ビジネスシーンでよく耳にする「KPI」ですが、カスタマーサポートの文脈においては、一体どのように捉えられているのでしょうか。本記事ではカスタマーサポートに焦点を当て、KPIの定義や重要性、設定方法や注意点などを解説します。併せて、カスタマーサポートにおいて重要な6つのKPIもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
そもそもKPIとは?
そもそも「KPI」とは「Key Performance Indicator」の略で、日本語は「重要業績評価指標」を意味します。これは「KGI(Key Goal Indicator/重要達成目標指標)」を達成するための中間指標のことで、設定した目標に対し、途中どれくらい達成されているかを測る定量的な基準となります。また、このKPIやKGIの達成に影響する要因や施策、プロセスのことを「KFS(Key Factor for Success/重要成功要因)」と呼びます。
KPIをはじめとするこれら指標は、ビジネスの目標や成果を可視化するうえで重要なものですが、カスタマーサポートの分野においても同じく重視されます。以下では、その理由について見ていきましょう。
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カスタマーサポートにおいて目標設定を行う重要性
目標設定の本質は、目に見える目標を掲げることで社員の認識の共通化を図り、チームが一丸となった取り組みを促すことにあります。カスタマーサポートにおいては、この認識の共通化により、チーム全員が目標達成に向けてこなすべき個々の役割を考え、意識的に行動できるようになります。その結果、サポートの品質が向上し、ひいては顧客満足度の向上にもつながるのです。
またKPIを設定しておけば、メンバー一人ひとりが目標の動機づけとして行動基準を振り返り、セルフコントロールできるようになります。そうして行った取り組みの途中経過を数値化することは、全体の進捗を把握する助けとなるだけでなく、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)からなるPDCAサイクルの促進にも寄与します。これにより、よりスムーズに最終目標の達成へと近づけるわけです。
目標を設定する際の注意点
このように、サポート品質の向上や進捗の把握などに役立つKPIですが、設定にあたってはいくつか注意点があります。やみくもに設定しても意味がないため、以下のポイントをきちんと押さえたうえで検討しましょう。
KGIに沿ったKPIを設定する
まず、中間指標であるKPIを定める前に、ゴールとなるKGIを定める必要があります。ここをできる限り具体的に詰めておくことで、それに沿ってKPIも設定しやすくなります。たとえば「顧客満足度の向上」をKGIに設定した場合、「満足度に関するアンケート」や「ネットプロモータースコア」などをKPIに設定するといった具合です。
なお、KPIは取り組みの効果がはっきりと確認できるものでなければなりません。外的要素が複雑に絡むようなKPIを設定すると、取り組み自体の効果を正確に測れず本末転倒となります。判断に困る要素が混じらないよう、取り組み自体の効果をダイレクトに反映するKPIを設定しましょう。
カスタマーサクセスと混同しない
KPIを作成する際は、能動的な姿勢で顧客や事業全体の成長と成功を促進する、「カスタマーサクセス」と混同しないよう注意が必要です。たとえば「ある期間における解約率」や「より高額な製品や類似製品を買うアップセル率・クロスセル率」などは、カスタマーサクセスのKPIに当たります。カスタマーサポートはカスタマーサクセスと違い、あくまで受動的なアプローチをとるため、その点をしっかりと区別しておきましょう。
カスタマーサポートで重要な6つのKPI
一口にKPIといってもさまざまな指標があるため、「何を重視したらよいかわからない」という方も多いことでしょう。以下では、カスタマーサポートにおいて特に重視される6つのKPIをご紹介します。
応答率
「応答率」とは、電話がかかってきた回数(着信件数)に対する、対応できた回数(受信件数)を割合で示したもので、「受信件数/着信件数」で表します。
お客様が電話をかけてきたとしても、オペレーターが対応できないと断念させたり、何度も電話をかけさせたりすることになります。そういう状況に陥ってしまうと、どうしても顧客満足度の低下は避けられません。応答率をKPIに設定することで、オペレーターの応対品質を把握でき、顧客満足度の向上や人材育成などに役立ちます。
応答時間
「応答時間」とは、お客様からのお問い合わせに対し、返信などの応答をするまでに要した時間のことです。お問い合わせ内容によっては、すぐには応答できないことも間々あるでしょう。たとえ最終的には解決できたとしても、応答に時間がかかりすぎると、お客様の不安を募らせてしまいかねません。
そのため、応答時間の中でも「問い合わせを受けてから一次応答するまでの応答時間」をKPIのひとつに設定し、これを短縮していくことが重要です。
保留時間・保留率
保留にして何かを調べる際、的確な回答が見当たらず保留時間が長くなることがあります。
お客様は「なぜこんなに時間がかかってるのか?」と不安になるものです。
通常の保留時間の目安は長くても30秒、どんなに複雑な質問内容でも最大は3分と言われています。
オペレーターが自己解決できるよう、ナレッジの整備などを行い、保留時間の短縮や、保留率(保留件数÷応対件数)を改善していく事で顧客満足度が向上します。
ただし、無理に保留時間を短縮せようとすると、オペレーターが困っても保留にすることをためらい、自分で解決しようと頑張りすぎることで、苦情やミスにつながる事があります。
すぐに返答することが難しい内容であれば迷わず折り返しを提案しましょう。
AHT
AHT(Average Handling Time)とは応答時間と保留時間、後処理時間の平均処理時間を指します。
AHTは主にセンター全体とオペレーターの生産性を見るKPIで、適切なスピードで業務が行えているかだけでなく、業務プロセスや個人パフォーマンスの課題を洗い出すこともできます。
通話時間を無理に短くしようとすると、お客様の満足度が低下してしまいます。
その為、AHTを改善するには、保留時間を短くするほか、後処理工程を見直しするなど、応答時間以外の時間を削減し生産性を向上させる事が重要です。
ただし、後処理工程を無理に短くしようとすると、事務処理のミスを誘発する為、適切なKPIを設定する必要があります。
ミス率
カスタマーサポートでの案内内容や付随業務に対しミスが生じてしまった割合です。
人間がする以上、必ずミスは起こります。
理想はミス率0%ですが、これは不可能であり、この目標をもとに対策を取ろうとすると挫折します。適切な目標としては「ミスの極小化」です。
そのためにミスが起こりうる原因を洗い出し、それぞれに実現可能な対策を取ります。
顧客満足度
「顧客満足度」は一見、数値化するのが難しいようにも思えますが、実のところ工夫次第で計測は可能です。
たとえばアンケートを実施したり、お問い合わせの定型文に返信いただいた回数や、お客様の「ありがとう」という感謝の言葉を数えたりすれば判断できます。また、顧客満足度と完全に一致するわけではありませんが、ネットプロモータースコア分析で他者への推奨度を計測し、顧客満足度の判断基準とする手法もあります。
顧客満足度を可視化しKPIに設定することで、カスタマーサポートチームのモチベーション維持につながり、より効率的に目標達成へと近づけるでしょう。
まとめ
カスタマーサポートにおける目標設定は、サポートの品質向上につながり、ひいては顧客満足度の向上にも寄与します。しかしながら、やみくもに設定したところで、期待するほどの効果が得られないのも事実です。目標を設定する際は、ご紹介した注意点を押さえつつ、自社のカスタマーサポート部門の課題に合わせて適切なKPIを設定しましょう。
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