ナレッジベースは、企業の競争力や業務効率の向上に繋がる経営概念です。この記事では、ナレッジベースの概要や導入するメリット、ツール選びの際に注意するべき点などについて解説します。ぜひナレッジベース導入時の参考にしてください。
ナレッジベースとは?
ナレッジベースとは、「社内で業務を行う過程で得られた知見のデータベース」を指します。「ナレッジ(knowledge)」とは日本語で「知識」という意味です。
会社の財産ともいえる知識を一元化してデータ管理すれば、従業員は企業が過去に取り組んだ業務のデータを閲覧することで効率よく仕事に取り組めます。
ナレッジベースが注目される理由
ナレッジベースは現代だからこそ重視されているといえます。その理由を2点、解説します。
人員の流出に対応できる
これまでの日本では終身雇用が主流でしたが、近年では働き方が多様化したことによる転職や独立、あるいはリストラなどによって流出する従業員が増えています。勤務年数の長い従業員に尋ねれば分かったことも、人的資源の流出に伴いナレッジは失われる一方です。従業員の経験や手法といった情報をデータベースで残すことで、業務に携わった従業員が在籍していなくても、必要な情報にアクセスできるようになるのです。
情報化時代ならではの仕組み
以前であれば仕事の方法を先輩に教わって学ぶ必要がありましたが、近年ではインターネットやパソコン、スマホといったツールを活用して必要な知識にたどり着きやすくなりました。スマホで手軽に検索するように、ナレッジが蓄積されたデータベースのシステムにアクセスすることで、人から直接教わることなくノウハウを習得することが可能です。
ナレッジマネジメントとは?
業務を通して得られた知見をどれだけ蓄積したとしても、活用できなければ意味がありません。ナレッジベースを適切に管理(マネジメント)することで従業員が使いやすいようシステム作りをする必要があります。その管理手法をナレッジマネジメントと呼びます。企業としての価値や競争力を高める上で重要な経営手法です。
ナレッジベースが生まれた背景
知識を後輩や次の世代へと受け継ぐには、「人から人へ」の属人的に行う必要がありました。しかし人材の流動化が高まっている近年では、引き継ぎが適切に行われることが難しくなっています。
そうした問題への解決法として用いられたのが、情報技術(IT)です。これまでの知見をデータベース化して活用できる体制を構築することで、滞りなく受け継いでいけるようになりました。
ナレッジベースはどのように活用されているのか
では、ナレッジベースの活用方法としてどのような具体例があるのでしょうか。ここでは、「自動音声装置」と「FAQ」の2点を紹介します。
自動音声装置
顧客が企業のカスタマーサービスに電話をかけた際につながる自動音声に、ナレッジベースが使われています。問い合わせ内容から目的ごとに振り分ける作業を自動化することで、オペレーターの負担を減らし効率的に顧客の声に応えられるようになります。
FAQ
「FAQ(Frequently Asked Questions)」は日本語で「頻繁に尋ねられる質問」を意味します。多くの企業ウェブサイトには、これまで顧客から多く寄せられた質問とその回答を掲載したFAQページが用意されています。
FAQは、顧客との過去のやり取りに関する蓄積であるため、ナレッジベースの一種です。これまで寄せられた質問を蓄積して頻度の高い質問項目を洗い出すことで、顧客への回答をスムーズに行えるようになります。
ナレッジベースのメリット
ナレッジベースを活用することで、多様なメリットが期待できます。
業務の効率化、コストカット
ナレッジベースの導入により、業務を効率的に行うことができ、コストカットにつながる点が挙げられます。過去の似たような業務からテンプレートを流用したり業務フローを参照したりすることによって、効率が上がります。また、疑問点が生じた際に従業員自身が即座にデータベースへアクセスして解決することで時間短縮に繋がり、人材育成にかかるコストカットも期待できます。
データベースによる顧客対応のレベルアップ
ナレッジベースは社内だけでなく、顧客に対しても良い影響を及ぼします。過去に顧客から挙げられたクレームや声を蓄積することで、今後の対応を改善できます。データベースに基づいて必要に応じた回答をあらかじめ用意しておくことでスムーズな対応が可能となり、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
業務の均質化、共通化
近年では中途採用者が多く、以前に勤務していた企業のノウハウをそのまま使ってしまうケースに対応する必要があります。ノウハウが人によってバラバラだと、業務に混乱を招いてしまいます。しかし、全従業員がナレッジベースを参照するように義務づけることで業務を共通化でき、仕事の均質化が図れるでしょう。
ナレッジベースツールを導入する際の注意点
ここからは、ナレッジベースを構築するためのツールについて解説します。まずは、ツールを導入するに際しての注意点を見ていきましょう。
使いやすい
まずは使いやすいかどうかが重要です。ITに対する理解度は従業員によって異なるため、誰でも直感的に使えるツールである必要があります。また、データは鮮度が命です。従業員が入力した情報がリアルタイムで更新されるかも確認しましょう。
検索しやすい
次に、検索しやすいツールを選びましょう。必要なタイミングで情報を得られなければ、ツールを導入する意味がありません。文書の全文検索はもちろん、日付や担当者などのカテゴリー検索などがあれば、必要なデータを見つけやすくなります。
機能や使えるデバイス
部署によって必要な機能が異なるため、各部署にヒアリングして適切な機能を備えているツールを選択する必要があります。他にも、営業ならスマホ、店舗ならタブレット、バックオフィスならPCなど、それぞれのデバイスに対応しているかの確認も行いましょう。
ナレッジベースを構築するツール
注意点を踏まえた上で、次にナレッジベースを構築するためのツールを紹介します。
データベース
集めた知識を蓄積し、検索によって参照できるようにする、ナレッジベースに欠かせないシステムです。通常の業務だけでなく、分析や情報共有といった応用性も持ち合わせています。
グループウェア
グループウェアとは、社内におけるコミュニケーションを円滑にするツールです。スケジュール、ファイル共有、メッセージといった機能を活用することで、社内のコミュニケーションや情報共有を容易に行えます。
ヘルプデスク
従業員や顧客からの問い合わせやクレームをデータベース化するためのITツールです。例えば業務中にPCトラブルが起こった場合、従業員が自らヘルプデスクにアクセスすることで、迅速に解決できるようになります。
データマイニングツール
データマイニングツールは、大量に蓄積されたデータを分析することで、マーケティングや営業戦略、経営判断などが得られるものです。膨大な情報からデータを抽出するため、分析の効率化が期待できます。
業種を問わず、これからの経営に欠かせないナレッジベース
情報化が進んだ現代において業務を効率的に遂行するためには、あらゆる業界においてナレッジベースの活用が欠かせません。蓄積した知識を参照・共有することで、従業員の業務を共通化し、コストを抑える効果が期待できます。
ナレッジベースツールを導入する際は、注意点や必要な機能を押さえ、適したものを選ぶようにしましょう。
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