コンタクトセンターに寄せられるたくさんのVOCをどう扱うかは、企業にとって大きな課題です。VOCにより、今後の商品・サービス運営の方向性が大きく左右されることも稀ではありません。中小企業の経営者・管理者・EC担当者向けに、VOCの概要やその重要性から、どのように収集すればよいかの方法までを解説します。
お客様の声を理解する「VOC」とは
「Voice Of Customer」の略で、日本語では「お客様の声」と訳されるVOC。コンタクトセンターには、問い合わせをはじめ、商品・サービスに関する意見や不満、オペレーターがヒアリングした要望など、日々、顧客からさまざまな「声」が集まります。場合によっては、自社の他商品・サービスに関する感想や、他社商品と比較した場合の意見なども寄せられることがあるでしょう。これらの声すべてをまとめて、コンタクトセンターではVOCと呼びます。
VOC活動の重要性
商品やサービスを顧客に提供する場合、気になるのは「その商品・サービスに対して顧客がどう思っているか」ということでしょう。商品・サービスの内容に「満足した」という声もありますが、その一方で「期待したような利用ができなかった」という不満の声、「もっとこうしてほしい」という要望の声もあります。
これらの声の中には、サービス・商品を今後どのように改善すべきか、販売促進やカスタマーサポートはどう進めていくべきかなどを検討する際のヒントが詰まっています。VOCを活かして適切に業務の改善を行えば、顧客満足度の向上につながるのです。
VOC活動におけるコンタクトセンターの3つ課題
VOCには商品・サービスの改善などのために有効な情報が詰まっているにもかかわらず、残念ながら適切に活用されているとは言い難い企業もあるのが現状です。本来なら参考にされるべき顧客の貴重な声が、システムに登録したデータのまま埋もれていたり、記録もされず放置されていたりします。
では、企業のVOC活動を妨げている原因はどこにあるのでしょうか。ここではまず、企業が円滑にVOC活動を進めるために解決すべき3つの課題について解説します。
顧客の声を収集できない
コンタクトセンターには数多くのVOCが集まるものの、その記録をうまく保存できていないことがあります。顧客から参考にすべきVOCが寄せられたとしても、それがきちんと保存されていなければ、VOC活動は成り立ちません。
メールやチャットであれば、問い合わせの記録はデータとして残ります。しかし、電話の場合は通話録音システムやデータを自動で記録するシステムやツールを導入しない限り、すべてのVOCを完璧に保存するのは難しいでしょう。また、通話録音データから有益な情報を抜き出すには、膨大な工数が必要です。IT化の進んだ現代においても、コンタクトセンターによっては手書きのメモを残しているようなケースすら見かけられるのが現状です。
情報管理ができない
顧客の声を収集できていても、その管理方法が適切ではないという課題もあります。コンタクトセンターのIT化や専用ツールの導入によりVOCをデータ化できるようになっても、その保存方法が適切でなければ意味がありません。特に、これまですべての業務を人の手で行っていたような企業なら、データ化により比較にならないほどのVOCが集められることになるでしょう。
集められたVOCは有効的に活用しなければなりませんが、そのためにはデータを適切に保存した上で、重要度別などに仕分け、企業が使いやすい形にまとめて分析する必要があります。しかし、そのためのノウハウも人的リソースも足りないというコンタクトセンターが少なくないのです。せっかくのVOCが無駄にないよう、早急に何らかの手を打つべきポイントの1つです。
収集した情報を活用できてない
VOCを適切に収集・管理できても、それが実際の施策に活かされていなければ、VOC活動の意味はありません。VOCを参考にして、商品やサービス、サポート体制、マーケティングのどこに問題があるか等の改善点を見出す。そして施策を練ってその効果を測定し、次に活かす。ここまでを終えて、はじめてVOC活動が成功したと判断できるのです。
VOCの活用が不十分な企業では、経営層がVOCの重要性を理解していないケースも見受けられます。顧客の声を全て受け入れることは現実的ではありませんが、逆にさまざまな種類のVOCをきちんと活用できなければ、本質的な改善にはつながらないのです。
VOCを効率よく収集する方法
それでは、どうすればVOCを効率よく集められるのでしょうか。以下、VOC分析の元となる以下3種類のデータごとに解説します。
コンタクトセンター
電話・メール・チャットなどの問い合わせデータのことを「コンタクトVOC」と言います。コンタクトセンターには、これらがお客様の生の声としてリアルタイムで集まってきます。
コンタクトセンターでは、オペレーターが自身の対応履歴を専用のシステムに入力する方法をとっているところも少なくありません。しかし、通話を自動的に録音・テキスト化したり、適切に分類したりした上で分析し資料化するのであれば、追加のIT投資が必要になることも考えられます。たとえば、既存のシステムにCRMやAIエンジンを接続するという方法が挙げられるでしょう。
ソーシャルメディア
Twitter・Instagram・Facebookといったソーシャルメディアには、商品やサービスを使った顧客のツイート・口コミなどが集まります。これらは「ソーシャルVOC」と呼ばれるもので、この情報を分析することにより、どのような商品・サービスを提供すれば顧客に利用してもらえるかが判断できるようになります。
ただ、ソーシャルメディアの情報は、それぞれの情報の属性について正確に分からないことが多いため、情報の精度という点においては必ずしも高くないことに注意しましょう。また、ソーシャルメディアから大量のデータを効果的に取得・分析するためには、専用のツールを導入する必要があります。
リサーチ(アンケート)
NPS®調査やCS調査、グループインタビューなどといった方法で得られるデータを「サーベイVOC」と言います。この調査では、アンケート方式がよく用いられます。
アンケートは無記名での提出を前提とすることも多く、ネガティブな意見も含めて本音を引き出しやすい手法です。商品に紙のアンケートを同封したり、商品やサービスの購入後にホームページ・アプリ内でアンケート記入を求めたりといった、さまざまなパターンが考えられます。コンタクトセンターでの対応の後、対応に関するアンケートメールを送る、というのもよく採用されている例です。
ただ、アンケートの質問項目次第では、回答が偏ってしまったり、有益な情報を得られなかったりすることもあります。アンケートを実施する前には、どのようなデータを集めれば効果的か、よく検討して項目を練る必要があるでしょう。
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VOCが社員満足度向上にも貢献
VOCは本来、顧客満足度を向上させるために使われます。しかし見方を変えれば、これを社員満足度の改善にも役立てることができるのです。
たとえば商品やサービスに対する顧客の不満が強ければ、社員は顧客からの厳しい声やクレームを受けることになります。その状態が続けば、社員は疲弊し、ストレスが蓄積、退職に繋がる可能性もあります。
しかし、VOC活動を適切に行うことによって、商品・サービスが顧客の要望に応えるものへと成長します。その結果、今度は顧客から社員に喜びの声や激励が寄せられることになり、それが社員の満足度上昇につながるのです。また、社員満足度が向上することにより現場に活気が出て、より優秀な人材が集まりやすくなる土壌が作られる、といった二次的なメリットも考えられます。
まとめ
VOCは、今後商品やサービスをどのように改善すれば顧客満足度の向上につながるかを考える上で、非常に有効な情報です。VOCの重要性をきちんと理解し、蓄積や分析のために必要なIT投資をするなどして、VOCを活用できる体制を迅速に整えることをおすすめします。
*Net Promoter®およびNPS®、Predictive NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
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