企業のマーケティング戦略として、O2O、オムニチャネル、OMOといった概念が知られていますが、オフラインのデータを取得できるようになった今ではOMOがより重要視されています。
この3つは似た部分があり混同しやすいため、それぞれの特徴・違いを明確にしながら、これから企業が取り組むべきOMOについて整理します。
オムニチャネルとは
オムニチャネルとは、店舗やECサイトといったチャネル(集客のための経路)を統合する販売戦略です。
オムニチャネルの実現により、顧客はチャネルごとの差異を気にせずに、どこでも同じように商品・サービスを購入できるようになります。ECサイトと実店舗でのポイントカード共通化が一例です。
企業は在庫データや顧客情報を一元管理することで利便性の高いサービスを提供し、顧客の囲い込みを図ります。
オムニチャネルの例
あるアパレル企業では、ECサイトで購入した顧客向けに店舗受取サービスを提供しています。顧客は無料または低額の送料で商品を受け取れ、企業は顧客を実店舗へ送客することでクロスセルを期待できます。
その発展形として、店頭には在庫を置かずに試着と商品受け取りのみという業態も登場しています。試着して気に入った商品を、店頭に置かれたタブレットでオンライン注文するスタイルで、手ぶらで帰宅できる手軽さがあります。企業側はレジ精算や在庫確認が不要になる分、接客効率を向上できる利点があります。
オムニチャネルを推進するメリット
企業がオムニチャネルを推進すると、顧客向けと自社向けのどちらにもメリットがあります。
まず顧客に対しては、買い物に対する満足度を高められることです。オンラインでもオフラインでも同じように買い物ができたり、過去の購買履歴が同一ブランドの別店舗で参照できたりすれば、より便利です。「店舗で気に入った色の在庫がなくても店頭のタブレットから注文できた」「オンラインで注文して会社帰りにピックアップできるから便利」といった積み重ねが、企業に対する信頼度向上、ブランド力向上へとつながります。
次に自社に対しては、顧客データの統合によりマーケティングをしやすくなることが挙げられます。チャネルごとの顧客データを統合・一元管理することで、顧客の動きや嗜好が把握しやすくなり理解が深まります。さらに、分析結果に基づき一貫性のあるマーケティングやコミュニケーションを行うことで、適切なレコメンドによる売上増や欠品による機会損失防止が期待できます。
OMO(Online Merges with Offline)とは
OMOとは、オンラインとオフラインとの境目をなくして顧客体験を提供する考え方です。「Online Merges with Offline」とは、オンラインとオフラインを統合するといった意味になります。GoogleチャイナのCEOだった李開復氏が2017年にエコノミスト誌で発表しました。
スマートフォンが人々の行動の中心になり、実店舗での行動やSNSでの投稿、オンラインでの履歴など、さまざまな情報と顧客IDが紐づけられるようになりました。これにより企業は、今までは難しかったようなパーソナライズされた情報を提供するなど顧客に対して質の高い体験を提供できるようになりました。
OMOの例
ある大手飲料メーカーでは、新業態としてLINEでコーヒーの注文から決済までできるカフェをオープンしました。顧客は事前注文でシロップやフレーバーを自由にカスタマイズでき、指定時間に無人ロッカーで作りたてのコーヒーを受け取れるシステムです。
顧客にとっては、好みのコーヒーを待たされずに非対面で受け取れるメリットがあります。カフェにとっては、顧客満足度向上に加え、顧客データを獲得する機会になります。このサービスはLINEで注文するため、カフェの公式LINEは友だち数がサービス開始後10日で1万人を突破、1か月弱で3万人を突破しました。獲得した顧客データは、商圏分析などに役立てられています。
OMOを推進するメリット
企業はOMOを推進することで、カスタマーエクスペリエンス(CX)と呼ばれる一連の商品購入に関する顧客体験を向上させられます。
例えば、店内に多数のネットワークカメラを設置し、アプリを使って決済できる無人店舗が国内でも導入がはじまっています。顧客はレジを通らずに非接触で買い物ができ、購入情報に基づいたレコメンドをスマートフォンで受け取れます。アプリの顧客情報と実店舗の購買行動が紐づいているからこそ実現できることです。
