インサイドセールスとは? 意味と導入メリット、ポイントを解説

 2020.11.16  2024.04.24

客先に訪問してコミュニケーション・商談を重ねる、「足で稼ぐ営業」のことをフィールドセールスと呼びます。最近ではこのフィールドセールスを「従来型の営業」と称することが多くなり、その背景にはインサイドセールスの普及があります。

インサイドセールスとは電話やEメールなどのICT(情報通信技術)を活用し、客先に直接訪問せずに展開する営業のことです。「内勤型営業」とも呼ばれ、その起源は米国にあります。米国は広大な土地を有しており、直接訪問して営業するスタイルに非効率性がありました。東海岸から西海岸への距離は直線にして4,000キロメートル、北海道(稚内)から沖縄(那覇)までの直線距離が2,500キロメートルなのでその規模が窺い知れるのではないでしょうか。また、同一国内でありながら時差がある状況は日本ではあまり想像できない状態かもしれません。多くの米国企業ではコストを極力かけずに、効率よく営業活動を実施するにはどうすればよいのか?と至極当然の考えに至り、その結果生まれたのがインサイドセールスというわけです。

本稿では日本企業にとって今後重要視されるインサイドセールスとは何なのか、その基本や導入ポイントを紹介していきます。

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インサイドセールスとは何なのか?

インサイドセールスとフィールドセールスの大きな違いは「内勤か」「外勤か」にありますが、実はそれだけではありません。それはフィールドセールスが積極的に顧客にアプローチする「ハンター型」の営業であるのに対し、インサイドセールスでは顧客のニーズ醸成を目的として長期的な関係を築くような「ファーマー型」の営業であるという側面もあります。

インサイドセールスでは、顧客へのヒアリングを通して潜在ニーズを引き出すことや、課題を認識してもらうこと、検討のフェーズを引き上げること、といった「リードナーチャリング(見込み顧客の育成)」の役割を持っています。リードナーチャリングは成約率を高められることから、インサイドセールスにおいては重要なポジションを占めています。

また、インサイドセールスでは顧客を訪問する移動時間が不要であるため、より多くの顧客とコミュニケーションを取れます。電話で商談を行う場合、商談時間を60分と設定すると1日に最大で7〜8件以上のアポイントが可能です。一方のフィールドセールスではアポイント1件に対する時間を60分に設定したとしても、1日のうちに実施できる商談数は移動などを考慮する必要があるため、多くても4〜5件程度しか接触できません。両者を1週間で比較するとその差は歴然です。インサイドセールスでは互いの緊張をほぐすためのアイスブレイクもほとんど不要であるため、いきなり本題に突入することが許されるといったメリットもあります。

従来型の営業との違い

従来型の営業は、見込み顧客の獲得から商談までのすべての業務を担当します。近年は営業業務をインサイドセールスとフィールドセールスに分けた分業型で行うことが多くなってきています。インサイドセールスは、電話やメールなどの非対面でのコミュニケーションにより、移動することなく営業活動を行います。商談のアポイントを取るだけでなく、見込み顧客へヒアリングすることで顧客の要望や課題を把握し、情報提供やフォローなどを行いながら成約の確度を高めていきます

一方、分業におけるフィールドセールスは、インサイドセールスで受注確度を高めた顧客を優先的に訪問し、受注や提案などを行うことが主な役割です。インサイドセールスとフィールドセールスを分けた分業型の業務形態によって、効率のよい営業活動が可能となるでしょう。

テレアポとの違い

インサイドセールスとテレアポは混同されやすいですが、異なる業務です。テレアポは電話にてアポイントを獲得することに限定されているのに対して、インサイドセールスはテレアポを含めた広範な営業活動を担います。インサイドセールスにとってテレアポは、アポイントを獲得する手段のひとつでしかなく、業務範囲は顧客のニーズや課題のヒアリングからフォロー、商談設定など多岐にわたります。

同じアポイントを獲得するにしても、インサイドセールスの場合は成約率を高めるためのリードナーチャリングを念頭に置く必要があります。顧客との関係性が重要であることから、強引にアポイントを獲得することは避けなければなりません。一方で、テレアポがヒアリングを丁寧に行いすぎると架電数が下がってしまうため、インサイドセールスとの違いを明確にしておくことが必要です。

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インサイドセールスの種類

インサイドセールスにはSDRとBDRの2種類があり、それぞれアプローチする対象が異なります。自社の状況や対象顧客に合わせて使い分けることが重要です。

SDR(Sales Development Representative)

