顧客満足度を定量化できる指標として注目を集めている「NPS®」。自社の顧客満足度の評価指標として、NPS®の導入を検討しているマーケティング部門担当者の方も多いことでしょう。そこで本記事では、企業における顧客満足度指標として存在感を増しているNPS®の概要や計算方法、改善活動に活かすポイントなどについて詳しく解説します。
NPS®とは
「NPS®」とは「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で、「企業やブランドに対し、どれくらいの信頼や愛着があるか」という顧客ロイヤルティを数値化した指標のことです。
もとはアメリカの大手コンサルティング会社でディレクターを務める、フレドリック・F・ライクヘルド氏が2003年に発表したもので、事業の成長率と高い相関関係にあるのが大きな特徴です。実際に、さまざまな業界のリーディングカンパニーがその有効性を証明したことで、一気に認知度を高めました。欧米の大手企業を中心に導入され、昨今では日本でも多くの企業が関心を寄せています。
顧客ロイヤリティは、「理性」と「感情」という2つの異なる側面によって複合的に形成されるものであり、これまで数値化は難しいとされてきました。しかし、NPS®という新たな指標の登場によって、顧客ロイヤリティの定量化が可能になりました。顧客満足度の向上により、長期的な収益増加にもつながるとして注目されています。
顧客満足度調査(CS)との違い
顧客ロイヤリティを測る指標として、これまで多く活用されてきたのが「顧客満足度調査(以下CS)」です。CSもNPS®も、顧客が自社の商品・サービスに満足しているかを評価するという流れは同じです。両者の違いは、企業の業績向上に貢献するか否かです。
先述のようにNPS®では、業績向上への有効性を示す調査結果も出ています。しかし、CSでは調査結果の満足度が高いからといって、必ずしもリピート購入や購入単価アップといった行動につながるとは限りません。この理由は2つあります。
まず、CSはあくまで現時点における評価のみが考慮されるのに対し、NPS®では長期的な視点での評価も考慮される点です。次に、CSで尺度となる「満足」度合いが包含する範囲は非常に幅広く、また曖昧である点もその要因に挙げられます。そのため、強い不満がなければ、再購入の意思がなくても、とりあえず「満足」と答えてしまう人も現れてしまうためです。
一方、NPS®の質問項目は、「ほかの人にこのブランドを薦めるか」など、この先の具体的な行動の有無を問いかける形となっており、長期的な業績向上に直結する設計がなされています。
NPS®の計算方法
NPS®の計算方法はとてもシンプルです。「あなたはこの企業(商品/サービス/ブランド)を友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか?」という質問について、11段階(0~10)で推奨度を評価します。
次に、アンケートの回答に応じて、顧客を「推奨者」「中立者」「批判者」の3タイプに分類します。9~10点を付けたグループは推奨者、7~8点を付けたグループは中立者、0~6点を付けたグループは批判者にそれぞれ分類されます。
そして、回答者全体に占める推奨者の割合から、批判者の割合を差し引いたものがNPS®値となります。単純な例を挙げると、100人の回答者のうち、推奨者30人・批判者50人だった場合は「30%-50%」となり、NPS®値は「-20」です。
NPS®の分析の注意ポイント
NPS®の分析においては、注意したいポイントもいくつかあります。実装の際は、次の点に十分留意しながら調査を進めましょう。
無回答者の対応
まず、NPS®では無回答者も顧客に含まれてしまう点に注意が必要です。顧客全員にアンケートを促しても、一定数は未回答の顧客も存在します。未回答の顧客は除外するのも手ですが、それが大多数を占める場合には考えものです。「サイレントマジョリティー」という言葉があるように、大半のもの言わぬ顧客の意見を無視してしまった結果、偏った分析を行ってしまう恐れがあります。
また、母集団が少ないほど誤差も大きくなります。統計学的な誤差を±5%以内に抑えるには、母集団については最低でも400サンプル以上が必要です。2000サンプル以上あれば、誤差を±2%以内に抑えられ、信頼性の高い数値が計測できるとされています。
法人向け調査での工夫
法人向け調査においては、目的や自社のサービス実態に合わせた工夫も必要です。例えば、自社が開発したシステムを導入してもらう際に実施する調査であれば、回答者は「利用者」ではなく「意思決定者」にするほうが適切です。この2者では、意思決定の仕方がそもそも異なるため、回答者の設定を誤ると正しい結果も出てきません。
また、回答を5分程度で完了できるものにするなど、相手に負担をかけない配慮も求められます。自由回答を設けて定性的な意見を聞くことも有用ですが、数は少なめにして「回答に協力してもらう」ことを優先すべきでしょう。仮に5分程度の調査であっても協力を拒まれる場合には、そもそもの関係性に課題があるかもしれません。
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NPS®を改善するための対策
ここでは、NPS®の調査結果を改善活動につなげるためのポイントを紹介します。具体的には次の2つの対策を実施しましょう。
NPS®に影響を与える要素の改善
NPS®調査では、最終スコアに影響を与える要因を正確に把握することが重要です。具体的には、カスタマージャーニーにおけるタッチポイントごとに満足度を調査し、NPS®との相関を分析しましょう。
例えば、店舗での接客を通じて商品を売る場合では、大きく「来店前」「買い物中」「購入後」の3フェーズを分け、さらにそれぞれでどのようなタッチポイントがあるかを洗い出しましょう。NPS®をそれぞれのスコアリングに活用することで、ボトルネックの把握が可能になります。性別や年齢など、セグメントごとに分析・比較してみることで、20代の女性の満足度が低いなど、従来の手法では曖昧になっていた細かな課題を発見できる場合もあります。
ボトルネックを現場に直接共有
要因を把握できたら、現場にも直接共有しましょう。本部からの調査結果として課題を指摘するのではなく、顧客からの生の声としてフィードバックすることが肝心です。なぜなら、顧客からのダイレクトな意見のほうが、現場のスタッフに響きやすいためです。ポジティブな意見は、スタッフのモチベーションアップを促します。ネガティブな意見であっても、顧客の実際の声ということであれば納得感が増し、改善意識も芽生えやすいでしょう。
共有後は、NPS®のスコア改善を現場での具体的な目標値に活用し、モニタリングしていきましょう。目標が明確であればスタッフも取り組みやすく、改善効果も可視化できます。現場での改善活動は、顧客体験の向上につながります。結果的に、リピート率や購入単価アップという形で実を結んでいくはずです。
関連記事:顧客満足度(CS)とは? 向上させる方法とそのポイントを徹底解説
まとめ
顧客満足度の向上は、競合他社との差別化を図るうえでとても重要な要素です。その点、測定方法がシンプルで、かつ競合他社との比較も簡単なNPS®は、多くの企業で取り入れやすい指標と言えます。リピート率や新規顧客増加につながる指標でもあるため、NPS®をモニタリングしていくことで、今後の業績や収益性の向上も見込めるでしょう。
NPS®は顧客とのさまざまなタッチポイントでのスコアリングに活用できますが、とりわけコールセンターでの接客は、まさにその重要な接点の1つです。コールセンターでの接客対応後に、NPS®を測る簡易アンケートを実施すれば、別途コストをかけることなく、より自然な流れでVOCを収集できます。
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*Net Promoter®およびNPS®、Predictive NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
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