放棄呼は、コンタクトセンターが解消すべき重要な課題のひとつです。本記事では、放棄呼の基礎知識、チャットツール・IVR・WFMなどのシステムを活用した際に期待できるメリット、放棄呼対策をとらなかった場合のリスクについて詳しく解説します。コンタクトセンターの業務改善に向けて、施策に取り組む際の参考にしてください。
放棄呼(ほうきこ)とは?
「放棄呼(ほうきこ)」とは、「放棄されたコール」を意味する言葉です。英語で「Abandoned Calls(アバンダン・コール)」と呼ばれることもあります。放棄呼には、オペレーターへつながる前にユーザー側が電話を切ってしまうパターンと、システム側で切ってしまう2つのパターンがあります。コール全体に対する放棄呼の割合(放棄呼率)は、電話のつながりやすさを分析する際の指標として活用することも可能です。
あふれ呼・待ち呼との違い
「あふれ呼」とは「対応からあふれたコール」のことです。オペレーターに「つながっていない状態」を示す「待ち呼」も同様です。放棄呼は「切れてしまった状態」を指し、多くのケースであふれ呼・待ち呼の先にあります。あふれ呼は、顧客からのコールが回線数を上回るピーク時や、回線数が十分であっても人手不足で応対しきれないときに発生します。顧客がいつ電話をかけてもオペレーターにつながらない状態が続くと、顧客満足度の低下だけでなく、購買意欲の低下などさまざまなリスクを引き起こしかねません。
コンタクトセンターでの放棄呼への有効な対策4選
近年では、放棄呼の削減に有用なITツールも数多く登場しています。コンタクトセンター業務の効率化と顧客満足度アップを目指し、自社に適したシステムを活用することも前向きに検討してみましょう。
1. チャットツールの導入
まず、自社サイトにチャットツールを設置する方法が挙げられます。顧客をチャットツールへ誘導すれば、コール数の削減が見込めます。有人対応を必要とする場面でも、チャットであれば、1人の従業員が複数の顧客と同時にやり取りすることが可能です。スムーズに問題が解決できれば、顧客のファン化につながります。
また、AIチャットボットは、24時間365日の顧客対応を可能にするツールです。人手を介さず複数の顧客に対応できる環境を整えれば、放棄呼の大幅な削減が実現します。オペレーターは人の手を必要とする業務だけに注力できるため、業務効率化の促進にも有用です。
チャットツールを導入するメリットは、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:コールセンターがチャットボットを導入するべき8つのメリット
2. IVR(自動音声応答機能)の活用
IVR機能(自動音声応答機能)とは、コンタクトセンターが混みあっている際に、自動音声につないで応答する機能のことです。業務時間外でも対応可能となるため、どの時間帯であっても放棄呼を生まず、機会損失を防止するメリットがあります。営業時間内であれば、問い合わせの内容ごとに顧客を振り分けることも可能です。IVRの活用は、業務効率化による生産性アップに大きく貢献します。
関連記事:IVRの詳細については「こちら」を参考にしてください。
3. FAQの設置
ウェブサイト上にFAQを設置するのも有効な手段です。よくある質問とその回答をまとめ、検索できるようにしておけば、顧客自身で問題を解決できるようになります。これまでのように、オペレーターが似たような質問に繰り返し答える必要もありません。コール数の削減は対応品質の向上に結びつき、顧客満足度の向上や企業のイメージアップなど、多様なメリットが享受できます。
FAQシステムを導入するメリットは、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:コールセンターにFAQシステムを導入するメリットについて解説!
4. WFM(ワークフォース・マネジメント)の導入
WFM(ワークフォース・マネジメント)システムは、コンタクトセンター内でのオペレーターの配置やシフト管理を支援します。曜日や時間帯ごとのコール数といったデータに基づき、精度の高い人員配置を可能にします。管理者の負担軽減に有用なツールです。
WFMの詳細については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:コンタクトセンターにおけるWFMの役割と最適な人員配置
放棄呼対策をせず放置してしまった場合のリスク
放棄呼対策としてシステムの導入を検討しているものの、コストに見合うだけの価値が得られるかどうか、不安に感じるかもしれません。しかし、放棄呼率を改善しないまま放置した場合、さまざまなリスクに直面する恐れがあります。
リスク1. 顧客満足度が低下する
顧客は、何らかの問題を解決したいという目的で電話をかけています。そのような心境にある顧客にとって、問題が解決しないまま過ぎていく時間は無駄でしかなく、ストレスや不満が蓄積すると想定されます。仮に後日電話がつながり、問題が無事に解決できたとしても、満足感につながるどころか不満が解消されないかもしれません。
リスク2. 企業イメージが低下する
コンタクトセンターに電話がつながらず、対応してもらえなかった顧客は、その企業に対して「顧客対応を重視していない」という印象を抱く可能性が高まります。「あの会社のコールセンターは対応が悪い」といった口コミや風評が広がってしまった場合、企業イメージの低下を引き起こす可能性があります。
リスク3. 機会損失につながる
サービスや商品に対する顧客からのクレームや要望は、商品の改善につながる貴重な情報です。放棄呼により顧客の声を取りこぼしてしまえば、企業は有益な情報を得る機会を失います。十分なアフターサポートが受けられない企業だと顧客が判断すれば、今後、購入してもらえない可能性は高くなります。また放棄呼が、サービス・商品の契約や購入に関心を持つ顧客からの電話であった場合、機会損失にもつながりかねません。
リスク4. オペレーターの負荷が増える
放棄呼やあふれ呼が多くなると顧客のストレスは高まります。そのため、最終的に電話がつながったとしても、厳しい対応を強いられるケースは珍しくありません。難易度の高い顧客対応は、オペレーターにかかる負荷も大きくなります。また、業務によっては放棄呼に対するコールバックも必要なため、さらにストレスを抱えやすくなります。
リスク5. オペレーターの離職率が増加する
放棄呼が多い職場では、常に仕事に追われるだけでなく、顧客の厳しい態度に接する機会も多くなりがちです。このような状況が常態化してしまえば、オペレーターはストレスフルな状態に陥りやすくなります。気持ちに余裕を持って業務に取り組むことが難しくなれば、応対品質は低下します。また、ミスも起こりやすくなるなど、職場環境が悪化するかもしれません。オペレーターの離職を防止するためにも、早急な対策が必要です。
コールセンターとは?コンタクトセンターとの違いと役割、仕事内容
企業と顧客が直接コミュニケーションをとるコンタクトセンター。多様化する連絡手段や顧客の価値観の変化から重要性が増しています。こちらでは、コンタクトセンターの概要や必要な機能、コールセンターとの違いなどについて紹介します。
まとめ
コンタクトセンターの放棄呼は、機会損失や企業イメージの低下、オペレーターの離職など、さまざまなリスクを引き起こします。オペレーター不足が叫ばれている昨今、放棄呼率の改善に有用なツールを導入し、業務効率化を実現する企業が増えています。コンタクトセンターの業務効率化には、チャットツール、IVR(自動音声応答機能)、FAQシステム、WFM(ワークフォース・マネジメント)などの導入が有効です。受電率のアップを実現し、顧客満足度の向上やオペレーターにかかる負荷を軽減したいと考えているのなら、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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