さらに、企業は蓄積したデータを分析して、今まで見えなかったニーズを探ったり、顧客に対してパーソナライズされた提案やメッセージを届けられたりします。ニーズに沿った新商品開発や適切なタイミングでのプロモーションなどによって、より顧客の体験は良いものになります。
CXの向上は他者との差別化になるだけでなく、その企業・ブランドへの愛着を醸成します。結果的に顧客は長期的に商品・サービスを購入し、LTV(顧客生涯価値)が高まります。
O2O(Online to Offline)とは
O2Oとは、WebサイトやSNSといったオンライン上の情報により、実店舗へ顧客を誘導するマーケティング戦略です。不特定多数の顧客を安価で集客するのにはオンラインが最適なため、O2Oの実践により効率的に集客が可能です。
O2Oの例
あるネイルサロンでは、初回限定クーポンをクチコミサイトに掲載しています。顧客は割引が受けられるため、初めての店舗でも来店ハードルが下がります。企業は今まで利用がなかった顧客を獲得でき、うまくいけばリピーターとしての来店も期待できます。
O2Oを推進するメリット
企業がO2Oを推進する大きなメリットは、新規顧客の獲得です。郵送DMやカタログ送付といったオフラインの集客媒体は既存顧客向けの施策であり、チラシやサイネージはターゲットが限られます。WebサイトやSNSといったインターネット媒体を活用することで、店舗へ来店したことがない、そもそも店舗を知らない顧客にアプローチできます。新規顧客以外に休眠顧客の掘り起こし施策としても有効です。
また、インターネットを使えば雨の日限定でクーポンを配布するなど、タイムリーなオファーが可能です。適切なタイミングですぐに施策を実行できる点もメリットです。
オムニチャネル・OMO・O2Oの違い
時系列で見ると、まずO2Oが、続いてオムニチャネルの概念が生まれました。そしてこれらふたつの概念をより進めたのがOMOです。
まずO2Oは、実店舗への送客手法であり商品・サービスの購入を増やすのが目的です。チャネル間の統合は考慮されておらず、顧客情報や在庫情報も独立しています。
オムニチャネルは主に顧客の囲い込みが目的です。顧客情報や在庫情報は統合されていますが、バックオフィス側に限定されており、顧客の体験という視点では独立したままです。
また、O2Oとオムニチャネルはどちらも企業側の視点で見た考え方です。
一方でOMOは、顧客体験の向上が目的であり、そのための手段としてあらゆるデータを活用する販売戦略です。オフラインの顧客行動をデジタルデータとして取得できることが前提であり、顧客のCXを中心にして考える点が他の2つとの違いです。
OMOの導入を成功させるには
紹介した3つの概念のうち、現在の顧客ニーズにもっとも適しているのはOMOです。先行する中国やアメリカでは、OMOで成功している企業事例が多くあります。
実際に企業がOMOに取り組む際には、顧客データを獲得することがなによりも重要です。そのためにはオンライン・オフラインを問わず顧客との接点になるチャネルを増やすことが不可欠です。前述のような店舗内のネットワークカメラのほか、スマートフォンの位置情報、Webサイトのアクセスログ、コンタクトセンターへの問い合わせ履歴などが含まれます。
収集したデータは、企業で管理しているほかのデータと連携しながら分析を行っていきます。効率的に管理・運用するためにはCRMといったツールを活用するのが最適です。
まとめ
顧客の体験価値を向上させビジネスを成功させるためには、OMOの推進が効果的です。推進にあたっては、自社が持つチャネルを有効活用し、さまざまなデータを蓄積・分析することが必要です。特に問い合わせ履歴は顧客の生の声として多くの企業が重視しています。
「ベルシステム24」のコンタクトセンターサービスでは、従来の電話問い合わせだけでなく、メールやチャット、LINEなど複数チャネルからの問い合わせに対応しています。貴重なデータを蓄積する手段として活用することをおすすめします。
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