近年、クラウド型のコンタクトセンターが登場しました。コスト削減や働き方の多様化を背景に、従来のオンプレミス型から移行する企業も増えつつあります。では、クラウド型コンタクトセンターにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、クラウド型コンタクトセンターの基礎知識と、おすすめする理由について解説します。
コンタクトセンターシステムの概要
「コンタクトセンターシステム」とは、コンタクトセンター業務を行うために必要な機能を備えたシステムのことです。このシステムが普及する前は、オペレーターが電話を受けて、聞き取った内容をメモする形で対応していました。しかしIT技術の進化によって、業務をより効率的にする支援システムが誕生します。
コンタクトセンターに電話したとき、音声ガイダンスが流れて、いくつかの窓口を案内された経験はありませんか?こうした振り分けも、コンタクトセンターシステムによるものです。
コンタクトセンターシステムの主な機能
コンタクトセンターシステムは様々な機能で構成されていますが、その1つに「CTI(Computer Telephony Integration)」があります。
CTIは1990年代に登場したシステムで、電話機とコンピューターの機能を統合して運用する技術です。電話機に加え、マウスやキーボードを活用して業務を進められるため、着信の転送・録音・切断などをより効率的に行えるというメリットがあります。コンタクトセンターといわれてまず思い浮かべる「ヘッドセットを着用し、パソコンに向かって応対する」というイメージは、CTIシステムによって確立されたスタイルです。
近年ではこのCTIシステムに、CRM(顧客管理システム)やIP-PBX (IP電話交換システム)などを組み合わせて運用されています。
また最近では、チャットボットによる問い合わせ対応も普及しつつあります。顧客が知りたい内容を直接打ち込んだり、いくつかの選択肢から選んだりすることで自動応答するものです。チャットボットを介することで、オペレーターへの負荷を軽減できます。近年、労働人口の減少からオペレーターの確保も難しくなっている背景もあり、このような自動応答プログラムの導入が進んでいます。
顧客の要求に柔軟に対応することは、企業のイメージアップにも繋がります。スマートフォンなどの普及により、顧客と企業がコミュニケーションを取る機会や手段が増え、コンタクトセンターの需要はさらに高まっています。メール・チャットなど電話以外のチャネルも増えたため、コンタクトセンターシステムの機能もより多様化が進んでいるのです。
コンタクトセンターシステムの種類
コンタクトセンターには、受電中心の「インバウンド」と架電中心の「アウトバウンド」の2種類があります。そのためシステムも、それぞれに対応できるものに分けられます。
インバウンド型は、顧客からの問い合わせを“受信”する業務が中心です。主に商品やサービスに関する質問や問い合わせ、クレームなどに対応します。したがってインバウンド型のシステムには、自動音声を流して一次対応をする機能や、着信をオペレーターに振り分ける機能などが搭載されています。
一方のアウトバウンド型は、企業から顧客に“発信”する業務が中心となります。商品のキャンペーンやアンケートなどの営業活動、料金未払いなどの催促などが目的です。したがってアウトバウンド型のシステムには、自動で架電できる機能やワンクリックで発信できる機能などが搭載されています。
インバウンドとアウトバウンドではコンタクトセンターの運営目的が異なるため、それぞれの業務要件を満たすシステムが必要となります。
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コンタクトセンターシステムの導入形態
システムの導入形態には「オンプレミス型(オンプレ型)」と「クラウド型」の2種類があります。
オンプレ型は、自社で保有するサーバーにシステムを導入して運用する形態です。システムを一から自由に設計するため、より自社の業務に特化したコンタクトセンターを構築できます。
一方クラウド型は、クラウド上(ネットワーク上)のサーバーにあるシステムを、サービスプロバイダーから借りて運用する形態です。オンプレ型ではシステムが自社内に設置されているのに対し、クラウド型はネットワーク上に設置されているとイメージするとわかりやすいでしょう。
クラウド型コンタクトセンターが登場する前は、ほとんどの企業がオンプレ型のシステムを利用していました。しかし近年はクラウド型を採用する企業が増え、コンタクトセンターのクラウド化が進んでいます。現在はサービスプロバイダーも多様化し、オンプレ型を含めて様々なシステムがリリースされています。
クラウド型コンタクトセンターとは何?
