顧客体験、いわゆるCX(カスタマーエクスペリエンス)に対する意識は随分以前から高まりを見せておりました。
その動きを決定付けたのが新型コロナウィルスの影響です。
そして「after コロナ」、「with コロナ」と言われる今後も重要視され続けることでしょう。
その1つの手段として、パーソラナイズによってユーザー一人ひとりに寄り添ったマーケティング戦略があります。
今回はWebパーソナライズドツールの運用を行っているスタッフの体験談を元に「パーソナライズとはなにか」「パーソナライズを運用するために必要な視点」についてご紹介します。
パーソナライズとは何か?なぜ必要なのか?
パーソナライズとは、データベースに蓄積されたユーザーの属性や行動履歴をもとに、一人ひとりのニーズを予測し、それにそった商品やサービスの提供、キャンペーンやオファー(広告)でCX(カスタマーエクスペリエンス)の向上を図るマーケティング手法です。
同じ属性、過去の履歴から、その方のその時々あった商品・サービス・情報のレコメンドを出し分けることを意味します。
ユーザーは自分が欲しかったものを手にできる、時には自分でも意識していなかったニーズが引き出され、非常に高い満足感を得られるのです。
消費行動、企業とユーザーとの接点がオフラインからオンライン、リアルからデジタルに大きく変化したことで、ユーザーの属性や行動履歴というデータを収集、蓄積できる量が格段に増えました。
このデータを活用し、ユーザーの好みや悩みを予測できるようになったのです。
サービス・商品がコモディティ化した現代のビジネス環境下ではマスマーケティングからOne to oneマーケティングにトレンドがシフトしています。
マスマーケティングで認知度を上げながら、パーソラナイズでユーザー一人ひとりに合わせた個別の対応をしていくという戦略をとる企業が多くあります。
デジタルシフトによりそれが以前より格段にしやすくなったため、One to oneマーケティングによる競争も加速しました。
パーソナライズとは企業がユーザーとつながり続け、LTVを最大化するための重要な戦略のひとつなのです。
パーソナライズを進めるステップと準備
それではパーソナライズを進めるステップと準備について見ていきましょう。
パーソナライズの戦略を進めるステップを5つに分けられます。
Step1 目的、ゴールを明確にする
↓
Step2 仮説を立てる
↓
Step3 セグメントに分ける
↓
Step4 セグメント毎にマーケティング施策を検討し実行する
↓
Step5 実績を検証しマーケティング施策を改善する
Step4で実行した施策の結果検証を元に、Step5で新たなマーケティング施策を検討し実行するというサイクルを継続して行います。
Step1~3は準備です。
Step1 目的、ゴールを明確にする
どのような戦略においても言えることですが、まずは「目的や目指すべきゴール、解決すべき課題」を明確にすることが必要です。
業績あげるためなのか(売上)、顧客満足度をあげるためなのか(品質)、継続的にサービス利用の促進なのか(継続率)、ブランディングのために自社サイトを多く見てもらいたいのか(サイト回遊率)など、社内でどの指標を最も重視するのかを明確にすることでパーソナライズ化の方向付けができるのです。
パーソナライズは「ユーザーそれぞれに最適化されたコンテンツを出し分ける手法」であり、分析手法ではないため、この時点でのゴールの明確化は、各企業のマーケターや責任者間で検討される戦略策定における「決め」となります。
Step2 仮説を立てる
目的やゴールが明確になったら、次は仮設を立てます。
仮説をたてるためにまず3C分析・4P分析を行う、ペルソナを設定する、カスタマージャーニー作成するという手法を用います。
ここでは、既存の実績、成果のデータも仮説検証の情報となります。
また、オンラインの情報のみを利用するのではなく、複合的(多面的)な情報を参考にすることでより精緻な仮説を立てることをおすすめします。
例えば、解約阻止の仮説を立てる際、コンタクトセンターに寄せられたユーザーの不満要素や解約理由を検証データとして活用することによって、解約の真因が見えてきます。
このように、コンタクトセンターに集まるVOC(Voice Of Customer)はとても有益で、仮説の精度が格段にあがります。
Step3 セグメントを分ける
セグメントとはターゲットを属性や好み・志向が似ているというような集団を意味します。
セグメントはキャンペーンやレコメンドなどマーケティング施策の展開を出し分ける軸となります。
集団を分ける際によく用いられるデータは年齢、性別、居住地、会員ランク、購入・訪問・利用回数、購入金額、購入回数、購入からの経過期間といったCRMシステム蓄積されたデータやサイトのアクセスログなどです。
お分かりのとおり、Step2で仮説を立てる際に用いたデータ項目の全てもしくは一部の項目を使います。
また、それらのデータから自社のターゲットに近い属性にスコアをつけ、そのスコアの積み上げセグメントを分ける手法もあります。
