近年、電話主体だったコンタクトセンターの形が変わりつつあります。メールやチャットなど、音声によらない顧客接点「ノンボイス」を導入する企業が多くなっています。本記事では、ノンボイスの意味や具体例、そして導入するメリット・デメリットを解説します。コンタクトセンターにおけるノンボイス化の意義を理解するために、ぜひご参考にしてください。
ノンボイスとは?
ノンボイスとは、コンタクトセンターなどのカスタマーサービスにおける電話以外の顧客対応手段です。英語では「Non Voice(音声ではない)」と表記します。ノンボイスの具体例は、メールやチャット、SNS、問い合わせフォームなどです。また、こうした音声以外で対応する窓口を設置することを「ノンボイス化」と言います。
ノンボイスの種類・提供チャネル
ノンボイスの主要な提供チャネルとしては、以下の5つが挙げられます。
メール:メールでのやりとりは比較的時間がかかるものの、詳細な説明に適しています。企業・顧客共に、自分の都合にあわせて受信メールの確認や返信ができるのもメリットです。
チャット:Webサイト上でリアルタイムにオペレーターと顧客がテキストをやりとりして問題解決に取り組む方法です。メールに比べて迅速な対応ができます。
問い合わせフォーム:Webサイト上に設置されたフォームから、顧客の問い合わせを受け付ける方法です。企業側がメールアドレスを公開する必要がない(迷惑メール対策になる)、Webサイトを訪問した顧客がスムーズに問い合わせできるなどの利点があります。
SMS(ショートメッセージ):顧客の電話番号へ短文を使って情報を提供する手法です。速やかな通知や確認作業に適しています。
SNS:LINEやX(旧Twitter)などのSNSプラットフォームを利用して顧客対応をする手法です。問い合わせ対応のほか、顧客の声を収集したり、企業側から積極的に情報発信したりするのにも役立ちます。
一口に「ノンボイス」と言っても、上記のように各チャネルの特性はそれぞれ異なっており、対応できる顧客のニーズも一様ではありません。そのため、電話も含めて各チャネルを並行して展開するのがおすすめです。
ノンボイス化が進む背景
コンタクトセンターのノンボイス化が進んでいる背景としては、スマートフォンおよびリモートワークの普及が関係しています。
スマートフォンの普及は、現代人の日常生活にメールやSNSによるテキストベースのコミュニケーションを浸透させました。これに伴い、特に若い世代では電話に苦手意識を持つ人が多くなり、「電話よりメールやチャットで対応してほしい」、あるいは「問い合わせ自体しないで済むようにFAQを充実させてほしい」などのニーズが高まっています。
また、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、コンタクトセンターでもリモートワークを導入する必要性が生じたこともノンボイス化が進んだ理由のひとつです。PBXなどの専用設備が必要な電話応対に比べ、メールやチャットによる応対はインターネット環境とPCさえあれば作業できます。感染症対策としてリモートワークを導入するために、従来の電話応対を縮小してノンボイス化を進める動きが活発になりました。
ノンボイスを導入する5つのメリット
上記のように、コンタクトセンターのノンボイス化は顧客のニーズや感染症対策という社会的要請に後押しされて広がりました。しかし、以下で紹介するように、ノンボイスの導入は、企業目線にとっても数多くのメリットがあります。
1. 人材不足を補える
第一に、ノンボイス化は人材不足対策として有効です。電話応対には多くのオペレーターが必要であり、育成にも時間とコストがかかります。加えて、クレーム対応などによるストレスが原因で、コンタクトセンターは高い離職率に悩まされがちです。
詳しくは後述しますが、ノンボイス化することで、業務の効率化や自動化を進めやすくなります。また、電話応対を減少させることで、オペレーターの心理的負担を減らし、離職率を改善させる効果も期待できます。このようにノンボイス化は、業務の省人化や離職率の減少につながり、結果として人材不足の解消をもたらします。
2. 業務を効率化できる
第二のメリットは業務効率化の促進です。電話応対の場合、顧客の用件を聞き出すだけでも時間がかかってしまいます。しかし、メールなどのノンボイスでは、顧客自身があらかじめ内容を整理して文章化しているため、迅速に問題の把握が可能です。対応の面でも、よくある問い合わせならば、テンプレート的な文章を送信するだけで完了できます。
