お客様とメールや電話などを通して顧客対応を行う「コンタクトセンター」。企業の顔ともいえる重要な部署ですが、離職率が高く、悩んでいる企業も多いようです。そこで当記事では、コンタクトセンターの管理職や人事の方に向けて、離職率が高い原因とそれにより起こり得る問題、その対策方法をご紹介します。
コンタクトセンターの離職率が高い原因
「コンタクトセンター」とは、電話をはじめメールやチャットなどのツールを通じて、お客様からの問い合わせに対応する部署のことです。
商品のみに価値を求めるのではなく、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験価値)の向上が求められている昨今、顧客のサポートを行うコンタクトセンターは、企業にとって大変重要な役割を担います。その対応次第で、顧客と良好な関係を築けることもあれば、逆にクレームに発展してしまうこともあるでしょう。
このように難しい仕事なだけあって、コンタクトセンターの離職率は非常に高いといわれています。では、どうすればコンタクトセンターの離職者の増加を防げるのでしょうか。コンタクトセンターの離職率が高い原因について詳しく解説します。
膨大なクレーム対応
離職率が高い原因のひとつとして、クレーム対応があります。多くの場合、コンタクトセンターには商品やサービスに対して何らかの相談・要求をするために、顧客から連絡が入ります。中には、すでに不満を抱えた状態の顧客からの連絡もあるでしょう。このようなクレーム対応は、オペレーターにとって精神的な負担になりかねません。温度感の高い顧客の対応をし続けることで、「私は何もしていないのに」とオペレーター側の不満にもつながってしまいます。
また、自分から営業電話をかけるアウトバウンドでも、断られ続けたり、冷たくあしらわれたりすると精神的な負担がかかります。このように、クレーム対応に疲弊して退職するケースが多いようです。
モチベーション維持が困難
コンタクトセンターは、毎日顧客からの問い合わせに対応するのが仕事です。慣れてくると、毎日代わり映えのしない仕事にやりがいを見出せず、仕事へのモチベーションが低下してしまうこともあります。
また、コンタクトセンターは企業の顔ともいうべき大切な部署ではありますが、アルバイトや派遣社員に仕事を任せることも多く、他の部署と比べて「誰でもできる仕事」と思われがちです。こうした周りからの評価が得づらいことも、モチベーションの低下につながっています。
ノルマが厳しい
どの仕事にも達成すべき目標があるように、コンタクトセンターの業務にも「ノルマ」があります。インバウンドでいえば「応答率」、アウトバウンドでいえば「架電数」「成約数」などが該当します。
コンタクトセンター業務における数値は、結果がリアルタイムに出るため、ノルマを達成したかどうかがすぐにわかります。ノルマがあまりにも高いと、なかなか達成できず、オペレーターが負担に感じることもあるでしょう。それが報酬につながるなら、なおさら不満が溜まりやすくなります。
また通常、コンタクトセンター業務にはマニュアルが用意されています。そのマニュアル通りにやっても成績が上がらないと、「自分には向いていない」と感じて諦めてしまう人もいるようです。
商品説明など覚えることが多い
商品説明やサービス案内のために覚えるべき内容が多いことも、コンタクトセンターの離職率が高い原因のひとつです。
とくにインバウンドの場合、顧客の要望に合わせて臨機応変な対応が求められます。そのため、まずは研修やマニュアルを通じて、電話応対の基本を学びます。そして、顧客から問い合わせを受ける商品やサービスについて、細部まで知識を身につけます。もちろん新商品が出たり、キャンペーンを行ったりするたびに、新しい知識を身につけなければなりません。その結果、覚えなければならない量が膨大となり、それを負担に感じてしまう人もいるようです。
もちろん基本知識は身につけなければなりませんが、すぐに調べられる検索ツールなどを用意すれば、オペレーターの負担を減らせるでしょう。
職場内の人間関係
コンタクトセンターに限りませんが、職場内の人間関係がうまくいかずに辞めてしまう人もいます。例えば「上司の指導が厳しすぎる」「指示が曖昧でわからない」といった内容です。また、多くのコンタクトセンターの場合、顧客対応でトラブルが発生すると、上司対応になります。それが、上司と部下の不和を生む原因となる恐れがあります。他にも、社内でいじめが起きているなどの理由で退職する人もいます。
離職率が高いことで生じる問題
