顧客に直接応対するコールセンターは企業の顔ともいえます。そのコールセンターが抱える課題が、顧客を待たせてしまうことです。待ち時間が長いと応答数が減るのはもちろん、顧客満足度の低下を招いてしまいます。本記事では、コールセンターでの待ち時間を減らし、応答率を上げる5つの方法を具体的に解説します。
コールセンターで待ち時間が発生する原因
コールセンターに入電があった際、スムーズにつなぐことができず、顧客を待たせてしまうことがあります。この状態が待ち呼数(あふれ呼)です。
待ち時間が発生する原因は、オペレーターの人員不足やスキル不足、新商品発売などによる入電数急増、クレームなど問い合わせ以外の電話の増加です。
顧客からすれば、問い合わせや手続きをしたいので電話をかけたものの、電話がなかなかつながらず長時間待たされることは大きなストレスです。そのためコールセンターにとって待ち呼数は、速やかに解決すべき課題です。
コールセンターの平均待ち時間はどのくらい?
コールセンターに対するおもな不満は、長く待たされることだと言われています。
顧客がコールセンターへ電話をかけて、オペレーターにつながるまで待っている時間の平均を平均応答速度(Average Speed of Answer、以下ASA)と呼んでいます。コールセンターの業務内容によってばらつきはありますが、一般的なASAは20秒程度といわれています。ASAの目標を設定するなら「20秒以内」が望ましいでしょう。
ただし、この数値はあくまで「平均時間」です。平均20秒以内でも、全ての電話にスムーズに応対できているとは限りません。数コールでオペレーターにつながる顧客もいれば、数分待ってようやくつながる顧客もいる可能性に留意する必要があります。
コールセンターの待ち時間増加による損失
顧客にストレスを感じさせる待ち時間が増加すると、企業はどのような損失を被るのでしょうか。
顧客満足度が低下する
顧客は「製品やサービスの○○について知りたい」「変更やキャンセルがしたい」など、なんらかのニーズがあってコールセンターに電話をかけてきます。
それにもかかわらず、オペレーターにつながるまで長時間待たされてしまうのでは、顧客満足度の低下は免れません。待たされたことで、商品購入を考えていた顧客が、取り止めることもありえるのです。
しかも電話1本に対する不満だけでなく、商品やブランドイメージそのもの、ひいては企業全体への不満・不安につながっていく恐れがあります。
オペレーターの負担が増える
待ち時間が長いことでオペレーターのストレスも増加します。待ち時間が長くなると顧客からのクレームが増えます。顧客と電話をつないだ瞬間、大声で苦情を言われることも珍しくありません。鳴りやまない電話の応対に追われて休憩をとれないことすらあります。
また、待ち時間が長い状況が続く場合、スーパーバイザー(SV)などのコールセンター管理者が、スキルの高いオペレーターに、意図的に入電を振りわけることがあります。この目的は、短時間で的確な顧客応対ができるオペレーターに電話を優先的に回すことで、待ち時間を長くさせないことです。
管理者としてコールセンターを円滑に運営するために必要な判断ではありますが、絶え間なく応対をするオペレーターにとっては大きな負担です。日々のストレスが積み重なり、離職の原因となることも少なくありません。
コールセンターの待ち時間を減らす5つの方法
コールセンターの待ち時間が長いことは、企業にとって大きな損失です。待ち時間を減らし、応答率を上げるための具体的な方法を紹介します。
オペレーターを増員する・教育する
待ち時間が長くなる原因として、コールセンターのキャパシティを超えていることが挙げられます。
この問題のもっとも簡単な解決策は、対応可能なオペレーターの増員です。入電数の多い時間帯に人員を多めに配置するなど、メリハリをつけることも必要でしょう。ただし、採用人数を増やして最初から教育するには、人件費などのコストがかさんでしまいます。
あまりコストをかけずにすでにある人材を活用するために、オペレーターの再教育も必要です。多様なニーズを即座に把握して柔軟な顧客対応ができるよう、改めて研修などを行いましょう。
コールセンターシステムを導入する
オペレーターには顧客に応対するほか、受発信のための画面操作や顧客の応対履歴検索、内容の入力といった付帯業務が発生します。従来、顧客からの電話を受けた際は、オペレーターが顧客から電話番号などを聞いて検索し、顧客情報を表示させる作業が必要でした。このような付帯業務にかける時間を短縮できれば、待ち時間が減ることが予想されます。
業務を合理化するには、CRM(Customer Relationship Management)やCTI(Computer Telephony Integration)などの機能をもつコールセンターシステムの導入が有効です。
CRMシステムは顧客の個人情報や購買履歴、問い合わせやクレームを行ったコンタクト情報を一元管理します。これにより、必要な情報をスムーズに取りだせるようになります。また、コンピューターと電話を統合するCTIとCRMを連携させれば、さらに業務が効率化されます。入電と同時に顧客情報がオペレーターのPC画面に自動的に表示されますし、電話発信はPC画面上をクリックするだけです。
オペレーターは顧客情報に即座にアクセスして、状況をスムーズに把握できるので、素早く的確な顧客応対が実現します。
コールセンター以外のサービスに誘導する
入電数そのものを減らす工夫をすれば、オペレーターを増員しなくても、待ち時間の短縮が期待できます。
比較的簡単な疑問については、顧客自身による解決を促すため、顧客からよく受ける質問とその回答をまとめたFAQやチャットサービスなどのツールを導入します。チャットサービスとは、会話方式でサポートを行うWeb接客ツールです。
これらのツールを導入すれば、24時間対応が可能になりますし、顧客自身で解決できない場合はオペレーターに引き継ぐなど、多段階的活用もできます。
平均通話時間を減らす
1回の電話にかける通話時間を短くすることで対応回数が増えれば業務効率がアップし、待ち時間の短縮につながります。
顧客満足度を高めるためには、対応にある程度の時間が必要です。しかし価値を生まない長い通話は、なくさなければなりません。そのためにはオペレーターのスキル向上や意識改革が必要です。たとえば「無駄な会話をなくす」「顧客が理解しにくいような専門用語を使わない」ことを徹底させます。
また、通話時間が長いことは丁寧な応対という側面がある一方、顧客満足度低下のリスクがあることも認識させましょう。ただし、時間短縮を意識するあまり、早口になる、顧客を急かす、説明が不十分になるといった応対は避けるよう注意が必要です。
顧客に待ち時間をアナウンスする
顧客がコールセンターに電話をかけた際、待ち時間のアナウンスを入れる方法もあります。
思っていた以上に待ち時間が長いと、あきらめて電話を切る顧客もいます。その分、他の顧客に早く電話がつながるので、全体としての平均待ち時間が短縮されるのです。
待ち時間をアナウンスする際は、実際の予想より少し長めの時間を知らせた方が、顧客満足につながるといわれています。これは最初に聞いた待ち時間より早めに電話がつながれば、心情的に好ましく受け止める傾向があるためと考えられます。
まとめ
コールセンターで顧客を長く待たせてしまうと、顧客満足度の低下を招きます。待ち時間を短縮するには、オペレーターを増員するほか、CRMシステム、FAQおよびチャットツールを導入した効率的なコールセンター運営が不可欠です。
このようなツールの活用とあわせて、短い時間でも過不足ない対応ができるようになれば、顧客から支持を得られる企業へと成長できるでしょう。
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