2022年に登場したAIサービス「ChatGPT」は、その革新的な性能により大きな衝撃を世界に与えました。今や多くの企業がChatGPTをビジネスに取り入れるために模索し始めています。本記事では、そもそもChatGPTとは何かという基本的な知識をはじめ、ビジネスにおいてChatGPTができることや企業の活用事例を紹介します。
ChatGPTとは
ChatGPTは、アメリカのOpenAIによって開発された対話型の人工知能(AI)です。ChatGPTはインターネット上に存在する大量のテキストデータを機械学習することで、人間のような自然な会話ができます。また、この機械学習の結果として、幅広いトピックについて自然な文章でユーザーの質問に答えることが可能です。具体的には、文章の作成、情報の検索、特定の課題への回答や助言などがChatGPTの一般的な用途として挙げられます。
コミュニケーションできるAIツールといえば、Amazonの「Alexa」やAppleの「Siri」など、これまでにも存在しましたが、ChatGPTは言葉の自然さと対応範囲の広さが群を抜いており、2022年末の公開以来、次世代のAIとして非常に注目を集めるようになりました。あまりに高性能なので、AIによって人間の仕事が奪われるのではないかという懸念が現実的な問題として論じられるようになったほどです。
ChatGPTの基本的な機能は無料で利用できますが、「GPT-4」という最新の高性能モデルを利用するには、有料プラン(ChatGPT plus)への加入が必要です。2023年5月時点で、その月額料金は20ドルに設定されています。
GPT Plusに加入すると、サーバーが混雑しているときでもChatGPTへ優先的にアクセスすることが可能です。また、GPT PlusではWebブラウジングやプラグインなどの機能も提供されています。
企業におけるChatGPTの活用方法とメリット
上記のような特徴を備えたChatGPTは、企業でもさまざまな業務で活用可能です。現状では業務効率化や実務のサポートに用いられることが多いですが、今後普及するにつれ、その用途はさらに多様化していくと考えられます。以下では、企業におけるChatGPTの活用方法やそのメリットを詳しく解説します。
1. アイデア出し
ChatGPTは、商品開発やマーケティングキャンペーンなど、さまざまなテーマに関するアイデア出しに利用可能です。たとえば、「カフェで4月に提供する季節感のある新メニューのアイデアを提案して」とChatGPTに入力すれば、季節感を意識したカフェメニューを瞬時にいくつも提案してくれます。
ブレインストーミングは人間同士でも行えますが、数多くのアイデアがそろうまでには時間がかかりますし、発想に行き詰まることも多いです。その点、ChatGPTにアイデアを生成してもらえれば時短になる上、従来の思考パターンを越えた新しい視点やアプローチを得ることも期待できます。
2. チャットボット
自然な言葉で多様な質問に答えられるChatGPTは、チャットボットとして利用するのにも最適です。現状だとChatGPTは、時折もっともらしいウソ(誤回答)をついてしまうことが懸念されますが、回答で利用するデータソースを指定すれば、そのリスクを大幅に軽減できます。
コールセンターでは、オペレーターの人手不足やオペレーターごとの回答精度のバラツキなどが問題になりがちです。その点、ChatGPTを活用すれば、これらの問題を改善しつつ、24時間対応の高品質なカスタマーサポートを実現できます。
3. 秘書業務
ChatGPTは秘書が行うような業務もサポート可能です。具体的には会議のアジェンダの作成や、議事録の要約などです。さらに、書類作成の際に文章やフォーマットのたたき台を提案してもらう、既存文章の校正なども可能です。
このようにドキュメント関連の作業を、ChatGPTにサポートしてもらうことで、多くの業務負担が軽減でき、疑似的に秘書を雇ったような効果を得られます。
4. コーディングのサポート
ChatGPTはプログラミングのコードを記述することも可能です。PythonやJavaScriptなどのプログラミング言語を指定し、実現したい処理を伝えれば、それに対応したコードを記述してくれます。また、Excelのマクロを書くことも可能です。
ChatGPTが提案するコードは完璧ではないことも多々ありますが、ひな形としては十分に役立ちます。たとえば、Webサイトの作成作業なども大幅に効率化可能です。さらにChatGPTは既存のコードに潜む問題の指摘もできるので、コードのチェックをしたい場合にも活用できます。
5. メルマガやメールの作成
文章の作成能力に秀でたChatGPTは、メルマガの作成にも有効です。たとえば、メルマガのテーマや目的を入力すると、それに基づいた文章を生成してくれます。文字数や読者のペルソナなど、細かい要件を指定していけば、よりニーズに近い文章の作成が可能です。
メールの作成に関しても、ChatGPTは役に立ちます。たとえば、「取引先に納期の遅れを謝罪するメールを書いて」という指示を出せば、その要求に即してビジネスメールにふさわしい体裁の文章をすぐに作成してくれます。これによって文面の作成にかかる時間や労力を大きく軽減できます。
6. 翻訳
ChatGPTは、日本語を含む多くの言語に対応しています。そのため、英語から日本語、あるいはその逆方向の翻訳なども可能です。これにより、海外企業とのビジネスや情報収集などで必要となる翻訳作業を効率化できます。
翻訳に際しては、「どの言語からどの言語へ翻訳してほしいのか」「その原文が何に関する文章なのか」などをあらかじめ伝えておくと、そのニーズや文脈に即した翻訳文を得られやすいです。多言語に対応しているChatGPTは外国語学習のサポーターとしても利用され始めています。
ChatGPTを活用する企業の事例
以上のように、ChatGPTは企業におけるさまざまな業務に活用可能です。実際に、一部の企業や自治体ではすでに導入が始まっており、その流れは今後ますます広がっていくものと予想されます。以下では、企業におけるChatGPTの活用事例を紹介します。
大手教育支援サービス会社
ある大手教育支援サービス会社は、グループ社員(約1万5,000人)を対象にChatGPTと同等の機能を持つ自社専用AIを提供し、社内業務のアシスタントとして活用しています。実際に利用する中でChatGPTへの理解を深めると共に、AIによる「社内手続き案内の代替」をはじめ、「英作文の添削」「高校生の進路選択の支援」など、将来的な施策へつながる可能性を探るのがその狙いです。同社では、この専用AIを社員のみが使えるクローズドなクラウド上で提供することで、情報漏えいなどへの対策も行っています。
大手総合電気機器メーカー
ある大手総合電気機器メーカーでは、DXの一環としてChatGPTベースの社内システムを開発しました。同社ではすでに一部グループ企業がChatGPTの活用を進めていましたが、それを全社向けに広げてルール整備などを施しました。同社では、仮説のアイデア出しや、情報の収集・整理、プログラム開発支援のほか、データ分析やマーケティングの分野などでもChatGPTの活用を進めており、広範な領域で業務効率化を図っています。
まとめ
ChatGPTは企業における多種多様な業務を劇的に改善する可能性を秘めています。現状では誤回答もあるなど問題も散見されますが、適切に注意して使用すれば、大きなメリットを得ることが可能です。本記事を参考に、自社のビジネスにChatGPTを取り入れる方法を検討してみてはいかがでしょうか。
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