生成AIが広がりつつある今
企業がやるべきことは何か?(前編)

 2024.09.20  横山 敬一 氏

生成AIやDXの活用が叫ばれる中、現状まだファーストステップを踏み出すことができず、曖昧な課題感を持ったまま悩まれている企業も多いのではないでしょうか。この記事では生成AIの本質的な企業へのインパクトや、どのように向き合っていくべきかについて前編・後編に分けて記述させていただきます。

生成AIが広がりつつある今企業がやるべきことは何か?(前編)

生成AIがもたらす革新と可能性

生成AIとは?

生成AIはChatGPTをはじめとした、大規模なデータセットを活用して新しいコンテンツやアイデアを生成する能力を持ち、テキスト、画像、音声、動画など、さまざまな形式のデータを生成することができる技術です。
生成AIの導入は2023年ごろから日本でも企業が導入し始めており、クリエイティブなプロセスや自動化の分野で革新をもたらしています。その出力の柔軟性から製造、医療、金融、エンターテインメントなど多岐にわたる分野での応用が期待されています。
どの領域から導入するべきか、どのような業務であれば活用可能かという観点で多くの企業で検討や検証・試験導入がなされていると思いますが、この記事では従来のAI導入と生成AI以降の導入でどのように企業の取り組み方が変わっているのか、どのように向き合っていくべきかについて記述させていただきます。

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企業にとって従来のAIと生成AIの違いは何か?

私が従来のAIと生成AIを比較する際、生成AIの中でも基盤モデルと呼ばれるものに着目しています。
基盤モデルとは事前に大規模なデータによって学習されているモデルであり、そのモデルを土台に開発・チューニングをすることができるという点が従来のAI開発・活用との大きな違いであると考えています。
例えば、ChatGPTも既に膨大なデータから学習されているためそのまま活用する場合でもある程度の性能を見込め、個社それぞれのデータを使うことによってチューニングをすることができます。
従来のAI開発は膨大なデータを企業が収集するところから始めるため、AI開発の中でもそのコストが非常に大きく、そもそもデータを収集可能な企業でなければAI活用が難しいケースが多くありました。しかし、生成AIや基盤モデルは事前に膨大に学習されたAIモデルを活用して、データ収集コストや学習コスト、チューニングコストを抑えつつ、よりスピーディーに多くの企業が使えるようになったことが非常に大きなインパクトであると考えております。

企業にとって従来のAIと生成AIの違いは何か?

こちらの図に整理されている通り、生成AI・基盤モデルを活用したAI導入のイノベーションは以下の3点であると考えています。

1.データの用意や収集のコストの変化

  • 既に学習済みの基盤モデルを活用すること によって学習コストをショートカット可能に
  • 基盤モデルをベースにデータが比較的少ない企業でも活用できる業務が拡大

2.開発・検証・システム導入の流れ

  • Promptを中心に、短期の開発が可能に
  • 検証スピードが高速化することによってPDCAサイクルの差がつきやすくなっている

3.AIの活用先の拡大

  • テキストや画像など人間の業務に関わるデータを汎用的に扱うことができるため、幅広いタスクに応用可能

特に昨今生成AIがマルチモーダル化(画像認識なら画像のみ、音声認識なら音声のみといったように、単一のデータ形式を処理するのではなく、異なる形式のデータを関連付けながら処理できるようになる)する研究が進められています。GPT-4Vが画像をも処理できるようになったことを発端に今後も統合的にさまざまなデータを処理できるようなAIモデルの登場が期待されています。

生成AI・基盤モデルを活用したAI導入のイノベーションの3点をまとめると、従来のAI導入からの変化としては、データが少なくとも多くの企業が幅広いタスクに短い時間でAI導入できるようになり、PDCAサイクルが高速化していくことから差がつきやすくなっていくと考えております。この中で最もインパクトが大きい部分は「DX・AI活用のPDCAサイクルの高速化」であり、多くのDX部門が抱える「どこからDX・AI活用をすれば良いのか」「会社全体に一度に導入した方が良いのか、特定の部署から導入してそこから展開していくのが良いのか」といった課題に寄与するものだと思います。
一方で最初からスピーディにAI開発・検証・導入ができる企業はなかなかないと思います。その際にナレッジを持った企業と伴奏し、独り立ちを目指していくことが良いと考えています。

そもそも何故企業はAI活用をする必要があるのか?

