多いでしょう。そこで本記事では、データ分析の概要やそれが必要とされる背景、そして具体的な分析手法についてわかりやすく解説します。
データ分析とは
データ分析とは、さまざまなデータの中から、特定の目標の達成に役立つヒントを探す作業です。とはいえ、今日の企業に蓄積されるデータ量は非常に膨大かつ多種多様であり、しかもリアルタイムに増えていきます。
「ビッグデータ」と呼ばれるこのような莫大なデータを人間が一つひとつ分析するのは、とても現実的ではありません。そのため、今日のデータ分析においては統計的手法やAIの機械学習など、ITの力を借りて行うのが一般的です。
ビジネスでデータ分析が必要とされる理由
データ分析を効果的に活用することで、ビジネスにはさまざまな好影響が生まれます。
たとえば、顧客の購買データを分析すれば、各顧客がどのような購買傾向や趣味嗜好を持っているのか理解が深まり、マーケティングや営業活動の効率化を図れます。あるいは、コールセンターに寄せられた顧客の問い合わせや苦情内容をデータ分析すれば、自社の商品・サービスのどこに課題があるのかを明確にし、今後の商品開発などに役立てることが可能です。顧客の隠れた需要などを発見できれば、新しいビジネスチャンスにもつなげられるでしょう。
データ分析をすることで、さまざまなコスト削減効果も見込めます。自社におけるお金やモノ、人の動きを分析すれば、どの時期に何にどれくらいのコストがかかっているのか可視化できます。これによって予算や在庫量、人員の最適化などを行い、無駄なコストの削減が期待できます。
このように、データ分析を活用することで、自社を取り巻くさまざまな状況の見通しをよくできます。これは、ビジネスにおけるさまざまな意思決定を、確かな根拠を持って的確に進めていくうえで非常に重要です。こうした数々の効果から、昨今ではデータ分析の精度や質を高め、データに基づいて経営上の意思決定を進めていく、「データドリブン経営」というビジネスモデルが注目を集めています。
データ分析の5つの手法
続いては、データ分析でよく用いられる代表的な手法をご紹介します。
クラスター分析
クラスター分析とは、各データを特定の条件に従ってグループ化する手法です。「クラスター」とは、このグループを意味します。自社の顧客を「男女で分ける」「年齢層で分ける」「取引金額で分ける」などが、クラスター分析のごく単純な事例です。「女性のうち、40代以上で取引金額の大きい層」というように、さらに細かくグループ化することも可能です。
このように、さまざまな特性に応じてデータをグループ分けすることで、そのグループ内に共通する特性やグループ間の差異を特定しやすくなります。自社のターゲット層を特定したり、コールセンターに届く問い合わせ全体の中から「よくある質問」を特定したりと、その用途はさまざまです。
回帰分析
回帰分析とは、複数の変数間の関係の構造や、その影響度の大きさを推測し、各変数の変化がほかの変数や全体の結果にどういう影響を及ぼすか、予測・分析するために使用される分析手法です。
たとえば、現在10人のオペレーターが働いているコールセンターがあったとして、それを9人に減らしたらどうなるでしょうか。それによって人件費を削減できるのは確かですが、1人あたりの仕事は増加し、顧客の待ち時間は延び、顧客満足度の悪化によって顧客離れが発生するかもしれません。ビジネスにおいては、このようにひとつの要素の変更が複雑な仕方で全体に波及しますが、回帰分析を行えば、その仕組みを明らかにできます。
因子分析
因子分析とは、大きなデータのまとまりに内在する共通の因子(要素)を特定する分析手法です。たとえば、これまでの取引データに基づいて、自社の顧客全体の中から優良顧客だけを抽出したとします。しかし、この段階では、その優良顧客たちの共通点は「購入金額が多い」というだけで、それ以上のことはわかっていません。
しかし因子分析を行えば、「男性」「30代以上」「この広告に反応している」など、優良顧客に共通する細かな要素を特定できます。このように因子分析を活用することで、大きなデータを細かく因数分解して理解を深めることが可能です。
コンジョイント分析
コンジョイント分析とは、特定の製品やサービスについて顧客が重視する要素を特定する統計的な分析手法です。これは、特に新しい商品・サービスの開発をする際に重要な役割を果たす分析です。
たとえば、テレビメーカーなら画質・音質・価格・録画機能など、テレビのどの要素が消費者にとって購入の判断に強く影響を与えるのか知りたいことでしょう。そこでコンジョイント分析では、要素の異なるさまざまな仮想のテレビを設定し、どのテレビが欲しいか消費者に調査を行います。この調査結果を統計分析することで、消費者が購入の判断においてどの要素を重視しているのかを定量的に把握し、顧客のニーズに沿った商品開発を進められます。
共起分析
共起分析とは、「テキストマイニング」という技術を活用した分析手法です。テキストマイニングとは、膨大なテキストデータの中からビジネスにとって有用な情報を掘り起こす技術を指します。通常、データ分析といえば、数量化できる定量データをもとに行われるものと思われがちですが、テキストマイニングを用いれば、「顧客の声」といった数量化しにくい定性データも分析可能です。
共起分析は、このテキストマイニングを活用して、ある単語が別の単語とどれくらい強く結びついているかを明らかにする分析手法です。たとえば、「商品A」という単語と「使いにくい」という単語が頻繁にセットで使われているとしたら、商品Aは使いやすさが課題になっていると推測できます。このように共起分析を使えば、カスタマーサポートなどに集まる顧客の声を有効活用できます。
分析データをビジネスへ活用するためのポイント
データ分析をビジネス活用するためには、どのような点が重要になるのでしょうか。
最初のポイントは、データ分析を行うにあたって、どのようなデータが必要になるのか、そして自社のデータ環境がどのような状況にあるかを把握することです。データ分析を行う際には、その手法や明らかにしたい事柄に応じたデータが必要です。また、データはただ存在すればよいというものではなく、適切な仕方で管理されていなければなりません。
たとえば、各データがさまざまなデータベースやファイルに散在し、どのデータがどこにあるのかわからない状況では、効果的なデータ分析はできません。したがって、データ分析を行う際には、データの充実と整備が重要になります。
次のポイントは、データ分析は具体的なアクションプランに落とし込んで、初めて意味があるということです。データ分析は、特定のビジネス課題を解決するための一手段に過ぎません。いくら顧客分析を行って顧客理解を深めても、それを具体的な顧客戦略に反映しないのでは無意味です。したがって、データ分析を行う際には、分析すること自体が目的化しないように注意し、分析結果を具体的なアクションに活かすことを心がけましょう。
まとめ
データ分析を活用することで、企業は自社の事業を取り巻くさまざまな要因に対する理解を深め、的確な意思決定に役立てられます。
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データ分析の活用を検討しているコンタクトセンターの方は、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか。
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