コンタクトセンターが多くの顧客に対応し、顧客満足度を高めるためには、効率化が必要です。本記事では、コンタクトセンターの対応時間短縮のためのポイントを紹介します。対応時間を短縮するための施策を検討している人は、解説するポイントについて社内の状況を振り返り、また紹介する施策やツールも活用してみてください。
コンタクトセンターの対応(通話)時間とは
通話時間の短縮を考える前に、まずコンタクトセンターにおける通話時間の考え方を整理します。基本的には、顧客と電話で話をしている時間や必要な手続きを進める時間を「通話時間」といいます。通話時間には、担当者に転送・引き継ぎをする時間や、質問に対する回答を確認するための時間も含まれます。さらに、この通話時間に電話の記録を残すための時間を含めて「対応時間」と考えるとよいでしょう。この対応時間を平均したものが「平均処理時間(AHT)」と呼ばれ、業界でよく用いられています。
コンタクトセンターの対応(通話)時間短縮が重要な理由
では、コンタクトセンターではなぜ対応時間の短縮が重要視されているのでしょうか。
ひとことでいえば、業務の「生産性」を高めるためです。生産性とは、コンタクトセンターにおいては時間あたりの顧客対応数と置き換えられますが、顧客一人あたりの対応時間を短くすることで、一定時間のなかでより多くの顧客の要望に応えることが可能です。多くの顧客に対して素早く対応できるようになれば、顧客が電話をかけた際に担当につながるまでの待ち時間も必然的に短縮され、顧客満足度が向上するでしょう。
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コンタクトセンターの対応(通話)時間短縮のポイント
コンタクトセンターを運営するうえで、対応時間の短縮が重要となる理由は説明したとおりですが、ではどのように短縮していけばよいのでしょうか。なかにはそれが難しいと感じている人もいるでしょう。そこで、対応時間を短縮するための具体的なポイントについて、6つ紹介します。担当にあたっている人は、これらのポイントについて社内の現状に照らし合わせて考えてみるとよいでしょう。
AHT(平均処理時間)の把握
何か課題を解決したり、改善したりするうえで大切なのは、まず現状をしっかりと把握することです。コンタクトセンターでの顧客対応時間の把握に適した指標がAHT(平均処理時間)です。AHTは"Average Handling Time"の略で、顧客との通話時間や受付にかかった時間、電話の記録を残す時間なども含まれます。AHTが短いほど、同じ時間のなかでより多くの顧客とコミュニケーションを取れることになります。一方、AHTが長い場合、業務のどこかで非効率な部分が生じている可能性があります。基準値などがあればそれと比較して、AHTがどのような値になっているかをまず把握し、そのうえで対策を考えるようにしましょう。
通話の分析
AHTなどの指標をチェックするには、まず通話を録音している必要があります。そのうえで、通話内容を分析し、品質を落とさずにより短い通話時間で完了させる方法を考えます。通話時間の長いものの方が、通話短縮に向けての改善点が盛り込まれている可能性が高いので、分析を行う際には通話時間の長いものを対象にした方がよいでしょう。また、通話パターンも単一ではないため、いくつかの通話パターンについて内容の分析を行い、改善点を洗い出しましょう。
効果的な分析方法として、選んだ分析対象の通話内容について文字起こしを行うというものがあります。通話内容を文字化することで、客観的に自身あるいは他のオペレーターの通話内容が把握でき、話している時には気づかなかった改善点を発見できます。たとえば、話が冗長になっていたり(顧客の要望を正確につかめていない)、顧客が同じ質問を何度も繰り返していたり(こちらが話した内容がうまく伝わっていない)、難しい専門用語を多用していたり(顧客の立場に立って通話できていない)など、より明確に課題を特定できるのです。また、通話内容を段階ごとに区切ってみるのも有効です。たとえば、顧客からの問い合わせについてヒアリングしている時間、それに対する回答を確認している時間、回答を顧客に伝えている時間など、ひとつの通話を段階別に分析することで、どの部分の時間を短縮すべきかが見えてきます。