SDRは反響型の営業手法であり、広告やチラシ、ダイレクトメールなどによる宣伝によって、問い合わせや資料請求などからの反応が得られた顧客へアプローチするものです。問い合わせや資料請求があれば、電話やメールにて対応することで成約につなげます。顧客からの反響があるということは、商品やサービスに興味を持っている可能性が高いため、成約に至るまでのプロセスを効率的に行えます。

顧客の商品やサービスに対する関心があるうちにアプローチする必要があるため、迅速な対応が求められます。効率の良い営業手法ではあるものの、広告やチラシなどによって顧客に認知される必要があるため、マーケティングにも力を入れることが必要です。

BDR(Business Development Representative)

BDRは新規開拓型の営業手法であり、自社を認知していない顧客へ積極的にアプローチするものです。顧客の会社情報を調べ、代表電話やキーパーソンへのメールまたは手紙などで連絡を取ることで営業していきます。ひとつの企業へのアプローチに時間がかかることから、営業コストは大きくなりやすい傾向にあります。そのため、大きな売上や利益の得られそうな顧客を選別してアプローチしていかなければなりません。

また、初期段階は顧客との関係性がないため、綿密な戦略を立ててアプローチしなければ担当者まで辿り着くのが難しいです。担当者が興味を持ちそうな話題を準備するなどの工夫が求められます。

インサイドセールスが注目される背景

インサイドセールスが注目されるようになった理由には、サブスクリプションビジネスの増加や顧客の購買行動の変化、コミュニケーションツールの進化が挙げられます。営業活動を取り巻く環境が変わってきたことにより、インサイドセールスが効果的な手法であることが認知されてきているのです。

サブスクリプションビジネスの増加

日本企業でインサイドセールスが普及したきっかけとなった大きな要因が、サブスクリプションビジネスの拡大です。サブスクリプションとは定期購買型のライセンスによってサービスを展開するビジネスモデルであり、利用者数や契約期間に応じて料金を徴収するものです。利用者にとっては初期投資の安さや解約のしやすさなどのメリットがあることから急速に市場が拡大し、現在では多くの企業がサブスクリプションサービスを提供するようになりました。

しかしサブスクリプションビジネスは従来のフィールドセールスでは採算が取りづらく、また契約や解約が行われる頻度が高いために業務量が膨大になりやすいことから、効率の良いSDR型のインサイドセールスが広く導入されるようになりました。

購買行動の変化

顧客の購買行動が変化していることも、インサイドセールスが注目されている要因として挙げられます。消費者は、以前のように受動的に情報を受け取るのではなく、気になる商品やサービスをインターネットで自ら検索して情報を得るというスタイルに購買行動が変化しています。類似の商品やサービスについての情報もインターネットに掲載されているため、認知から比較・検討までの購買プロセスを、営業に頼らず自力で行えるようになりました。このような購買行動の変化に対応するため、企業は広告の出稿やオウンドメディアによる情報発信など、インターネット上での顧客との接点を増やすことが求められています。

コミュニケーションツールの進化

営業におけるコミュニケーションツールは、メールやSNS、ビデオチャットの他に、MA、SFA、CRMといった効率化を目的としたものがあります。

MA(マーケティングオートメーション)ツールは見込み顧客を管理するツールであり、顧客のオンライン上での行動を可視化してスコアリングを行い、見込み顧客の選別をサポートします。SFA(営業支援システム)は、顧客情報の管理や受注予測などが可能です。CRM(顧客関係管理)ツールは、商品・サービスに関する情報の配信や問い合わせへの対応、イベントへの招待といった作業を適切なタイミングで行うためのものです。

BDR型のインサイドセールスは、見込み客との関係性を構築することに時間がかかることから、企業での導入が難しいとされてきました。この課題は、効率化を可能にするツールの進化によって実現する可能性が高まったのです。

インサイドセールスを導入するメリット・デメリット

インサイドセールスによって得られるメリットは大きいですが、一方でデメリットも存在します。両方を把握した上で適切に運用することにより、売上の向上につながります。

メリット

はじめにメリットについて解説します。

商談化率や成約率が向上する

インサイドセールスの導入によって、商談化率や成約率の向上が見込めます。これまでの営業活動では、電話でのアポ取りや訪問を繰り返して商談につなげてきましたが、担当者までたどり着けなかったり、途中で断られてしまったりと、商談に至るまでに時間がかかりました。

