「UXリサーチ」とは近年、商品の企画・開発などで活用される機会が増加しているリサーチ手法です。本記事ではUXリサーチについて、その概要や手法の種類と特徴、段階ごとの進め方、リサーチを実施する手順や注意点まで詳しく解説します。
UXリサーチとは
UXリサーチ(英:UX Research)とは、主にUXデザインのために行うユーザー体験に関する調査のことです。ユーザー体験(英:UX/User eXperience)とは、ユーザーが商品に関連する行動から得られるさまざまな体験を指し、たとえば製品・サービスの購入時や利用時に付随する「商品を快適に購入できた」「商品が使いやすい」「便利な機能がついている」といった体験・感情が該当します。
UXデザインにおいて、よりユーザーに支持されるユーザー体験を設計・作成するには、ユーザーニーズをしっかりと把握することが大切です。UXリサーチでは、このユーザーニーズを把握し、さらに掘り下げて必要な情報を得ることが可能です。ユーザーニーズからその心理まで充分に把握した場合には、仮説を立てて適切な改善策を立案できるようになります。
UXリサーチの手法
UXリサーチの手法は、主にユーザーの行動などの情報を調べる「定性調査」と、利用状況などはっきりとした数値を調べる「定量調査」の2つに分けられます。必要なデータを収集できる手法を選ぶことが大切です。
定性調査(質的調査)
定性調査とは、ユーザーの言葉や行動といった、数値では表せない情報を得ることを目的とする調査です。定性調査には、ユーザーから商品を使用した感想・意見を収集する「ユーザーインタビュー」や、ユーザーの商品の使い方やユーザビリティなどを実際に見て把握する「ユーザビリティテスト」、専門家の視点から商品の使い方やユーザビリティを分析する「専門家によるユーザビリティ評価」などの手法があります。
これらの調査手法で得られた情報からは、ユーザーがとった行動の背景や意識まで掘り下げて考えることが可能です。ユーザーインタビューなどに反映されている価値観についても調べられます。
定量調査(量的調査)
定量調査は、数字で表せる情報を得る目的で行う調査です。調査した数値の統計をとり、分析してからユーザーニーズを明確にできます。
代表的な定量調査としては、選択式の質問への回答を大人数に依頼して全体の傾向を把握する「アンケート」や、GoogleアナリティクスやGoogleサーチコンソールなどのツールを使用して、アクセスに関するデータを蓄積・分析する「アクセス解析」などがあります。
また、WebサイトやWeb広告などで複数のテストパターンを用意し、それぞれ一定期間運用してからアクセス数・コンバージョン数などの結果を比較する「ABテスト」も、よく用いられる定量調査のひとつです。
UXリサーチ 3種類の進め方
UXリサーチの進め方には、大きく分けて「探索的リサーチ」「検証的リサーチ」「スモールリサーチ」の3種類があります。商品の企画・開発など、段階ごとに必要な内容を調べられる適切なリサーチを選んで実施します。
探索的リサーチ
探索的リサーチは、どのような課題があるかを発見するためのリサーチです。新商品の企画段階では、その課題や解決方法が明確になっていないため、探索的リサーチを行います。
探索的リサーチには、前述の「ユーザーインタビュー」と「アンケート」のほか、資料や文献などから知りたい情報を収集し分析する「デスクリサーチ」、価値や機能などが似ている既存の競合商品を調査し分析する「競合分析」などがあります。
ユーザーの情報を調べ、これまで気づいていなかったニーズを新しく発見することで、新商品の企画における課題や解決方法などの仮説を立てることが可能です。
検証的リサーチ
検証的リサーチは、課題や解決方法が明確になっているときに行うリサーチです。探索型リサーチを活用して立てた仮説を検証するときにも使用されます。新商品の開発段階において、解決方法などの仮説を自分たちで立てた場合に、その仮説が有効かどうかを検証的リサーチで調べることが可能です。
課題の解決方法が具体的に決まっていない場合には、解決方法を書き出し、分かりやすく視覚化したものの反応を確認する「コンセプトテスト」を行います。解決方法をもとにした試作品が完成している場合には、試作品を実際にユーザーに使用してもらう「ユーザビリティテスト」の実施が最適です。また、前述の「ABテスト」や「アクセス解析」なども検証的リサーチとして用いられます。
