コンタクトセンター向け音声認識ソリューションの
カスタマーサクセス事例

 2024.07.29  居福 良紀 氏

昨今は様々なコンタクトセンター向けソリューションが存在します。その中でも音声認識ソリューションはコンタクトセンターになくてはならないものとして定着している場合もあれば、導入効果を十分に実感できていない場合もあり、導入から活用定着までの支援が必要なソリューションであると考えています。
本記事では、「AmiVoice Communication Suite」のカスタマーサクセスの考え方をご紹介し、音声認識ソリューションをコンタクトセンターにとってなくてはならないものにしていく取り組みについて解説します。

コンタクトセンター向け音声認識ソリューションのカスタマーサクセス事例

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カスタマーサクセスの概要

カスタマーサクセスが目指すべきこと

カスタマーサクセスには体系化されたベストプラクティスが存在し、様々な書籍などでも紹介されています。カスタマーサクセスに関わる具体的な取り組みも数多くありますが、それらが共通して最終的に目指しているのはアウトカム(成果)を顧客に与えることと考えられています。
どのソリューションにもそれ自体ができることとしての提供価値と利用することによって得られるアウトカムが存在します。コンタクトセンター向けの音声認識ソリューションでは例えば以下のようなイメージです。

  • 提供価値:コンタクトセンターの通話がテキスト化される
  • アウトカム:AHTの削減、通話品質の向上、エスカレーション工数の削減など

提供価値を通してアウトカムの創出を行うプロセスの支援、つまり提供価値をアウトカムに変えるためのプランの立案と実行がカスタマーサクセスということです。(※参考 山田ひさのり:【カスタマーサクセスの新たな責務】今こそ「アウトカム」を特定すべき理由、その特定プロセスを知る

SaaSのカスタマージャーニーと解約理由

カスタマーサクセスが主な対象としているSaaSでは、サービス利用のフェーズとしてオンボーディングフェーズ、サクセスフェーズという二つに大別されます。

  • オンボーディングフェーズ:顧客がサービスの基本価値や利用方法を学ぶフェーズ
  • サクセスフェーズ:顧客がそのサービスを利用して利益につなげるフェーズ

特に、オンボーディングフェーズをいかに成功させるかはSaaSの解約率に大きく影響すると言われており、カスタマーサクセスを考える上で非常に重要なフェーズとなります。(※参考 山田ひさのり 著:カスタマーサクセス実行戦略)
以降の章ではAmiVoice Communication Suiteのオンボーディングフェーズでのアウトカムの創出により、活用の定着につながる取り組み概要と事例をご紹介します。

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オンボーディングの考え方

音声認識ソリューションの特徴

前章で一般的なSaaSが継続して利用されるためにサービスの提供価値をアウトカムに変えるための支援が必要という話をしました。これは音声認識ソリューションにも当てはまるものと考えており、具体的な支援に落とし込むために、AmiVoice Communication Suiteではソリューション自体の特徴と利用者の役割に注目しています。

ソリューション自体の特徴としては、利用できる機能自体が多いことと機能自体の設定が比較的難しいことが挙げられます。コンタクトセンターの通話をテキスト化できるのはもちろんですが、特定のキーワードが発話されたときにオペレータに何かをリマインドしたり、管理者にアラートを出したり、発話されるキーワードに応じて通話に点数をつけたりなど利用できる機能自体は多く存在します。また、コンタクトセンター向け音声認識ソリューションを初めて利用するというケースが多く、機能自体やその設定内容の理解を1から行う必要がある場合がほとんどであるため、機能自体の設定の難易度が比較的高いです。

上記のような特徴があることから、AmiVoice Communication Suiteではオペレータや管理者といった利用者側ではなく、コンタクトセンターの企画部門などコンタクトセンターの改善に関わる(ソリューションを利用させる)方々が機能自体を理解して設定できるようになるという支援をオンボーディングフェーズに最優先で行うことが活用の定着へのポイントと考えています。
(図:音声認識ソリューションに関わるコンタクトセンター内の登場人物と役割)

音声認識ソリューションに関わるコンタクトセンター内の登場人物と役割

オンボーディングのゴール

音声認識ソリューションの活用を定着させるには、それを利用させる方々がコンタクトセンターで改善したいことを提供価値(ソリューションでできること)で実現できるようになることが重要でした。実現したいアウトカム(成果)については音声認識ソリューションの利用者側(コンタクトセンター)が詳しい一方で、提供価値についてはベンダー側の方が詳しいのが一般的です。

このため、AmiVoice Communication Suiteのオンボーディングにおいては、ベンダーが導入するコンタクトセンターの業務内容や課題、改善したいことを正しく理解した上で使用する機能の設定や運用方法の提案を行います。また、この提案は実現の難易度が比較的低く、コンタクトセンターの課題改善への寄与が大きいと考えられるものを優先的に行い、限定的であってもある課題については音声認識ソリューションを活用することで改善できるようになったという成功体験をできるだけ早く提供することを重視しています。つまり、オンボーディングのゴールとしては下記の2点を定義しています。