購買意欲の高まった顧客をフィールドセールスへ引き継ぐ手法を採ることにより、優先的に営業をかけられるようになるため、商談につながりやすくなる可能性が上がるのです。受注確度の高い顧客に営業対象を絞り込む手法で商談に集中しやすくなり、成約率の向上が期待できるでしょう。

営業担当者の負担が減らせる

インサイドセールスの導入によって、営業活動の分業が可能となり、営業担当者にかかる負担を軽減できます。従来の営業では、顧客への問い合わせへの回答やアポ取り、情報提供などのフォローから新規顧客の開拓までを単独で行うことが多く、負担は相当なものでした。インサイドセールスに検討中の顧客や既存顧客への情報提供などのフォローやアポ取りなどの業務を分散することで、1人の営業にかかる負担を減らせます。

また、インサイドセールスの段階でリードナーチャリングを行い、購買意欲が高まってきた顧客情報を選別した上で営業担当者へ引き継ぐことで、営業担当者は商談の準備に集中できます。既存顧客や休眠顧客に効率良くアプローチをかけられるため、これまで負担の大きかった新規顧客の開拓を減らしてでも売上の向上が見込めるのです。

営業管理が容易になる

インサイドセールスでは顧客へのアプローチした内容などを詳細に記録することにより、営業管理がしやすくなります。顧客へのアプローチを把握していないと、同じ顧客へ何度も架電したり、過去に配布したカタログを提供してしまったりと、非効率が生じる上に顧客の心証を悪くしてしまいかねません。架電履歴やアプローチ内容などの情報を記録することで顧客情報の把握が容易になり、同じアプローチをかけてしまうという失敗を防ぐことが可能です。また、顧客を放置してしまうこともなくなり、顧客の流出を防げます。営業活動を数値データとして可視化することで、評価や改善活動もしやすくなります。

デメリット

次にデメリットについてもご紹介します。

営業チーム内のコミュニケーション負荷が高まる

これまで1人で行っていた営業活動を分業することで、情報共有のためのコミュニケーションを密に取る必要が出てきます。マーケティングからインサイドセールス、インサイドセールスから営業担当者へと情報を適切に引き継いで共有しなければなりません。営業担当者はインサイドセールスからの情報を基にして活動を行うため、社内でのコミュニケーションの重要性が増すのです。社内での仕組み作りが必要になるなど、これまで以上に情報共有のコストをかける必要があります

インサイドセールス独自のノウハウが必要

インサイドセールスはフィールドセールスとは異なり、メールや電話が主なコミュニケーションツールとなります。業務内容も訪問営業ではなく、問い合わせへの回答や情報提供といった顧客のフォローから、DMやトークスクリプトの作成など、内勤業務がメインです。

そのため、従来の営業活動とはアプローチの仕方も変わり、異なるノウハウが必要です。インサイドセールスを行うにはシステムやツールの導入も必要となるため、検討の時間や導入・運用にかかるコストがかさむ可能性があるのです。

インサイドセールス導入のフロー

インサイドセールスを運用するには、営業プロセスの再構築や担当者の決定など、組織とシステムの両面において刷新する必要があります。インサイドセールスを導入するために必要となる主な施策を、順を追って解説します。

営業プロセスの再構築

インサイドセールスの導入にあたっては、まず営業プロセスを可視化し、成果の出やすいモデルとして再構築する必要があります。営業プロセスを構築せずにインサイドセールスを導入したとしても、提供する情報が求めているものではなかったり、タイミングにずれが生じたりというように、非効率となってしまいかねません。

営業担当者の中から最も優れた成績を出している人を選んでヒアリングを行い、成果の出るプロセスを構築していきます。成果を上げている営業担当者のアプローチは、自社の商材と顧客にマッチしていることを示しているので、そのプロセスを標準化の参考にした上で構築する手法が効果的です。

インサイドセールスの担当分野の決定

インサイドセールス担当者がどの業務を引き受けるのかを決めます。取り扱っている商材やサービス、ターゲットとなる顧客などの要素が異なるため、インサイドセールスが担当する業務は組織によって違いがあるのです。

リードの獲得から商談の設定までといった一部分なのか、成約まで一貫して行うのか、といったことも決める必要があります。リードの獲得が弱かったり、見込み顧客へのフォローまで手が回らなかったりといったように、どの部分がネックとなっているのかを把握し、その分野をインサイドセールスに移管することで効率化が図れるでしょう。

組織設計・人員確保

インサイドセールスの導入にあたっては、組織設計や人員の確保も行う必要があります。

組織設計では、インサイドセールスを設置する部署を決めます。営業部やマーケティング部など既存の部署に設置するか、またはインサイドセールス部署を新設するのかを選択しなければなりません。同様に、人材確保も既存の人材を流用する方法と新規採用する方法があります。