さて、ここで疑問となるのが、どこまでの粒度でセグメントを行うべきかです。
答えは目的によって異なります。
粒度を絞ることで確度の高いマーケティング施策の展開が測れます。一方で目的が認知向上であるならば、粒度が荒い方が多くのユーザーにリーチすることが可能です。
また、セグメントは施策の仮説検証を繰り返し深堀することで高度なターゲティングが実現可能となります。
マーケティング施策の立案、実行の進め方
セグメントが完了したら、いよいよマーケティング施策を立案し実行する段階に入ります。
Step4~5は施策の実行フェーズです。
Step4 セグメント毎にマーケティング施策を検討し実行する
どのセグメントにどのようなオファーやレコメンドを行うか、またそれをどうのようなタイミングで、どのような表現(クリエイティブ)で実行するかを検討ししていきます。
オファー内容は仮説を参考に戦略を立案し、社内で決定するのが一般的です。
最適なクリエイティブを見極めるための手法としてはABテストがあります。施策を走らせたあとに「セグメント(ターゲット)」や「クリエイティブの優劣」を検証する際用いることが一般的です。
Web上でのIMP(インプレッション=表示回数)、CTR(Click Through Rate=表示回数のうち広告がクリックされた率)、CVR(Conversion Rate=購入や契約など最終的なゴールに到達したユーザーの率)といった成果指標を比較し、優位性のある施策、クリエイティブを採用します。
Step5 実績を検証しマーケティング施策を改善する
実行した施策の結果は次の施策を検討する際の仮説検証データになります。
そのため、結果を検証することは最適化を図るために欠かせません。
最適な検証の頻度やタイミングはあるのでしょうか。
業種、業態、ユーザーの行動頻度などによって最適なタイミングは異なります。
どの業種、業態であっても高い頻度で見つつ、定例でも総合的に振り返るというやり方が最適化された運用と言えます。
組織上の報告のタイミング(週次・月次・四半期など)でしか検証を行わないという場合は要注意です。
報告自体を定例化することは良いのですが、報告するという目的のために検証を行うというような状況に陥ってしまい、施策状況の悪化やユーザーの行動変化に気付くタイミングが遅くなってしまうことがあります。
できるだけ高い頻度で検証し、ユーザーの行動に変化がある場合、施策の状況が仮説通りに進んでいない場合、目的と反れていると判断し、早期に改善策や施策の再検討を行うことが必要です。
パーソナライズドを進めるためのヒント
各Stepの手順やポイントからパーソナライズを進めるにあたって、特に抑えておいた方がよい3つのヒントが見えてきました。
- ユーザーを理解する
ユーザーを理解するためには「自分がユーザーになる」ということが一番の近道です。
様々なサービスを経験することで、どのようなポイントで購買意欲が湧いたか、感情が動いたかという「複数のユーザー観点」を養うことができます。
多用な観点をもって検証データを俯瞰してみると、自社に対して新たな示唆を得ることが可能です。
また、コンタクトセンターに寄せられるユーザーの生の声を参考にすることも「ユーザー理解」に有効な手段です。 - カスタマージャーニーを設計する
カスタマージャーニーはユーザー理解とデータを元に立てた仮説の集大成です。
ユーザーがサービスと出会い、どのような行動や心理状態で購入に至ったかを描くことで、施策の成功を左右します。 - チャネルの最適化
オンライン化が進むにつれて、ユーザーのニーズは加速度的に多様化されています。
そのため、自社のユーザーのために様々なチャネルを準備しておくことが求められます。
しかし、やみくもにチャネルを準備し、タッチポイントが増えてしまうとかえってユーザーの利便性を損なうことになります。
ユーザーの視点で必要なタッチポイントを見極め、その役割に沿ったチャネルを準備することで、はじめてユーザーの満足度やCX(顧客体験価値)の向上につながり、パーソナライズの戦略が効果を発揮するのです。
まとめ
ここまで述べてきたように、パーソナライズ化を進めるにあたって重要なのは「ユーザーをどこまで想像できているか、理解できているか」です。
しかし、それはオンラインに限らず、オフライン(電話や店舗などリアルの接点)でも同じことが言えます。
コンタクトセンターでも、ユーザーのことが想像できているオペレータはユーザーに最適な応対ができます。
そこで、ユーザーの理解を深めるために、カスタマージャーニーマップを策定してみるのはいかがでしょうか。
ユーザーはオンライン、オフラインを意識していません。カスタマージャーニーマップでユーザー行動を可視化することは、よりよいサービスを提供するためにWeb担当組織、コンタクトセンター双方にとって重要です。策定するための情報が整理できない、策定手法がわからないという場合は、弊社ベルシステム24が提供するコンサルティングサービスをご利用ください。
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