  • 導入するコンタクトセンターが望むアウトカムを実現する機能が何であるかを理解し、その機能が利用者自身で設定できること
  • コンタクトセンターの課題の一部に対して音声認識ソリューションを実際に活用し、改善したという実感(小さな成功体験)を得ること

オンボーディングの取り組み内容

本章では、前章で述べた音声認識ソリューションの導入初期(オンボーディングフェーズ)のゴールをどのように実現していくかについて解説します。

ヒアリング

まず、音声認識ソリューションを導入するコンタクトセンターの業務内容と解決したい課題のヒアリングを行います。コンタクトセンター運営にどのような役割を持った人が関わっているのか、誰がどのような理由でコンタクトセンターに電話をし、その通話内容はどのようなものか、通話中にオペレータや管理者にどのようなオペレーションが発生するのか、通話終了後の後続処理はどのようなものが存在するか、などをヒアリングシートに沿って確認し、解決したい課題を明確にします。

オンボーディングプランの作成

ヒアリングしたコンタクトセンターの業務内容や解決したい課題に対して、その実現のために利用すべき機能とその利用方法をベンダー側が考え、オンボーディングフェーズでは提案の中でどれを実施するかを実現の難易度と課題の重要度に応じて決定し、これをオンボーディングプランとします。

機能理解

オンボーディングプランに沿って、まずはコンタクトセンターの改善に関わる方々に利用すべき機能の設定内容や具体的な運用イメージを説明し、機能自体の理解を深めます。その後、実際の設定を行ってもらうことで不明点などを解消していきます。このように利用すべき機能自体の理解だけでなく、実際の課題の解決のために自身で設定して使えるようになることを支援していきます。
(図:オンボーディングの全体像)

オンボーディングの全体像

オンボーディングの実施事例

本章では、前章までのオンボーディングの考え方や具体的な実施方法に沿って音声認識ソリューションの活用支援を行い、コンタクトセンター業務の一部に効果的に活用できるようになった事例を紹介します。

概要

ある保険の申し込み受付を行っているコンタクトセンターでは、決められたチェックシートに沿って案内すべき内容を正しく案内できているかを確認する業務がありました。音声認識ソリューションの導入前は通録システムから通話音声を再生しながらチェックシートの内容を案内しているかを確認しているため、通話内容をほぼ全て聞いて確認する必要があり、この作業に非常に工数がかかっているという課題がありました。この課題の解決においては、案内すべき内容を全て案内している場合はチェックを不要とし、案内に不備がある場合は不備がある内容がすぐに分かるようになるのが理想の状態とのことでした。

提案内容

本件での案内内容の確認作業の効率化のポイントは、通話毎に案内すべき内容のうちいくつが正しく案内できているかを機械的に判定することと考え、これを通話毎にキーワードベースで点数をつける機能で実現することを提案しました。案内すべき内容をそれぞれキーワードに落とし込んで点数化し、満点であれば全て案内できているという判断をします。

オンボーディングでの支援内容

まず、通話毎にキーワードベースで点数をつける機能についての設定方法を利用者が理解できるように説明を行いました。その後、実際に案内すべき内容の一部をこの機能でチェックする具体的な設定内容を提供し、残りの部分を利用者に考えて設定してもらうようにしました。実際に設定してもらう過程で明らかになった不明点、キーワードの設定方法のコツ、想定している運用が実現できない場合の回避方法などを説明し、理想の状態に近づける支援を行いました。結果として体感値ではありますが、案内内容の確認業務のうち約7割を自動化でき、生産性が3倍になりました。オンボーディングフェーズの終了後は別の保険商材に対しても案内内容を確認する設定を利用者自身でできるようになっており、業務内容が変わっても音声認識ソリューションを継続して活用できるようになっています。
(図:オンボーディングの実施事例)

オンボーディングの実施事例

まとめ

コンタクトセンター向け音声認識ソリューションの活用を定着させるには利用者が音声認識自体でできること(提供価値)と得られる成果(アウトカム)のつながりを理解し、アウトカムの実現につながる利用方法を理解することが重要です。音声認識ソリューションにおいては利用者が提供価値とアウトカムのつながりをイメージするのが比較的難しいため、提供価値とアウトカムを結びつけ、具体的な利用方法に落とし込む支援が特に重要になります。オンボーディングのフェーズでこの支援を通して音声認識をコンタクトセンター業務に活用できたという小さな成功体験をできるだけ早く創出することが音声認識ソリューションをコンタクトセンターにとってなくてはならないものにするために必要なことだと考えています。

執筆者紹介

居福 良紀 氏
居福 良紀 氏
株式会社アドバンスト・メディア
CTI事業部 カスタマーサクセスグループ

アドバンスト・メディアに新卒入社後、AmiVoice Communication Suiteの導入SEの経験を経てカスタマーサクセスグループへ異動。現在はカスタマーサクセスチームのリーダーとして主にオペレーション全般の設計やAmiVoice Communication Suiteの活用フェーズに合わせた支援の企画を行い、戦略的に活用の成功へ導くことに取り組んでいる。
コンタクトセンター向けAI音声認識ソリューション AmiVoice Communication Suite

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