開発段階では、仮説を立てて課題の解決方法を実施し検証することで、商品の改善が可能です。検証・改善は、一度だけでなく何度か繰り返し行うことで、より精度を上げていく必要があります。
スモールリサーチ
スモールリサーチは、他部署の人や自分の家族・友人など身近な人に行うリサーチです。試作品を身近な相手に使ってもらい、そのフィードバックを聞くリサーチ方法や、1人に30分ヒアリングを行う、エンドユーザーの担当者に聞くなどの方法などがあります。
スモールリサーチは時間や予算をかけず手軽に始められる手法のため、面倒な準備や許可などが不要で、すぐに実施することが可能です。ほかのリサーチ方法とは異なり、一部の意見のみを確認する方法ゆえリサーチ結果の質は高くありませんが、スピーディーにリサーチを行いたい場合などに適しています。
UXリサーチの手順
UXリサーチは、「状況理解」「目的の明確化」「手法・進め方の決定」「調査実施」「データ分析」「評価・活用」の手順で行います。プロジェクトの状況を最初に理解してから、リサーチを進めていきましょう。
1.状況理解
状況理解は、ユーザーが感じている課題やユーザーニーズなど、現在の状況を把握するプロセスです。これらの現状を理解してから、リサーチしなければならない内容を絞っていきます。
2.目的の明確化
リサーチを行う場合、時間やコストがかかります。何をどう調べたいのか、目的を明確にしないままリサーチを行うと、必要な結果が得られず時間やコストを無駄にするおそれがあるため、目的を明確にして効果的にリサーチを行うことが大切です。
3.手法・進め方の決定
このプロセスでは、目的を求めるためにどのリサーチ手法を使用すべきか検討し、適切な手法を決定します。また、手法の組み合わせやUXリサーチを実施するタイミング、進め方なども決めて手順を設計します。
4.調査実施
事前に決定しておいた内容に基づき、リサーチを実施します。このプロセスで得たデータをもとに分析するため、よりユーザーニーズに即した改善を図るためにも、充分な量のデータを収集する必要があります。
5.データ分析
調査で充分なデータを収集できたら、次はデータの分析を行います。数値データは結果分析がしやすいですが、定性データはその内容を解釈しなければなりません。客観的な見方で正確に分析することが大切です。
6.評価・活用
分析結果から現状を評価し、仮説を立てて改善方法を立案・実行します。分析が適切に行われているほど、よりよい改善方法を立てられます。うまく仮説が立てられない場合には、分析から修正することも効果的です。
UXリサーチを行う上での注意点
UXリサーチを行う場合には、正しく活用するために誘導的なリサーチにならないよう注意しなければなりません。ユーザー体験が自然な状況で行える場合、その調査結果は有効に活用できますが、リサーチが誘導的に行われていたり、自身の考察を反映させてしまったりすると正しい結果が出ないため、評価などに活用ができません。
また、リサーチは継続的に実施する必要があります。外部環境やユーザーは変化するため、一度のリサーチ結果だけでは正しいユーザーニーズを把握できません。UXリサーチによる評価・改善は、PDCAサイクルを繰り返して改善効果を高めることが大切です。分析結果を改善に活かすためにも、継続的にリサーチを行うよう心がけましょう。
まとめ
UXリサーチは、UXデザインに向けてユーザー体験を調査することです。UXリサーチには、定性調査と定量調査の2種類に分類される、さまざまなリサーチ手法があります。目的に応じた手法を選んでデータ収集・分析を行うことで、適切な改善方法の立案が可能となります。また、継続的なUXリサーチでPDCAを繰り返し、商品・サービスの最適化につなげられます。
ユーザーとのやり取りが中心となるコンタクトセンターにおいても、サービス品質につながるユーザー体験の向上には、UXリサーチの実施が効果的です。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ実践してみてはいかがでしょうか。
- TOPIC:
- トレンド
- 関連キーワード:
- CX(カスタマーエクスペリエンス)