「人前で話す」ことは、一部のエンターテイナーの専売特許ではなく、一般的なビジネスパーソンであれば日々さまざまなシーンで求められる要素です。特にコンタクトセンターのオペレーターや営業職などは、日々の業務で必要不可欠であり「人前で話す」ことの連続です。
そうしたオペレーターやビジネスパーソンにとって意識したいのが「話し方」です。話し方は人の心を惹きつける上で欠かせない要素であり、極端に言えば話し方一つで相手の気持ちや事業成果が大きく変わります。そのため近年では社会人に向けた話し方教室や「声」に注目したセミナーなどが盛んに行われています。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により非接触型ビジネスが推奨されている現在、電話やWeb会議がコミュニケーションの中心となっており「話し方」はビジネスの命運を分ける要素にもなりつつあると言っても過言ではありません。
本稿では、そんなビジネスパーソンの話し方についてプロの視点から見てコツを伝授したいと思います。
「話し方」一つでビジネスパーソンは変わるのか?
2005年10月に刊行された「人は見た目が9割(竹内一郎著)」がベストセラーになったことを覚えていますか?本書で語られている見た目とはルックスだけを示すのではなく、人の印象というのは表情や声質・テンポ、内容といった全体を含めて構成されるものだと考えられています。その1つを構成するのが「話し方」です。では、「話し方」を変えるだけでビジネスパーソンは変われるのでしょうか?
文化庁が2016年に発表した資料、『「国語に関する世論調査」におけるいわゆる「コミュニケーション」に関する問い(抜粋)』によると、「誰かに話をしていて、自分の言いたかったことが相手にうまく伝わらなかったという経験があるか、ないか」という問いに対して「ある」と回答した人は全体の63.4%と過半数を超えています。
人間が言葉を使用するのは自分の頭の中にある情報・感情等を、何かの目的を持って伝えるためです。例えばビジネスパーソンならプレゼンにて「自社商品・サービスに対して興味・関心を持ってもらう」ことを目的として言葉を使います。また、コンタクトセンターでは、電話をかけてきた方の疑問や要望に対して「的確な回答をする」ことを目的に言葉を使います。このようなシーンにおいて「自分の言いたいことが伝わらない」ことは致命的です。
その「伝わらない原因」の一つが「話し方」です。同じ情報を伝えるにしても、話し方一つで伝わり方は違います。例を挙げるとすれば、スティーブ・ジョブズ氏や孫正義氏などプレゼンのプロフェッショナルと呼ばれる人達の会話内容をそっくり真似しても、同じように話が伝わるとは限りません。これは「話し方」という言語以外(非言語ツール)に大きな違いがあるからです。
しかし逆を言えば、「話し方」のコツさえ掴めればビジネスパーソンは劇的に変われる可能性があることを意味しています。新しい自分へ変わるための第一歩は、まず「話し方で自分は変われる」と信じることです。そして、誰もが話し方は上達できるということを理解しておくことが重要です。
「話し方」を上手くする6つのコツ
それでは実際に「話し方」を上手くするコツをご紹介していきます。その中には具体的なコツというより、心構え的な要素も含まれていますが、総合的にコツを押さえることで日常的に話し上手なビジネスパーソンを目指すことができます。
コツ1.日々のトレーニングを欠かさない
近年はフィットネスブームによって自分なりの肉体美を手に入れることに夢中になる人が増えています。では、トレーニングを行わずに筋肉を大きくしたり、脂肪を落とすことは可能なのか?答えは当然「不可能」です。また、スポーツの世界においても才能だけでトップレベルに達することはできず、優秀な選手ほど勤勉にトレーニングへ励みます。これと同じように「話し方」を変えるには日々のトレーニングが重要であることを念頭に置きましょう。スティーブ・ジョブズ氏も1回のプレゼンのために何週間も前から準備を始め、その時間は数百時間に及ぶこともあったそうです。電車の中で口ずさむのも良いですし、お風呂に入りながらなど相手がいることを想像して話す練習をして見ることが大切です。
コツ2.滑舌を良くするポイント
「話し方」を変えるために滑舌は非常に重要なポイントです。如何に「話し方」を意識しても滑舌が悪ければ聞き取りづらく印象も悪くなってしまいます。滑舌は生まれ持ってのものであり修正できないと思う方もいるかもしれません。しかし、それは違います。トレーニングの方法は色々とありますが、次のポイントを意識して1日数分練習するだけで、滑舌の悪さは次第に解消されていきます。
- 身体の力を抜く
- 腹式呼吸を意識する
- 「あ・い・う・え・お」とハッキリ大きな声で発音する
- 母音をハッキリ発音するように喋る
- 口に指を2本縦に入れられるくらいの開口を意識
これらのことは「アナウンサー式発音練習」「発生練習」などで検索すると詳細がわかります。また、YouTubeなどにも詳しい動画などがありますのでご確認ください。
コツ3.話を伝えたい相手の後ろまで声が通るように話す
相手にとって心地よい「話し方」というのは、声が大きすぎても小さすぎてもいけません。理想は、相手の少し後ろまでしっかりと届くくらいの声の大きさです。電話越しや複数人数に向けたプレゼンテーションなどではその感覚は難しいかもしれませんが電話の場合には対面していることを想定して、プレゼンの場合には重要人物を決めて実践すると良いでしょう。
コツ4.話し上手の人の真似をしてみる
いかなる分野においても、その道のプロフェッショナルと呼ばれる人々は下積み時代に「他人の真似をする」ことから始めています。著名な画家や漫画家、音楽家も模倣することで様々な技術を身に付けています。政治経済を語るプロフェッショナルである池上彰氏も著書にて、NHK記者時代には先輩達の原稿を片っ端から模倣し練習していたそうです。「真似をする」という行為は恥ではありません。それこそ孫正義氏などプレゼンのプロフェッショナルの話し方を真似してみたり、身近にいる「話し方」が上手な人の真似をするのも良いでしょう。
コツ5.具体的な目標を決めて行動する
目標を決めることはゴールへの最短距離を進めるために欠かせません。ただし、目標を決める際は漠然としたものではなく、具体的に決めることがポイントです。例えばコンタクトセンターにおけるオペレータでは漠然と練習するのではなく、質問を想定して原稿を作成して100回声に出して読むなどです。こうした目標をコツコツ達成することで、「話し方」は確実に良くなっていくはずです。
コツ6.覚えてもらいたい内容を強調する
話を伝える相手にしっかりと覚えておきたい内容・キーワードは繰り返して強調する。これはプレゼンが上手なビジネスパーソンの常套手段です。特にプレゼンの場では、話の内容が相手の記憶に残らないと意味はありません。そうした意味でも内容やキーワードを強調することで、しっかりと印象付けることができます。
「話し方」は、トレーニングや意識によって誰でも上手くなれる領域です。これからのビジネスをより良いものにするためにも、ご自身の「話し方改革」にぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。
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