引き継ぎ・保留時間の短縮
顧客の話す時間の長さについては、コンタクトセンター側の努力だけで短縮できるとは限りません。顧客という相手があっての会話であり、ニーズや困りごとを聞く場でもあるため、コンタクトセンターが一方的にコントロールできるものではないためです。一方、オペレーターの努力次第で短くできる部分が、引き継ぎや保留にかかる時間です。具体的な方法としては、顧客の要望ごとに番号を分け、各担当にダイレクトにつながるようにしておきます。そうすれば、引き継ぎの回数を減らすことができ、その分保留の時間も短くなります。
FAQシステムの活用
顧客からの質問に対する回答を考えたり、確認したりする時間が長くなることもあるでしょう。そこで有効なのは、社内でFAQを整備しておくことです。顧客からの質問や回答を社内のマニュアルやExcelファイルに記録しておき、各オペレーターがそれを参照することでスムーズに対応を進められます。最近では、短時間で簡単に検索でき、検索性の高い「FAQシステム」の活用も進んでいます。紙媒体では目視で探すのに手間がかかり、エクセルだと正確なワードで検索しないとヒットしないという問題があります。その点、FAQシステムの場合は類似した言葉で検索ヒットしたり候補を示してくれたりするので、応答時間の短縮に有効とされています。また、新しい情報の追記や修正も簡単にできるため、常に最新のFAQを社内で共有できます。
テンプレートの共有
コンタクトセンターでは、どのオペレーターが対応しても品質を一定に保つということが大切です。各オペレーターがそれぞれの考えや言葉で顧客からの質問に対応するよりは、チームとして共通の返信テンプレートがあった方がばらつきなく対応できます。さらに、この返信テンプレートは対応時間短縮にも有効です。特にチャットでの対応の場合は、返信テンプレートの文面を予めシェアしておき、質問に応じたテンプレートを活用することで、対応時間を大幅に短縮できます。よくある質問を類型化できるのであれば、回答まで自動化してしまうのもひとつの手です。
通話内容のテキスト化
AHTは、大きく分けて平均通話時間と後処理時間という二つの要素からなります。そのうち、通話時間は部分的には努力できるものの、顧客や質問内容による部分も大きく、すべてコントロールできるとは限りません。一方、対応の記録を残す後処理の時間は、通話後に行う事務作業であるため、短縮のための施策を積極的に行いやすい部分といえるでしょう。後処理の時間を短縮するためにチェックするポイントをいくつか挙げます。まず、入力するべき記録の項目をチームで統一し、シンプルにしておくことが有効です。項目についても見直し、不要な項目がある場合は削除しましょう。せっかく入力しても後で一度も見返さないような内容は、記録するだけ時間の無駄です。また、タイピングの速度も後処理にかかる時間を左右しますので、タイピングしやすいフォーマットになっているか確認してみてください。ちなみに、各オペレーターのタイピング能力を一定程度に引き上げるための研修を行うことや、簡潔に記録を残すために文章能力を日頃から訓練しておくということも効果的です。
さらに、近年急速に普及している音声認識サービスの活用もおすすめです。スマートスピーカーなど日常生活でも活用が進んでいますが、コンタクトセンターにおいても活躍してくれるツールです。音声認識サービスを用いることで、通話内容がリアルタイムでテキスト化されるので、通話の後処理をする際に入力が不要で、簡単かつ短時間で完了できます。FAQシステムと連動させることで、テキスト化した内容に応じた回答の候補も素早く提示してくれます。
まとめ
コンタクトセンターは、最も近くから顧客に寄り添う存在です。そのため、顧客一人あたりの対応時間を短縮し、できるだけ多くの顧客と向き合うことが必要です。現状を把握・分析したうえで効率化する方法を検討し、対応時間の短縮を図ってください。また便利なツールもありますので、必要に応じて導入してもよいでしょう。
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