ここでは、クラウド型コンタクトセンターについてより詳しく見ていきましょう。
先ほどご説明した通り、クラウド型はネットワーク上にあるシステムを利用する仕組みです。サービスプロバイダーが構築したシステムを使うため、自社でシステムを開発したり、サーバーを購入したりする必要はありません。また、インターネット環境さえあればどこでも利用できるという点も特徴です。
オンプレ型よりも手軽にコールセンターシステムを導入できるため、はじめは中小企業を中心にクラウド型の採用が進みました。近年では、大企業にも普及しつつあります。
クラウド型コンタクトセンターシステムの導入をオススメする5つの理由
クラウド型は、従来のオンプレ型には無いメリットがたくさんあります。ここでは、クラウド型の導入を推奨する5つの理由をご紹介します。
導入・運用メンテナンスコスト
クラウド型の最大のメリットは、初期費用がほとんどかからないという点です。オンプレ型のように専用機器の購入が不要なため、比較的低コストで済みます。また、システムの保守や更新は基本的にサービスプロバイダーが行います。ライセンス料さえ支払っていれば、メンテナンス費用はほとんどかかりません。
導入スピード
従来のオンプレ型では、自社内にシステムを構築する必要があります。システム構築には多くのプロセスを要するため、導入までに半年以上かかることも珍しくありません。クラウド型であれば、オンプレ型のように専用機器を設置する必要はありません。
システム導入までのプロセスが少ないため、導入スピードが圧倒的に早いのです。必要なときにすぐに運用できるという点は、クラウド型ならではのメリットといえます。
柔軟なコストの調節
クラウド型の多くは、システムの利用量に応じて支払いが発生する「従量課金制」です。使った分だけ費用を払うという使い方ができるため、繁忙期・閑散期がある場合でも柔軟にコストを調節できます。もちろん導入コストだけでなく、ランニングコストも軽減可能です。
拠点を選ばない
クラウド型は、インターネットに接続できる環境さえあればどこでも利用できます。オンプレ型のように、専用の拠点を確保する必要はありません。日本でも広がりつつあるリモートワークにも対応できるため、自宅でコールセンター業務を行うことも可能です。在宅型コールセンターの構築も簡単に実現できます。
最新技術を試すことができる
自社では構築が難しいテクノロジーを活用したシステムも、クラウド型であればトライしやすいでしょう。AIやチャットボットといった最新技術もいち早く試すことが可能です。
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クラウド型コンタクトセンターの課題
このようにメリットの多いクラウド型コンタクトセンターですが、一方で課題やデメリットもあります。導入に際しては、マイナス面についてもしっかりと把握しておきましょう。
カスタマイズが難しい
クラウド型は、既にシステムとして完成されたサービス(=既製品)を利用します。したがって、一からシステムを構築するオンプレ型とは異なり、自社の業務形態に応じて柔軟にカスタマイズするのは難しいという側面があります。特殊なシステムを構築したい場合は、十分に機能しない可能性もあるでしょう。
長期的な運用には不向き
クラウド型は導入コスト・ランニングコストともに低いということを先ほど説明しました。しかし、利用料は毎月かかるため、長く運用すると結果的に割高になってしまう可能性もあります。長期的な運用を見越しているのであれば、オンプレ型の方がコストを抑えられるケースもあります。
セキュリティ面の課題
コンタクトセンターでは顧客の個人情報を取り扱うことも多いでしょう。クラウド型の場合は、大切な顧客情報や通話記録などをネットワーク上のサーバーに置くことになるため、情報漏洩のリスクが高まります。こうしたセキュリティ面での不安から、クラウド化に踏み切れない企業も少なくありません。ただ、近年ではセキュリティ面が強化されたシステムも増えつつあります。
クラウド型コンタクトセンターを活用した方が良いケース
クラウド型コンタクトセンターシステムには、メリットとデメリットの両方があります。では、クラウド型の方が適しているのはどのようなケースでしょうか。
たとえば拠点拡大や新規支店の立ち上げに伴い、迅速にコンタクトセンターを設けたい場合は、クラウド型が適しているでしょう。契約後に自社に合った設定を済ませるだけで、早ければ数分で立ち上げることができます。
また、多くの支店を持つ企業にも適しています。業務を効率化するためには、データを一元管理することが重要です。クラウド化すればコンタクトセンターに寄せられた情報を自動的に集約できるため、急な問い合わせやトラブルにもスムーズに対応できるでしょう。
ほかにも、イベント開催中など期間限定でコンタクトセンターを設置したい場合も、クラウド型がおすすめです。必要なときだけ手軽に運営できるため、導入から撤去までが非常にスピーディーです。
オンプレ型・クラウド型のどちらが適しているかどうかは、企業の規模や状況によって変わります。コンタクトセンターをどのように運営していきたいのかをよく分析し、自社に合わせた選択をしましょう。
まとめ
手軽に利用できるクラウド型コンタクトセンターシステムの登場により、これまでコンタクトセンターを導入できなかった企業にも可能性が広まりました。メリットの多いクラウド型ですが、デメリットに関してもよく理解しておく必要があります。自社に適したシステムを見極め、クラウド型コンタクトセンターの導入も検討してみましょう。
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