近年では、人員削減や人材不足を課題として掲げる企業が数多くあります。ヘルプデスク業務においてもアウトソーシングが進んでおり、将来性を不安視する声が少なくありません。この記事では、ヘルプデスクの経験を活かして目指せる職種や、将来を不安に感じないためのキャリアパスについて紹介します。
ヘルプデスクの需要
ヘルプデスクの仕事には、システムの使い方からトラブル対応まで幅広い知識が求められます。電話やメール、チャットなどを使ってやり取りするため、技術的な知識以外にコミュニケーション能力も必要とする職業です。近年では、間接部門である情報システム部門の人員削減や人材不足に伴い、ヘルプデスクをアウトソーシングする企業が増えています。また、将来的にAIに取って代わるのではないかと不安視されるようになっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
現在、情報システム部門が担当する仕事の中で、マニュアル対応できる業務はヘルプデスクに任せている企業が多くあります。これは、企業がクラウドやビッグデータといった新しい技術・ITサービスを活用するようになったことと深く関係しています。IT業界の成長に伴い、情報システム部門の仕事内容が変化したことで、ヘルプデスクの需要が高まっているのです。
未経験者にも優しいヘルプデスクの業務内容
ヘルプデスクの仕事は、社内と社外の2タイプに分けられます。社内ヘルプデスクを担当する場合、自社の従業員を対象としてトラブルの対応・改善作業を行います。業務内容は多岐に渡りますが、未経験者でも積極的な採用を行っているのが社内ヘルプデスクです。システムの構築は担当外であってもシステムについて深く理解する必要があり、操作方法の教示やエラー対応ができなければなりません。中小企業などのケースでは、社内SEとの明確な区分がない場合もあります。
一方、社外ヘルプデスクの業務は顧客対応がメインです。社内ヘルプデスクと違って対応範囲が明確なため、多くはマニュアルを用いて対応します。マニュアル外の質問をされたときには、スーパーバイザー(SV)と呼ばれるエンジニアや管理者にエスカレーションする場合がほとんどです。そのため通常では、あらゆる問い合わせに対応できるまでの知識やスキルまでは求められません。
このような理由から、社外ヘルプデスクは、社内ヘルプデスクと比べて未経験者でも採用されやすいとされています。
ヘルプデスクに将来性はないのか?3つの理由
近年、ヘルプデスクの将来性を不安視する声を耳にしますが、その懸念要素とはいったいどのようなものなのでしょうか。ここでは、3つの理由を取り上げて解説します。
スキルが身につかない
ヘルプデスクの将来性を危惧する理由の1つとして、専門性の高いスキルが身に着かないことが挙げられます。ヘルプデスクでは、トラブル対応を行う際のマニュアルを準備しているケースが多いでしょう。そのため、基本的にはマニュアルの流れに沿って対応するだけの作業となり、独自のアイデアで解決策を見出す機会がありません。
もちろん臨機応変な対応は、ヘルプデスクとして重要なスキルです。企業によっては高い対応力が求められるケースもありますが、一般ユーザーからの問い合わせ対応では、一部のイレギュラーケースを除いて技術力を必要としない場合がほとんどです。
ルーティンワークをこなしながらコミュニケーション能力を身に着けられたとしても、スキルが身に着かないことに不安に感じる人は少なくないでしょう。サーバーの構築やプログラミングの専門知識を獲得できないまま、数年経過するといったケースも実際にあるようです。このような理由で、「将来が厳しくなるのではないか」と感じてしまう人は多いのです。
年収が上がりづらく非正規雇用者が多い
年収の上がりづらさや正規雇用の需要が少ないことから、将来に不安を感じるという声も耳にします。ヘルプデスクの年収が低い傾向にある理由は、企業が非正規雇用として採用するケースが多いからです。これは、企業側が人件費を抑える目的でヘルプデスクを非正規雇用としているため、不安を感じる要因となっているのです。非正規雇用の場合、いつまで契約を更新できるのかもわからないといった不安要素も重なるでしょう。
ヘルプデスク業務は、パソコンやソフト、OA機器、ネットワークの知識など、一定の専門性を必要とはしても専門性がそこまで高くありません。年収の上がりにくさや正社員ポジションの少なさも、このような理由によるものだと考えられます。
AIに置き換わる可能性がある
冒頭で少し触れたように、「AIが発展すると仕事がなくなるかもしれない」と心配を抱く人も少なくありません。これは、ヘルプデスクに限らず、定型業務を担当する人ならば誰もが不安に感じるのではないでしょうか。特にヘルプデスクはAIに置き換えやすいとされていて、AIの精度が今よりさらに向上すれば、人材ニーズがなくなってしまうのではないかと懸念されています。
