近年、テレワークや働き方改革の推進に従い、電話回線の交換機をクラウド化した「クラウドPBX」のシェアが拡大しています。本記事では、クラウドPBXの概要や今後の市場動向予測、シェアが拡大している理由について詳しく解説します。
クラウドPBXの市場動向
近年、クラウドPBXが市場シェアを伸ばしています。米パラレルス社の調査では、2011年時点でホスト型PBXの市場シェアは1%でした。ただ、2012年は従業員10人以上をもつ企業のうち、約30%がホスト型PBXを追加したいとしており、2011年の1%から急成長が予測されます。情報通信ネットワーク産業協会が2021年12月に発表した調査でも、従来型のPBXは市場規模が減少しており、クラウドPBXのシェア拡大が推測できます。
一般的に、クラウドサービスの利用は増加傾向にあります。総務省が2023年5月に発表した調査では、クラウドサービスを導入している企業は7割に達しています。
テレワーク制度などのスムーズな運用には、通信環境の整備が欠かせません。今後もクラウドPBXはさらに広まっていくと予想されます。
参考「2011年版 Parallels SMB Cloud InsightsTM 日本版」
参考「SMB Cloud InsightsTM」
参考「通信機器中期需要予測[2021-2026年度]」
参考「令和4年通信利用動向調査」
クラウドPBXのシェアが拡大している背景
クラウドPBXのシェアが急速に増えている背景には、どのような要因があるのでしょうか。主な理由としては以下の6点が挙げられます。
理由1:UCサービスが普及しているため
UCサービスとは「Unified Communication」の略で、電話やメール、チャットなどさまざまな通信手段を統合したサービスのことです。代表的な例としてはコンタクトセンターが挙げられます。
UCサービスを利用すれば、PCやスマホ、電話などの通信ツールを相互連携できるため、連絡関係の作業効率化が可能です。クラウドPBXとの連携も行いやすいため、最近はUCサービスの機能を備えたクラウドPBXも増えています。クラウドPBXのシェア急拡大の背景には、このUCサービスの普及が大きく影響しています。
理由2:テレワークが拡大しているため
もうひとつの理由としては、テレワークの普及が考えられます。コロナ禍の感染対策や働き方改革の影響で、自宅やカフェなどで仕事をする機会も増えていますが、その場合、通信環境の整備が欠かせません。
クラウドPBXを導入すれば、自宅や出先から会社宛ての電話に出られ、社外からでも内線を使用できます。また、クラウドPBXには通話状況を記録する機能もあるため、テレワークでの従業員の稼働状況を把握しやすくなります。
理由3:コストを削減できるため
自社でPBXを設置するより導入・運用コストを抑えられるのも、クラウドPBXのメリットです。従来のPBXは、設置に多額の初期費用と時間がかかるうえ、耐用年数の都合上、数年に一度は買い替える必要がありました。
一方、クラウドPBXはベンダーがあらかじめ環境を整えているためすぐに利用でき、自社で一から設置するのに比べ、初期費用を抑えられます。また、メンテナンスやシステムのアップデートもベンダーが行うため、運用コストも削減できます。
理由4:スマホ利用が可能と利便性が高いため
従来のPBXは固定電話に限定されていましたが、クラウドPBXではPCやスマホをビジネスフォンとして活用できます。新たに端末を準備する必要がないためコストを抑えられるほか、顧客電話帳共有機能や内線機能、通話録音機能といったビジネスフォンに備わった機能を、PCやスマホでそのまま利用できるのもメリットです。
会社にかかってきた電話に、PCやスマートフォンで対応できることは、テレワークなど場所にこだわらない近年の働き方にもマッチしています。
理由5:BCP対策が進んでいるため
コロナ禍により、多くの企業においてBCP対策の意識が高まっています。大同生命保険株式会社が公開した中小企業経営者へのアンケート、「大同生命サーベイ(2022年6月調査)」によれば、「BCPを策定している」と回答した企業は全体の62%にのぼりました。2021年の調査では42%だったものが、わずか1年で大幅な増加となっています。
クラウドPBXは、BCP対策としても有効です。クラウドPBXであれば、従業員がプライベート利用している端末をオフィスの電話として利用でき、災害時でも通常業務を遂行できます。また、社内や取引先と緊急連絡をとらなくてはいけないシーンにも、クラウドPBXが役立ちます。
理由6:クラウドサービス自体が普及したため
クラウドサービスはインターネットを介することから、当初は情報漏洩などが不安視されがちでした。しかし、技術面の進歩により、セキュリティの信頼性が高くなり、機能性に優れたサービスが増えています。
クラウドを利用する企業が7割に達しているといったデータからも分かるように、以前と比べて導入に対する心理的なハードルは下がってきています。
とくに大企業がクラウドサービスを導入し活用するようになったことで、クラウドPBXがより注目され、シェアを拡大しているとも考えられます。大企業が積極的に導入を進めているサービスであれば、そのほかの企業にとっても安心して取り入れられるからです。
このように近年は、セキュリティ面の信頼感や多くのメリットから、クラウドPBXの導入に踏み切ろうとする企業が増えてきています。
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クラウドPBXの今後の市場予測
現在、テレワークの増加やDXにより、多くの企業でクラウドPBXの導入が進んでいます。
2021年に公開された株式会社グローバルインフォメーションの市場予測によると、2022年には55億米ドルだったクラウドPBXの市場規模は、2030年末までには683億米ドルに達する見込みとのことです。2020年~2030年の年平均成長率は14%と、驚異的な数字が予想されています。
市場が成長するにつれ、日本でも多様なベンダーがクラウドPBXに参入するようになってきました。人気ランキングなどでは、大手通信会社からビジネスフォンの販売業者まで、多彩な企業が名を連ねます。また、クラウドPBXの中でも大企業向けや個人向け、コールセンター向けなど細分化も始まっています。
今後もクラウドPBXはめざましい成長を続けていくはずです。さらにPBXだけでなく、さまざまな機能がひとつに集約された「統合プラットフォーム製品」の需要も拡大していくと考えられています。
参考「世界のクラウドPBX市場:考察と予測 (2028年まで)」
参考「クラウドPBXの世界市場 - 業界分析、市場規模、シェア、成長率、動向、予測:2020年~2030年」
まとめ
コロナ禍を経て、企業には働き方や働く場所の多様性が求められています。テレワークを推奨する企業もめずらしくありません。
クラウドPBXは、どこにいてもスマホやPCをビジネスフォンとして使えます。初期費用や運用コストも従来のPBXより安く抑えられるため、今後もテレワークを進める企業の需要が高まるはずです。また、クラウド型のPBXは、災害時の影響を受けにくいため、オフィスが被災した場合でもスマホを使用して電話業務を遂行できます。
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