AIの活用を検討する際、多くの方々が業務効率化の観点でROIを考えます。私が考える活用効果としては、

  1. 状況を把握しボトルネックの特定が正確にできるようになること
  2. バリューチェーンのPDCAサイクルが高速化する

という2点が業務効率化の中でもよりインパクトが大きいと考えています。

1点目「状況を把握しボトルネックの特定が正確にできるようになること」はAI導入・DXを含めたものになりますが、整理されたデータをもとに原価管理や各バリューチェーンのブロックごとにKPIを正確に把握できるようになることで、「精緻で正しい経営判断が瞬時に可能に」なるということです。業務効率化をすることで、各ブロックの担当者が問題発見や改善方法の考察に対応できるようになるゆとりを作ることになります。このような現場の知見を有し改善する能力は、単にその仕事を言われた通りにできるAIが代替するもの以上の付加価値があります。

2点目「バリューチェーンのPDCAサイクルが高速化する」は各ブロックにAIが導入された未来像で実現され、顧客にサービスが届いた段階からバックキャスト的に改善がなされていくというものです。ここでの改善は「AIを中心としたシステムの改善」と「顧客へのサービスそのもの」の改善を指しています。

そもそも何故企業はAI活用をする必要があるのか?

こちらの図では顧客対応の未来像を例として記載させていただきました。

顧客の問題発生から自己解決探索フェーズ、電話応対(+議事録をまとめる)、アフタフォローといった流れになっています。

この中で、自己解決探索フェーズではAI Chatbotによる対応、電話応対時には返答内容考察AI・会話履歴の履歴(議事録)のまとめ・情報抽出AI、アフタフォローでは具体的な対応方法考察や実行を行うAIが導入された状態を考えます。
この時に一番後段の顧客へのアフターフォローの結果から「顧客満足を向上させる」「顧客対応を速やかに実行する」「サービスそのものを改善する」という3つの指標をもとに「電話応対時の会話修正」「AI Chatbotの返答内容・FAQ記載内容の変更」「サービス自体の課題抽出・機能改善」といった具体的な修正を行っていくというイメージです。また、AI導入後に収集されたデータをもとにさらにAIの性能を改善することによって一連の流れのスピードも増していきます。
これら全てが自動で行うのは現状の技術やDX・AI導入のフェーズでは難しいケースが多いように思いますが、6割型・8割が省力化されるという状態を作ることができれば、掛け算的にバリューチェーン・サービスの改善が実行されるという状態を作ることができます。

まとめ

生成AI・基盤モデルの登場により、データが少なくとも多くの企業が幅広いタスクに短い時間でAI導入できるようになり、PDCAサイクルが高速化していくことから差がつきやすくなっていく時代が訪れています。
AI導入をすることによって単なる業務効率化ではなく、状況を把握しボトルネックの特定が正確にできるようになり、バリューチェーンのPDCAサイクルが高速化することで経営に対して掛け算的にインパクトを生み出すことができます。
一方で現状まだファーストステップを踏み出すことができず、曖昧な課題感を持ったまま悩まれている企業も多いのではないでしょうか。次回では、生成AIを導入するにあたっての課題や今やるべきことについて解説させていただきます。

株式会社EpicAIでは企業のバリューチェーン全体にAIを活用しサイクルを高速化する状態を実現するため、幅広いAI技術をもとに顧客のフェーズに合わせてオーダーメイドで生成AIをはじめとしたAI技術の実装およびコンサルティングを行なっております。課題感があるもののどうすれば良いかわからない、何から着手すれば良いかわからないといった方は是非こちらからアクセスください。

執筆者紹介

横山 敬一 氏
横山 敬一 氏
株式会社EpicAI
代表取締役 CEO

東京大学グローバル消費インテリジェンス寄附講座(GCI)にて講師。株式会社松尾研究所にてチーフAIエンジニアを務め、株式会社EpicAIを創業。
株式会社EpicAIでは画像認識技術・マルチモーダル生成AI技術を活用したデータ活用・AI技術に強みを持っており、製造や建設・不動産の領域での図面データの活用ソリューションやカスタマーサポートへの生成AIソリューション等オーダーメイド開発のソリューションを提供しております。
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