NPS®とは、顧客ロイヤルティを測る指標です。NPS®を測定・分析し、自社の改善点を見極めることで、業績向上に繋げられます。本記事では、NPS®を算出するのにどのようなデータが必要なのか、NPS®の必要回答数や具体的な数値の計算方法について解説します。
NPS®の計算方法について順を追って解説
NPS®の計算でポイントとなるのは、アンケートの取り方とサンプル数です。適切な形式・数量を踏まえて調査しないと、信頼性の低い結果となってしまいます。
また、収集したデータの分類も、NPS®で改善点を見つけるのに重要です。NPS®特有の、スコアに応じた顧客の振り分け方についても押さえておくことが大切です。ここではNPS®の計算方法を順番に解説します。
0~10の11段階でアンケートを実施|必要なサンプルは400以上
NPS®では、顧客に「この商品・サービスを他の人にも推薦するか」と質問し、11段階評価で答えてもらいます。従って、NPS®を算出するためには、アンケート調査(VOC/Voice of Customer)が必要です。
11段階評価で回答してもらうことで、評価の偏りをなくせます。例えば顧客満足度調査に多い5段階評価だと、1~3の低評価が多くなり、評価の偏りが発生してしまいます。
どの程度の精度を求めるかにもよりますが、統計上はサンプル数400以上が最低限必要とされています。誤差を±2%以内に収めたい場合は、2,000以上のサンプル数が必要です。
アンケート結果を「推奨者」「中立者」「批判者」に分類
NPS®では、回答の内容から顧客を「批判者(Detractor)」「中立者(Passive)」「推奨者(Promoter)」という3つのグループに分類します。それぞれの属性にカテゴライズすることで、顧客が自社をどのように捉えているのかの傾向がわかります。「好意的な顧客はどこに満足したか」「批判的な顧客はどこに不満を抱いているか」といったことを、明確に整理できます。各分類がどのような顧客を表すのか、それぞれ詳しく解説します。
0~6の点数:批判者(Detractor)
11段階評価で0~6の点数が付いた場合、その顧客は批判者として分類します。商品やサービスに対して失望、不満、不快と感じるなど、問題を指摘した顧客です。
商品やサービスについて「良くなかった」「次は利用したくない」というような口コミを流す恐れがあり、企業のブランドイメージに悪影響を与えることも考えられます。業績向上のためには、批判者のコメントから重要な改善点を見出すことが大事です。
7~8の点数:中立者(Passive)
11段階評価で7~8の点数が付いた場合、その顧客は中立者として分類します。商品やサービスについて、良くも悪くもないと評価した顧客です。
中立であるからといって商品・サービスに満足しているとは限らず、小さな不満を抱えていたり、企業に対して改善を求める何らかの意見を持っていたりすることがあります。そのまま放置するのではなく、可能な範囲で意見を分析して施策に役立てることが大事です。
9~10の点数:推奨者(Promoter)
11段階評価で9~10の点数が付いた場合、その顧客は推奨者として分類します。商品やサービスに対して非常に満足しており、他の人にも積極的に勧めると評価した顧客です。このグループの顧客は、周囲に好意的な意見を広めることで企業のブランドイメージを強化してくれ、新たな顧客の獲得につなげられることもあります。
また、推奨者の回答から、具体的にどの要素が好意的に受け止められているか知ることで、今後も維持すべき取り組みや施策を明確にできます。
【計算式】推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値
NPS®の計算式は、推奨者の割合から、批判者の割合を引くことで算出します。具体的な計算式は、以下です。
NPS®=推奨者の割合(%) ー 批判者の割合(%)
NPS®のスコアはー100から+100までの値をとり、ー100に近いほど不満を抱える顧客が多く、+100に近いほど熱烈なファンが多いと判断できます。
上記のようにシンプルな計算式なので、計算のみであれば特別なツールは不要です。
NPS®スコアを見るときの注意点
簡単な計算で算出できるNPS®スコアですが、単純に数値だけで見ると間違った判断をしてしまう恐れがあり、注意が必要です。ユーザー層や業界の風土によってデータに偏りが生じる場合があるので、自社の業界やサービスの特徴に合わせた、冷静な分析が必要です。
算出されたスコアの分析前に知っておきたい、2つの注意点について解説します。
1.日本ではマイナスのスコアが出やすい
ひとつめは、日本においては良いサービスが当たり前となっているため、高評価が得られにくい傾向にある点です。0~8の評価を下す人が多く、特に批判者となる0~6は数値の幅が広いので推奨者と比べて偏りが生じやすくなります。
偏りに惑わされないためには、NPS®スコアだけに注目せず、顧客のフィードバック全体を見て改善点を見つける努力が必要です。
2.業界によって平均値が異なる
ふたつめは、業界によって平均値が異なる点です。例えば、飲食業界や生命保険業界では顧客満足度の評価基準が異なることも多く、平均値が高めになる傾向にあります。そのため、他社の評価も調査したり、業界平均値と比較したりしながら自社の評価を見ることが重要です。
NPS®を向上させる方法とは?
NPS®は数値化して終わらせるのではなく、結果を分析し、現実の業績を上げるための施策に落とし込む必要があります。社内でフィードバックを行い、顧客満足度を上げるために何をすれば良いか把握し、具体的なアクションを起こすことが大切です。
NPS®の分析にあたって重要なポイントを解説します。
評価の要因を分析し批判者を減らす
まずは、批判者の声を真摯に受け止め、改善点を洗い出します。その際に、NPS®のスコア低下の原因となっている要因を明確化することが重要です。数値を左右したのが、価格なのかサービスの質なのか、不満点を明確にします。そこから対応策を検討して改善することで、今後同じ不満点で批判されるリスクを軽減できます。
また、批判者が持つ不満点は、今後の開発にも役立てられ課題点を初期段階から明確にすることで、効率的に新商品・サービスを開発可能です。
ただし、批判者がもともと狙っているターゲットであるのかは確認する必要があります。自社のターゲットとずれている場合、その意見に囚われ過ぎると、リソースを無駄に費やす恐れがあります。
強みを把握し推奨者を増やす
NPS®を向上させるためには、推奨者を増やすことが重要です。そのためには、自社の強みや良さを把握し、顧客が自社を選ぶ理由を明確に説明できるようにします。
また、顧客に対して積極的なアプローチを行うことも推奨者を増やすためには必要です。推奨者から評価されている項目を強化したり、フォローサービスを行ったりすることで、顧客満足度を高められます。
競合他社と比較した場合のスコアを把握する
NPS®分析で競合他社に対して顧客がどのように評価しているのか、どのような要因で顧客を奪われるリスクがあるのかを把握しましょう。競合環境の中で自社がどのようなポジションに位置しているかを正確に把握することで、市場における競合環境を明確にできます。そのうえで取るべき施策を判断できるので、他社との差別化が図れ、競争力の強化が期待できます。
まとめ
NPS®分析は、自社の改善点や把握できる便利な指標ですが、分析には十分なサンプル数が必要であり、ツールなどを用いた簡易アンケート(VOC)が必要です。
ベルシステム24が提供する「BellCloud+」は、テキストマイニングを活用したVOC分析や、顧客の感情解析を採用しているので、コールセンターでのNPS®計測・分析に役立ちます。
NPS®の全体像などもっと知りたい方は、こちらの記事が役だちます。
『顧客満足度の指標 NPS®について解説』
*Net Promoter®およびNPS®、Predictive NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
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