UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインとは、商品およびサービスによってユーザーに良い体験を提供し、企業の目的を達成する取り組みです。本記事では、UXの概要やUXデザインの重要性、成功事例5選、コンタクトセンターにおけるUXデザインの方法を解説します。
ユーザーエクスペリエンス(UX)とは
UXとは「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略語であり、ユーザーがひとつの商品またはサービスを利用して得られる体験、もしくは受ける印象のことをいいます。
具体的な例を挙げると、あるユーザーがECサイトを利用した際に、欲しい商品が見つけやすかった、商品の写真が鮮明で説明もわかりやすいと感じた、購入への操作や入力がスムーズに進んだといった体験はどれもUXの一部です。
さらにUXには、商品やサービスの利用中だけでなく、利用する前後に得られる感覚も含まれます。例えば、購入後カスタマーサポートセンターに電話したら対応が良かったといったものです。
つまり、UXはユーザーが商品やサービスに出会ってから利用後までの一連の流れで得られる体験を指す言葉です。そして、そのUXをより良くするために設計することをUXデザインといいます。
UXデザインの重要性
近年デジタル化が進んだことで、消費者はインターネット上での商品の比較やサービスの解約などが容易になりました。このような消費者行動の変化により、企業は自社の商品・サービスを繰り返し長く利用してもらうための取り組みが必要です。UXデザインによってユーザーとより良い関係を築ければ、競合他社との差別化につながり、企業のイメージ向上にも大きな効果をもたらすでしょう。
UXデザインの成功事例5選
UXデザインは商品・サービスのUXにおいて、どのような効果をもたらしているのでしょうか。ここでは、UXデザインの成功事例を5つ紹介します。
事例1: 商品ではなく体験を売る
アメリカ発祥の大手カフェチェーンでは「コーヒーではなく体験を売る」「家や職場に次ぐ第三の場所」というコンセプトを掲げ、まさに「モノではなくコトを売る」UXデザインを実現しています。高品質な商品の提供だけではなく、コーヒーの温度を選べたりミルクの飲み放題ができたりなど、顧客の要望に柔軟に対応します。また、Wi-Fi環境や電源設備を充実させ、ただおしゃれなだけでなくPC作業をする顧客にも寄り添った空間演出が好評を得ています。
新作が登場する度に通う熱心なファンも多く、まさにその空間にいるだけで最高のユーザー体験ができるUXデザインの成功例です。
事例2: 圧縮陳列でお客様の行動を迷わせる
一般的に、店舗内の商品の陳列は、「見やすく」「探しやすく」したほうがより良いUXにつながると思いがちです。しかし例外的ではありますが、あえて多くの商品を大雑把に陳列する「圧縮陳列」を行って成功した事例もあります。
いまや全国的に高い知名度を誇る大手ディスカウントストアは、商品をわざと「圧縮陳列」することで顧客に商品を探させるという大胆な手法をとりました。何がどこにあるか分かりにくい不親切な陳列に不満が起きると思いきや、逆に宝探しのような楽しさが人気を呼ぶ結果になりました。顧客にあえて迷わせる設計もUXデザインの成功事例です。
事例3: 自動で毎日の料理記録を作成できる
多くのレシピが掲載され「毎日の料理を楽しみにする」がコンセプトの人気アプリでは、繰り返しアプリを利用したくなるような機能を追加し、多くのユーザーを獲得しています。
特に人気なのは、クリップしたレシピの履歴をすぐに閲覧でき、なおかつ調理中や料理の写真をレシピに紐付けて保存できる機能です。この機能により情報管理が容易になることで、ユーザーはさらに楽しく料理ができ、またこの便利な機能を使いたいという気持ちが芽生えます。結果、他の料理アプリと比べ、とびぬけて多くのユーザー数を誇っています。
事例4: 老若男女問わず簡単に操作できる
無料メッセージアプリを展開する大手モバイルメッセージアプリケーションサービスでは、若者からお年寄りまで誰でも簡単に操作できるUI設計や機能などで、UXデザインを成功に導いています。従来メールでは、受信と送信に分かれたフォルダを管理してメッセージを送受信していましたが、ひとつの画面上でメッセージのやり取りができるアプリを開発しました。文字入力のいらないスタンプ機能や数人でやり取りできるグループ機能も搭載し、誰とでも気軽にコミュニケーションができるツールとして大人気を博しています。
また、UXプランニングを行うUXコミュニケーション室も設立し、常にユーザー視点に立ったUXを考えています。
事例5: 一人ひとりにあったサイズを提供する
あるファッション通販サイトでは、顧客一人ひとりに合ったサイズのスーツを提供するサービスを展開し話題を呼びました。「今までになかった面白いものを生み出す」ことを体現し、後払いできるサービスや商品が無料になる大規模なイベント開催も注目を集めています。
また、「UI/UX改善プロジェクト」を立ち上げ、PCDAを高速回転させる体制や改善を止めない仕組みづくりをしています。また、改善案を自分で考えられるメンバーを育成する「教育」にも力を入れ、止まることのないUI/UX改善に取り組んでいる例です。
UXデザインの良い例
ユーザーに「使いやすさ」や「楽しさ」などの体験を提供し、好印象を得ることで企業に利益をもたらすのが良いUXです。良いUXデザインには、「ユーザーの求めている体験」「ユーザーがどんな時にその体験を求めるのか」「その体験を求めているのはどんなユーザーなのか」の3つを把握することが欠かせません。上記の5つの成功事例はユーザー視点に立ったUXデザインを行っており、これらのポイントをしっかり押さえています。
UXデザインの悪い例
UXの悪い例として、ユーザーの視点に立たず企業の利益だけを求めたUXがあります。例えば、Webサイトをデザイン性は高いものの使いにくいデザインにリニューアルしたり、アカウント開設は簡単なのに削除が難しかったりする場合です。これらの例は、ユーザーに寄り添ったUXデザインとはいえません。
リサーチを行わないことや気配りの欠如により、UXデザインが失敗することがあります。常にユーザーファーストで設計すれば、このような失敗は避けられるでしょう。
コンタクトセンターでのUXデザインの方法
コンタクトセンターにおいてUXデザインを行う場合は、顧客分析やカスタマージャーニーマップの作成、ITの活用が重要です。
まず「顧客分析」では、属性やアクション履歴、顧客満足度、コンタクトセンターに寄せられた「お客様の声」などを分析し、深いニーズを洗い出します。
次に、ユーザーが商品およびサービスを知ってから購入までの道のりを図式化する「カスタマージャーニーマップの作成」です。作成することで現状のUXの可視化に役立ち、課題を見つけられます。
さらに「ITの活用」も欠かせません。例えば、オペレーター業務の負担軽減に役立つシステムを導入することで、高品質な顧客対応が実現できます。
これらに取り組むことで、コンタクトセンターにおけるUXデザインに大きな効果をもたらすでしょう。
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まとめ
UXデザインは、デジタル化が進み消費者行動が変化したことで、より重要性を増しています。ユーザーに最高の体験をしてもらうことで他社との差別化を図り、ユーザーと良い関係性を構築できます。
自社でUXを成功させるには、成功事例を参考にしつつ、利益だけを追求せずユーザーの視点に立った設計を行うことが大切です。コンタクトセンターにおいては、顧客分析やカスタマージャーニーマップを作成することでニーズを探り、UXデザインに活かすことができます。
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