また、ノンボイスならば複数の顧客対応を同時並行でこなしやすいのもメリットです。一部の問い合わせ対応をチャットボットに任せたり、FAQで顧客が問題を自己解決できるようにしたりすれば、さらにオペレーターが処理すべき問い合わせ件数自体を減らせるでしょう。
3. コスト削減効果を期待できる
上記のように業務効率化を進めることで、オペレーター業務は従来よりも少ない人員、少ない負担でこなせるようになります。その結果、オペレーターにかかる人件費を大幅に削減可能です。
ここで削減できる人件費とは給与だけではありません。オペレーターにかかる設備費、教育費、補充人員の採用コストなども同様です。これによってコア事業に投じる予算や人員を増やし、組織全体の成長をさらに加速できます。
4. 顧客対応を24時間おこなえる
24時間体制の顧客対応を実現できるのもノンボイスの大きなメリットです。顧客対応を電話のみに頼る場合、人的リソースやコストの観点から24時間対応をするのは困難です。しかし、メールや問い合わせフォームなら、オペレーターが不在でも顧客からの問い合わせを受け付けられます。
さらに、チャットボットを導入すれば、よくある質問程度なら即時の回答も可能です。24時間対応を実現して顧客の利便性を上げることは、顧客満足度を向上させたり、機会損失を防いだりするために役立ちます。
5. 顧客に対し積極的な情報提供が可能となる
ノンボイスを導入することで、顧客に対してより積極的に情報提供できるようになるのもメリットです。たとえば、問い合わせフォームには、顧客に対してメルマガやプロモーションの送信許可を求めるオプションを設けることができます。
問い合わせメールに対する返信の末尾に、商品ページへ誘導するURLを記載することも可能です。このように、ノンボイス化は積極的な情報提供を可能にし、ビジネスチャンスを広げる手段にもなります。
ノンボイスのデメリット
上記のようなメリットがある一方で、ノンボイスによる顧客対応にはデメリットもあります。
まず、テキストベースのノンボイスでは、表情や声の抑揚などの非言語的情報が伝わりません。そのため、特にクレーム対応のような感情的にデリケートなシーンでは、お互いに誤解が生じたり、顧客の不満を十分に解消できなかったりするリスクがあります。
また、一部の顧客層、特にITに不慣れな高齢層は、ノンボイスよりも従来の電話対応を好む人が少なくありません。そのため、ノンボイス化に伴って電話窓口を撤廃してしまうと、こうした顧客層の満足度を下げる恐れがあります。
ノンボイスを導入する際の3つの注意点
上記のようなデメリットを回避し、ノンボイスの導入効果を最大化するにはどうしたらいいのでしょうか。以下では、そのための注意点を3つ紹介します。
1. 顧客に合わせたチャネルを構築すること
「若年層ならSNSやチャット」、「高齢層なら電話やシンプルな問い合わせフォーム」というように、自社の顧客層にあわせて導入すべきチャネルを検討しましょう。顧客の特性に合わない手段を選択すると、そのチャネルの利用が促進されず、結果としてノンボイス化のメリットを享受できなくなるリスクがあります。
2. FAQなどを充実させること
多くの顧客は、企業へ問い合わせするより先に自己解決を試みます。そのため、FAQやヘルプページなどのセルフサービスを充実させることも重要です。これにより、顧客の自己解決を促進し、ノンボイスや電話対応の件数自体を減らせます。
3. 電話対応の窓口も残すこと
すでに述べたように、顧客の中には電話対応を好む人もいます。また、緊急時にはメールの返信を待っていられない心境になることも少なくありません。そのため、ノンボイスを導入したからといって、電話窓口を完全に撤廃しないようにしましょう。問い合わせ手段が複数あること自体が、顧客の利便性向上につながります。
まとめ
ノンボイスとは、電話以外の方法による顧客対応を意味します。ノンボイス化を推進することで、業務効率化、顧客満足度の向上、人材不足の解消、コスト削減など数多くのメリットを得られます。
ただし、ノンボイス化は電話応対を完全に不要にするわけではありません。重要なのは、電話中心だった従来の体制を見直し、電話窓口を多種多様なチャネルの中のひとつとして再定義することです。電話・メール・チャット・SNS・FAQなど、困ったときの選択肢を多く用意しておくことで、顧客の多様なニーズに柔軟に応え、顧客満足度を上げることができます。
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