いずれの方法を取る場合でも、ノウハウのない状態から始めなければならないため、さまざまな障害が発生する恐れがあります。そのような懸念を避けるには、インサイドセールス代行サービスに外注する選択肢が有効かもしれません。

インサイドセールス代行サービスについては、下記のようなサービスがあるのでぜひ参考にしてください。
ベルシステム24とRevComm、営業のDXをワンストップで支援するデータ活用型「インサイドセールス代行サービス」提供開始

ITツールの選定とシステム設計

インサイドセールスの業務には、MAやSFA、CRMなどのツールが欠かせません。ツールを用いることで、リードの獲得から顧客情報の一元管理、リードナーチャリングなど、インサイドセールスの業務を自動化できます。顧客ごとに適切なタイミングで必要な情報を自動で提供したり、問い合わせへ対応したりと、顧客とのコミュニケーションの自動化も可能です。スコアリング機能が搭載されたツールなら、見込み顧客にアプローチする優先順位もひと目で把握できるため、効率の向上も見込めます。

これらのITツールを選定する際には、必要な機能が搭載されているか、使いやすい設計となっているか、といったことをインサイドセールスおよび営業担当者にヒアリングしつつ進める必要があるでしょう。

顧客オペレーションのルール作り

インサイドセールスによって購買意欲を高めた顧客に対して、アプローチする基準を明確にしておかなくてはなりません。顧客の購買意欲が高まっていたとしても、どの程度高まっていればアプローチをかけるのかを明確にしなければ、営業担当者は正しく優先順位をつけられず、商機を逃してしまうことも考えられます。

また、インサイドセールスから引き継ぐ情報があいまいだと、営業担当者によって解釈が異なり、一貫した対応ができません。あらかじめ引き継ぎや情報管理のルールを策定することで、適切なタイミングでアプローチがかけられ、一貫した対応ができるようになります。収集する情報の抜け漏れを防いだり、担当者への引き継ぎをスムーズに行ったりするためには、業務プロセスの定義も必要です。

インサイドセールスを効率よく行うポイント

インサイドセールスを効率よく行うには、複数のチャネルでコンタクトを取ることや、長期的なKPIを設定することがポイントになります。アプローチ数を最大化しつつ、顧客との関係性を深めていく必要があるのです。

複数のチャネルから顧客へアプローチできるようにする

インサイドセールスにおいてアプローチ数を増やすためには、電話やメールなど、複数のチャネルを用いることが効果的です。
電話の場合、架電したタイミングで顧客が出られる状況でなければ用件を伝えられません。メールであれば顧客が確認できるタイミングで読めるため、用件を伝えられる可能性が高まるでしょう。開封されたかどうかの確認もできます。また、メールの配信を自動設定にすることで、より多くの顧客へアプローチできます

長期的な視点を持つ

インサイドセールスの目的は、顧客とコミュニケーションを継続的に取ることで信頼関係を築くことです。インサイドセールスのKPIを商談の設定数など短期的なものにすると、単なるテレアポ業務に留まってしまい、関係性を深めることにつながりません。

あくまでも関係性の向上が目的であるため、問い合わせから回答までのスピードや、顧客の反響といった満足度にKPIを設定する必要があります。インサイドセールスでは長期的な視点で戦略を立てることが求められるのです。

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まとめ

インサイドセールスは、顧客への情報提供やフォローを適切なタイミングで行うことで満足度や信頼を高めていく内勤型の営業手法です。従来のフィールドセールスと比べて効率よく営業を行えることや、必要なツールが提供されていることから、近年注目されています。

インサイドセールスの導入によって、これまでフィールドセールスが1人でこなしていた膨大な業務を分業できるようになります。また、徹底した顧客管理により成約率が高まり、売上の向上も見込めるでしょう。インサイドセールスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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高美 由果理
高美 由果理
ベルシステム24に入社後、新聞社、スポーツメーカー、保険、通販業務などのコンタクトセンター運用を経験。その後新規事業開発推進部に異動し、BtoBイベント施策立案や実行、アウトバウンド専門センター企画及び立ち上げを推進。その後コンサルティング部に異動し、センター統合業務コンサルティング、音声認識ツール導入、テキストマイニング、チャットボット導入PRJなどを多数実施。
最近ではコールリーズン分析を起点としたオムニチャネル戦略や、商品・サービス改善などのPRJ全体管理を行っている。
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