実際、すでにチャットボットを部分的に活用している企業もあり、今後AIの活躍する場はますます増えていくと想定されています。また、人材ニーズの低下に影響している別の理由として挙げられるのがインターネットの普及です。インターネット上ではさまざまな情報が飛び交っているため、ヘルプデスクに問い合わせをしなくても、インターネット検索により必要な情報が手に入り、ユーザーが自己解決できるからです。
今後IT技術のさらなる進化により、ヘルプデスクの価値が薄れる可能性も十分に考えられます。しかし、定型的でない複雑な質問には人でないと対応できないため、すべてのヘルプデスク業務をAIに置き換えるのは不可能なのです。
ヘルプデスクのスキルを活かすキャリアチェンジ
ここまで、ヘルプデスクの将来性について、少しネガティブな側面に触れてきました。しかし、ヘルプデスク業務で培ったスキルは、十分キャリアチェンジに活かせます。以下で、ヘルプデスク経験者がキャリアチェンジしやすい職種を紹介します。
社内SEへのキャリアチェンジ
社内SEは、高い専門性を必要とする職種です。社内ネットワークの構築や運用管理業務に関連する幅広い業務を担うため、深い知識と高い技術力が求められます。現在、企業の情報システム部門で社内ヘルプデスクを担当していて、社内SEへのキャリアチェンジを志願しているのであれば「開発・ネットワーク・サーバー関連の仕事もしたい」と、上司に相談してみるとよいでしょう。すぐに実現されなくてもその向上心が評価され、機会が巡ってくる可能性もあります。社内SEを目指して、基本情報技術者試験の勉強を始めるのもおすすめです。
ネットワークエンジニアへのキャリアチェンジ
ヘルプデスクでは、「インターネットがつながらない」といったネットワーク障害に対応する機会が多くあります。このような経験を重ねて得た知識を活用し、ネットワークエンジニアへのキャリアチェンジも視野に入れてみましょう。将来的にネットワークエンジニアを目指すのであれば、ベンダー資格である技術認定試験「CCNA」の勉強に取り組みながら、ネットワークの知識を深めておくとよいでしょう。
サーバーエンジニアへのキャリアチェンジ
ヘルプデスク業務の一環として、サーバーの運用管理を含むケースも多くあります。そのような経験があれば、サーバーエンジニアへのキャリアチェンジを目指すことも可能です。サーバーの導入をはじめ、OSやアプリケーションのインストール、導入後の運用保守作業などを担います。ただし、サーバーエンジニアがするべき仕事内容は、企業によって異なります。
広範に知識を深めたいのであれば、日々の業務に加えてサーバー関連資格の勉強もしておくとよいでしょう。サーバーには「Webサーバー」「データベースサーバー」「アプリケーションサーバー」といった種類があり、それぞれ必要な知識とスキルが異なります。
プログラマーへのキャリアチェンジ
ヘルプデスクを経験して、プログラマーやSEへのステップアップを考える人も少なくないでしょう。例えば、Excelでマクロを組む際に、VBAで簡単なプログラムを組むのが苦にならない人であれば、プログラマーはキャリアチェンジにおすすめの選択肢だと言えます。
最近では、プログラミングが学べるサービスが多く展開されています。初心者向けの「Progate」「paizaラーニング」といった学習コンテンツの利用や、スクールに通うなどして実際に手を動かして勉強してみましょう。
英語を伴うテクニカルサポートへのキャリアチェンジ
テクニカルサポートは、ハードウェアやソフトウェアのトラブルを解決するという点でヘルプデスクと同様です。場合によっては、顧客先まで出向いてトラブルに対応するケースもあるため、より高度な技術力が求められます。特に英語が堪能であれば、キャリアチェンジは成功させやすいでしょう。現在では、グローバル展開を進める企業が増えており、外資系企業とともにニーズは増加傾向にあります。
まとめ
このように、ヘルプデスクの需要はあるものの、高い専門性を求められる職種ではないため、将来的にはAIなどに置き換えられる可能性があるのも事実です。しかし、現在ヘルプデスクで働いている人も将来を悲観する必要はありません。なぜならば、ヘルプデスクで培ったスキルや知識をキャリアチェンジに活かすことは十分可能なのです。
ここで紹介したように、有効なキャリアチェンジはいくつもあります。不足している知識を身に着け、より専門性の高い分野でスキルを磨いてみてはいかがでしょうか。
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