近年、ChatGPTなどに代表される「生成AI」は社会の多岐にわたる分野で活用が広がっています。しかし、生成AIは従来のAIと何が違い、どんなことに活用できるのでしょうか。本記事では、生成AIの特徴や種類、活用方法について解説します。この記事を読むことで、生成AIに関する一般的な疑問を解消し、ビジネスで活用するためのヒントを得られます。
生成AI(ジェネレーティブAI)とは深層学習によって新たなデータを創出するもの
生成AIとは、深層学習技術を駆使して、新たなデータを自ら生み出せる人工知能を指します。このAIは、既存のデータパターンを学習し、その知識を基に新たな文章・音声・画像などのデータを創り出すことが可能です。ここでは、生成AIの特徴について、従来の識別系AIとの比較を通して解説します。
従来のAI(識別系AI)との違い1: 学習方法
識別系AIとは、特定のデータセットから正解と不正解を学習し、新たに入力されたデータがどちらのカテゴリーに属するかを区別できる人工知能です。識別系AIは主に「教師あり学習」、生成AIは「深層学習(ディープラーニング)」を通して、その機能を獲得します。
従来のAI(識別系AI)は「教師あり学習」
「教師あり学習」とは、入力データと正解を一緒に学ばせる手法です。識別系AIは、正解あるいは不正解とラベリングされた大量のデータ(教師データ)を学習することを通して、正解/不正解を区別する能力を習得します。たとえば、顔認証や指紋認証などはその典型です。あらかじめ登録しておいた顔写真や指紋画像と照合し、本人かどうかを判定します。このように識別系AIは、新たに入力されたと既存データが合致するか否かは判断できますが、新たな情報を自ら創出することはありません。
生成AIは「深層学習」
生成AIは「深層学習」といわれる比較的新しい方法でデータを学習します。深層学習は、人間の脳の神経網を模倣したニューラルネットワークに基づいており、入力データの複雑なパターンや特徴をAI自身が自動で学習できるのが特長です。深層学習を利用すれば、自然言語や音声、画像といった非構造化データもAIに効率的に学習させられます。生成AIが人間のように文章や画像、動画などのクリエイティブなコンテンツを生成できるのは、まさにこの深層学習の効果です。
従来のAI(識別系AI)との違い2. データの活用方法
上記の学習方法の違いから、生成AIと従来のAIでは、その活用方法にも次のような違いが生じます。
従来のAI(識別系AI)は「既存のデータの識別」ができる
識別系AIは、製品の検品作業、医療画像に基づく異常箇所の診断、顔認証、迷惑メールのフィルタリング、市場の需要予測など、数多くの用途に活用されています。しかし、データの分類や識別を行うことは得意としても、新たな情報の生成はできません。
生成AIはビッグデータを用いて「0から1」を生み出せる
一方で生成AIは、単にデータを分類するのではなく、膨大なデータ群(ビッグデータ)を基に、存在しない新たな情報やアイデアを創出できます。たとえば、テキスト生成においては、プロンプト(ユーザーの指示)に基づいて多様な内容・形式・文体の文章を書き上げられますし、画像生成では新たな画像やデザインを描けます。しかも、この生成に際して、生成AIは、人間が指示しきれていない情報も自分で補完することが可能です。
生成AIの機能は、RAG(検索拡張生成)という仕組みによってさらに高まります。RAGとは、生成AIに外部情報を参照させることで、回答の質を高める技術です。たとえば、特定の製品情報が格納された社内のデータベースを検索させれば、その製品に関する問い合わせに対して、より正確な回答を返せるようになります。
生成AIの種類と活用パターン
生成AIは、得意とするデータの種類によって分類可能です。特に主要なものとしては、テキスト生成AIと画像生成AIが挙げられます。それぞれの概要と主な用途は以下の通りです。
テキスト生成AI:文章の新規作成や添削、翻訳など
人間のように自然な文章を作成できる能力を持つのがテキスト生成AIの特長です。このAIは文章の新規作成や添削、翻訳などを得意とします。たとえば、メールや記事などの下書き、カスタマーサポートでの顧客対応、コードの記述やチェック、ブレインストーミングの相手など、多岐にわたる用途で活用可能です。
テキスト生成AIを活用することで、「言葉」に関わる多様な業務を自動化し、業務効率や生産性の向上、ヒューマンエラーの削減などが期待できます。その一方で、「間違った情報や不自然な表現が含まれる可能性がある」「入力したデータが基で秘匿性が高い情報の漏洩が起こる恐れがある」など、いくつかの懸念点があるのも事実です。したがって、その利用にあたっては生成された情報の正確さを人間の目でもチェックしたり、情報の取り扱いなどに関して社内でルールを共有したりすることが重要です。
画像生成AI:単語、プロンプトをもとにイメージを出力
画像生成AIは、プロンプトに基づき、写真やイラストを自動生成するAIです。たとえば、広告やエンターテイメント業界でのキャンペーンビジュアルやイメージキャラクターの作成、デザイン業界ではビジュアライズされたプレゼンテーション資料の作成など、クリエイティブな分野での利用が進んでいます。
従来、こうしたデザインやイラストレーションの仕事は、独自のスキルを持つ限られた人材にしかできませんでした。しかし、画像生成AIの登場により、誰もが簡単に高品質なビジュアルコンテンツを生成できるようになりました。
一方で、現状の画像生成AIが生成した画像は、「手の形が不自然」など違和感があることも少なくありません。さらに問題なのは、生成した画像が他者の著作権やその他の知的財産権を侵害してしまうリスクがある点です。そのため、特に商用利用する場合、生成した画像の品質や著作権侵害のリスクに対しては、慎重なチェックが求められます。
生成AIの代表的なものは?
テキスト生成AIおよび画像生成AIの代表的なものとしては、たとえば以下のようなサービスが挙げられます。
ChatGPT
OpenAIによって開発されたChatGPTは、対話形式で人間の質問や要望に応えるテキスト生成AIです。ChatGPTは、Web上の膨大なテキストデータを学習しており、ユーザーからの多岐にわたる複雑な質問に対しても、人間のように自然な文章で回答できます。
ChatGPT公式サイト:https://chat.openai.com/
Stable Diffusion
Stable DiffusionはStability AIが公開している画像生成AIです。ユーザーは生成してもらいたい画像の特徴となるキーワード(英語)を入力するだけで、さまざまな画像を簡単に作成できます。
Stable Diffusion公式サイト:https://stablediffusionweb.com/ja
Canva
Canvaは、プロンプトや豊富なデザインテンプレートに基づいて、さまざまな画像やイラストを生成・編集できる画像生成AIサービスです。SNSやブログ用の画像や、ロゴ・アイコンの作成、ポスターや名刺の作成など多岐にわたる用途に活用できます。
Canva公式サイト:https://www.canva.com/ja_jp/
まとめ
生成AIは従来の識別型のAIとは異なり、新たな情報やコンテンツを自ら創造することが可能です。特にコンタクトセンター業務においては、テキスト生成AIを導入することで、顧客対応の自動化や対応品質の向上などの効果が期待されます。コンタクトセンターにおける生成AIの導入効果については、こちらの資料にも詳しく記載されているので、ぜひご参考にしてください。
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