離職率が高いことによって、企業にどのような問題が生じるのでしょうか。代表的なものを見てみましょう。
生産性の低下
離職率が高いことによる大きな問題として挙げられるのが、生産性の低下です。コンタクトセンターでは、いかに効率よく顧客対応をするかが大切です。効率が悪ければ、顧客の待ち時間が増え、クレームにつながりやすくなります。効率を上げるには、長く業務を続けてもらい、ベテランを増やさなければなりません。
そのため、ベテランが退職してしまうと、業務の効率に大きな影響が出ます。また新人が退職した場合は、ベテランに育つ人がいなくなるため、結果として新人ばかりが増え、効率が落ちます。さらに育成の不十分な新人が対応することで、クレームが増加する恐れもあります。
つまり、一度採用した人材を手放さず、ベテランに育て上げることが大切なのです。
管理者の負担が増加
オペレーターが離職してしまうと、その分、新たな人材を補充する必要があります。新しいオペレーターには、その都度管理者が教育をしなければなりません。管理者は自分の仕事をこなしながら新人教育もしなければならず、大きな負担を抱えることになります。
また、採用コストも決して安くありません。常にオペレーターが入れ替わっていると、コスト面でも企業に負担がかかります。採用についてコストダウンを求められると、現場管理者や人事の負担はさらに増加するでしょう。
無駄なコストをかけないためにも、一度入社したオペレーターになるべく長く続けてもらうことが大切です。
離職率低下に向けた取り組み
企業は管理者の負担やコスト面などを考慮し、オペレーターの離職を防ぐよう努める必要があります。離職率低下に向けた取り組みをいくつかご紹介します。
採用面接に現場の人間にも同席してもらう
よくある退職理由のひとつに、「想像していたものと違う」というものがあります。これを防ぐには、採用時点でのミスマッチをなくすことが大切です。
そのために採用面接時は、実際にコンタクトセンターで働く管理者にも同席してもらいましょう。現場の管理者ならではの目線で、応募者がオペレーターとして適切かどうかを判断してもらうのです。
また、仕事内容や実情を現場の人間から伝えることで、面接時と入社後のギャップを減らせます。あわせて、コンタクトセンター業務において、どのようなスキルが身につくのかも伝えてもらえば、応募者にとってどのようなメリットがあるのかを想像してもらいやすくなります。
研修内容の見直し
オペレーターの定着に欠かせないのが、充実した研修です。研修の内容や時間が適切かどうかを確認しましょう。定期的に振り返り、内容を改善することはもちろん、人によって指導内容が異なることのないように、マニュアルを作成するのがおすすめです。
採用だけにコストをかけても、オペレーターが定着しなければ意味がありません。入社したオペレーターに対して、多少コストをかけてでも充実した研修を行いましょう。
定期的な面談でフォローの機会を増やす
研修だけでは、十分な新人フォローができているとはいえません。定期的に1on1ミーティングを行い、個人の悩みや不安を吐き出す機会を設けましょう。ミーティングで聞いた悩みに対して、適切なフォローを行うことで、モチベーションの向上につながります。
また、研修を終えてすぐに電話デビューするのは、新人にとって負担がかかるものです。初めのうちは、先輩にそばについてもらいながら電話に出るなど、きめ細やかなフォローを行いましょう。新人のうちに十分な力をつけてもらうことで、いち早くベテランのオペレーターに育てられます。
本人から退職理由をヒアリングする
万一、退職希望者が出てしまった場合には、今後の離職率低下に向けて、なぜ退職を希望するのか、どのような不満があるのかなどをヒアリングしましょう。
「職場の人間関係がよくない」「ノルマが厳しい」「仕事量が報酬に見合わない」など、コンタクトセンターによって離職の原因は異なります。本人から理由を聞くことで、現場における課題が見つかるはずです。ヒアリングした内容をもとに、職場改善に努めましょう。
まとめ
コンタクトセンターは、クレーム対応や厳しいノルマがあるため、離職してしまう人が多い部署のひとつです。離職率が高いと、コスト面や生産性の面で、企業にとって不利益となってしまいます。離職者を出さないためには、採用や研修に十分なコストと時間をかけ、企業に合った帰属意識の高いオペレーターを育てることが大切です。
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