災害やテロなどの緊急事態が発生した場合、対応を誤ると事業の継続が難しくなるおそれがあります。このような事態を避けるために、企業には適切なBCPの策定と対策が必要です。本記事では、BCP対策の概要や策定のポイント、BCP対策として有効な在宅コンタクトセンターについて解説します。
BCP(事業継続計画)対策とは?
BCPとは、Business Continuity Planの略で、日本語では事業継続計画と訳されます。企業活動で直面するおそれがある、地震や水害などの自然災害をはじめ、テロや感染症の拡大、大規模な情報漏えいといった緊急事態への対策です。
何の前触れもなく、企業が窮地に立たされるケースは多々考えられます。そのような事態に陥った際、適切な対応ができなければ、事業を継続できず組織が瓦解してしまうかもしれません。このような事態を回避すべく、企業には適切なBCPが求められます。
つまりBCPとは、緊急事態への万全な備えをし、被害を最小限にとどめ、スピーディーに事業を再開できる体制を整えるための取り組みです。
BCP策定の現状
すでに多くの企業がBCPを策定しています。令和4年に内閣府が公表した、「令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の調査結果を見てみましょう。
国が約6,000社を対象に実施した同調査によれば、BCPの策定状況について大企業では7割が策定済みと回答しています。策定中の企業も含めると、8割を超える企業がBCPを策定しているとの結果になりました。
また、中小企業も4割が策定済みと回答していることからも、規模を問わず多くの企業が緊急事態への備えをしっかり行っていることが分かります。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/chosa_210516.pdf
内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」
BCP対策の必要性
緊急時の対応策を策定しておかないと、いざというとき適切な行動がとれません。自然災害が発生しているなか、従業員が出勤しようとして命を失う、感染症拡大の影響を受け事業が大幅に縮小してしまう、といったことも起こり得ます。
あらかじめ対応を決めておけば、緊急時にも迅速かつ適切な行動をとることができ、二次被害の発生や倒産などのリスクを回避できます。また、適切な対策と取り組みを行うことで、社会的な信頼の高まりや企業価値の向上が期待できるのもメリットです。
東日本大震災など、多くの企業が甚大な被害を受けた災害により、BCPの必要性が広く認識されるようになりました。緊急時に自社の従業員や重要なリソースを保護し、倒産を防ぐためにも、十分な準備を整えておくことが重要です。
BCP対策の目的
BCP対策の主な目的は、従業員、ひいては組織を守ることです。企業にとって従業員は大切なリソースであり、失うのは大きな損失です。たとえ自社の拠点が無事であっても、多くの人材が命を失った、負傷したとなればとても事業の継続はできません。
ほかにも企業価値を高める目的もあります。適切にBCP対策を行っている企業であると認知されれば、安心して働ける企業と思ってもらえるため、採用力の強化にもつながります。倒産などのリスクが低いという理由で、取引先から信頼を得やすい点も魅力です。
経営戦略の見直しにもBCP対策が役立ちます。BCP策定の取り組みで復旧すべき事業の優先順位を把握でき、経営戦略を見直せます。
BCP対策策定のポイント
やみくもに策定しても、いざというとき役に立たないBCPとなってしまうおそれがあります。BCP策定の際には、大切なポイントを踏まえたうえで取り組みましょう。
重要な業務と考えられるリスクを洗い出す
まずは、もっとも重要な業務が何かを洗い出しましょう。遂行できなくなると、事業の継続すら危うくなるような業務を洗い出します。洗い出す際には、業務の代替が可能か、復旧にどの程度の時間やコストがかかるのか、といった点に注目しましょう。
重要な業務を洗い出したら、リスクも明らかにしましょう。リスクを具体的に把握しないと、適切な対策ができなくなり、緊急時に従業員が行動を起こせない可能性があります。たとえば、サイバー攻撃によるシステムダウン、火災、感染症の拡大、地震などが考慮されるリスクです。
優先順位を決めて対策を検討する
洗い出した事業や業務に、復旧の優先順位をつけましょう。優先順位をつけていないと、現場で一人ひとりが勝手な行動をとってしまい、対応が後手にまわった結果取り返しがつかない事態を招きかねません。
優先順位を決める際には、深刻度とリスクの発生頻度を重視します。優先的に対処しないと甚大な金銭的被害が生じる事業の復旧が優先です。
対策を検討するときは、具体的な内容を決めておきましょう。曖昧な内容では、緊急時に適切な行動がとれません。どのような状況に陥ったときその行動をとるべきなのか、誰の指示で動くのか、どういったときに代替手段をとるのかを決めます。
定期的に訓練を行い、PDCAを回す
素晴らしいBCPを策定できても、社内への浸透と従業員間での共有ができていないと意味がありません。BCPに策定した内容を、いざというときにきちんと実行できてこそ価値があります。
そもそも従業員が、「BCPなるものがあることを知らなかった」となると緊急時にスムーズな対応ができません。日ごろからBCPの浸透と共有を進める取り組みが企業には求められます。
緊急時に適切な行動をとれるよう、定期的な訓練も必要です。最初から完璧を目指すのは困難なため、PDCAサイクルを回しつつ改善を重ね、ブラッシュアップしていきましょう。
有効なBCP対策事例:在宅コンタクトセンター
直近で起きた緊急事態といえば、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。世界中で猛威を振るった新型コロナウイルスにより、多くの企業が影響を受けました。ここでは、感染拡大の対応策として普及が進んだ、在宅コンタクトセンターの概要や有効性を紹介します。
在宅コンタクトセンターとは
在宅コンタクトセンターとは、オペレーターが出社せず、自宅で電話やメール、チャットなどを用いて顧客対応を行うこと、もしくはその拠点を指します。PCやヘッドセット、インターネット回線など、業務に必要な環境さえ整えれば、オペレーターはオフィスと同じように顧客対応を行えます。
在宅コンタクトセンターであれば、オペレーターが出社しなくてよいため、災害時でも安心です。感染症対策としても有効であるため、コロナ禍のなか在宅コンタクトセンターを導入する企業が増えました。
また、人手不足の解消にも有効です。「出社せずに在宅で働きたい」と望む層は一定数いるため、このような層を取り込めます。慣れ親しんだ快適な環境で業務に取り組めるため、従業員満足度が高まり、離職率の低下が期待できるのも魅力です。
在宅コンタクトセンターの導入は、コスト削減にもつながります。オフィスに大掛かりな拠点を築く必要がなくなるためです。オフィスを縮小でき、オペレーターの通勤手当なども削減できるため、効果的なコストダウンが実現します。
BCP対策にコンタクトセンターが有効な理由
コンタクトセンターには、いつお客様から連絡が入るか分かりません。災害発生時においても、状況次第では普段より問い合わせが増加する可能性があります。そのため、非常時においてもコンタクトセンターは稼働していなくてはなりません。
コンタクトセンターをオフィスに設置している場合、緊急事態発生時にはオペレーターが出社できず、稼働が止まってしまいます。一方、在宅コンタクトセンターであれば、オペレーターは自宅で業務を遂行できるため、災害時でも問題なく普段通りの対応が可能です。
地震や水害、感染症など、あらゆる緊急事態に在宅コンタクトセンターは有効です。たとえ、オフィスのコンタクトセンターが稼働できなくなっても、被害を受けていないオペレーターの自宅を拠点に業務を遂行できます。
まとめ
緊急事態に適切な対応をとるには、BCP対策が必要です。従業員を守り、速やかに事業を復旧できるよう、ポイントを踏まえてBCPの策定と対策にのり出しましょう。
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