コンタクトセンターはユーザーニーズを把握し、顧客満足度を上げるための拠点として大きな役割を担っています。一方で人材不足など、コンタクトセンターが抱える課題も多いです。本記事では、そうした中でどのようにコンタクトセンターの課題を解決に導くか、そのポイントについて解説しています。
コンタクトセンターが抱える課題
コンタクトセンターが直面している課題とは、具体的にどんなものがあるでしょうか。以下1つずつみていきましょう。
課題1: 対応時間の短縮化
コンタクトセンターには、日々さまざまな問い合わせが寄せられます。そのなかには、短い時間で解決するものや、反対に長い時間をかけて回答していくようなものもあるでしょう。担当オペレーターがいるなら引き継ぎ対応をすることもあります。また、オペレーターレベルで判断できない極めて難度の高い問い合わせの場合、スーパーバイザーへ対応を代わってもらったり、対応についての質問を行ったりすることもあるでしょう。
しかし、このような業務中の行動は顧客を待たせることとなり、必ずしも適切な対応とは言えません。長い間待たされることで、電話を切られてしまうこともあり、これでは顧客満足度は下がってしまいます。たしかに業務に必要な対応なのですが、顧客満足度を上げたいのであれば、少しでも対応にかける時間を短縮化したいものです。
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課題2: 経営層がコンタクトセンターを軽視している
コンタクトセンターは直接的な形で利益を生み出しにくい部署です。顧客の声をまとめて、各部署へ伝え、商品やサービスの改善を促しても、利益を上げたと認められるのは伝達を受け取った部署というケースも見受けられます。そのため、コンタクトセンターの重要性を理解できていない企業も多いです。
コンタクトセンターの果たす役割を正しく理解している企業ほど、システムの導入や表彰制度の充実など、業務の効率化につながる仕組みを構築しているものです。その結果、企業の業績も右肩上がりになる傾向がみられます。コンタクトセンターの位置づけを企業経営に必要な部署とするためには、経営陣の意識を刷新することも求められます。
課題3: コンタクトセンターの品質
パソコンやスマートフォンが普及した現在、顧客は企業に商品やサービスのみならず、コミュニケーションの品質まで期待するようになりました。コンタクトセンターは最初に顧客と接する場所であるため、企業の顔として広く認識されています。その対応で企業の評価が下されやすく、そのまま顧客満足度に反映されてしまうため、コールセンターの応対品質を上げることは急務といえます。
日常的にSNSが使われることから、個人の意見が発信・拡散されやすい環境は整っています。顧客の不満が大きくなれば、企業イメージへの悪影響は避けられません。その結果、顧客満足度は低下し、企業から離れてしまうことでしょう。
課題への対策方法
コンタクトセンターに内在する課題は、企業の経営に直結するものばかりです。これらの課題に対して、どのような対策が必要になるでしょうか。
対策1: オペレーター不足に対する対応
少子高齢化によって社会全体が人材不足にあえぐなか、コンタクトセンターもオペレーター不足に悩んでいます。適切な対応をするためにもオペレーターの採用は必須です。賃金面の優遇や、採用基準を下げることによって、新規オペレーターの確保に努めている企業も多いでしょう。
けれども、単純に人手を多くするだけでは、コストは上がるばかりです。そのため、問い合わせ応対にかかる時間や、応対内容を記録するなどの事務作業にかかる時間を短縮することで、生産性のアップを目指すことも必要になります。
ただし、過度に時間短縮を意識してしまうと、今度は説明不足などといった応対品質の低下を招く恐れも出てきます。オペレーターがフル稼働状態になってしまうことも考えられ、これでは精神的にもよくありません。オペレーター不足を解決するためには、適正な人材配置を心がけることが求められます。
対策2: AIソリューション導入による業務効率化
昨今コンタクトセンターでは、AIによるソリューションが注目を集めています。AIがオペレーターをサポートすることによって、業務の効率化を図り、応対品質を向上させるのです。
たとえば、オペレーターは問い合わせ内容などを記録しています。その際、専用システムを用いる企業も多いでしょう。けれども、この作業には時間がかかるうえに、オペレーターに大きな負担を強いています。
ここで、AIの登場です。音声データを自動でテキスト化し、要約したうえで記録に適した形でデータ保存できれば、オペレーターの業務量は減らせます。そのほかにも、対応中に会話のなかにあるキーワードをもとにして、AIが回答に必要なナレッジや注意すべきポイントを自動的に選出・提示するといった活用方法もあります。
このようにAIの活用によって、まだ経験が少ない新人オペレーターでも、ベテランオペレーター同様の働きができるようになるわけです。
対策3: 内部・外部からの評価活用で品質向上
コンタクトセンターの品質向上のために、定期的に評価制度を利用するのも一つの方法です。
企業の内部で行うときは、基本的にオペレーター個人ごとに対する評価になります。コンタクトセンターの管理者がオペレーターの対応をモニタリングしつつ、あらかじめ定めた指標に基づいてスコア化します。このように応対品質を見える化することで、オペレーター自身もどこに改善点があるか分かりやすくなり、応対品質の向上につなげられるでしょう。
一方、コンタクトセンター全体への評価を得たいなら、外部の専門業者を利用するといいでしょう。第三者的な視点で自社のコンタクトセンターをみてもらえるので、それまで自社では問題視されなかったような事例も明確にできます。そのため、生産性の向上から、ひいては企業の業績アップが叶えられるでしょう。代表的な専門業者にHDI-JapanやJ.D.Powerといった企業があります。いずれもコストがかかりますが、後々取り戻せる可能性を考えれば、利用しない手はありません。
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コンタクトセンターの運営改善にはAI導入がおすすめ
コンタクトセンターの運営改善を目指すにあたって、注目されているのはAIの導入です。AI導入はコンタクトセンターにおけるさまざまな業務の効率化を容易に行えるものとして期待されています。
コンタクトセンターにおけるAI導入のメリット
AIを導入する際に、大きなハードルとなるのはAIに学習させるための十分なデータを確保することです。AIの精度を一定のレベルまで向上させるためには、そのための大量の学習データを準備しなくてはなりません。
その点、コンタクトセンターでは過去の応対履歴といった形で、AIに学習させるべきデータがはじめから揃っています。そのため、新たに学習データを用意する必要が少なく、他の業種に比べれば事前準備の負担は少なくてすむでしょう。
また、運用を開始したあとも、それほど手間はかかりません。通常業務におけるオペレーターの応対履歴を学習データとするだけで、AIの精度をさらに向上させることができます。つまりコンタクトセンターにおいては、少ない負担で高い精度のAIを活用できるようになるわけです。
具体的なAI活用場面とは
オペレーターによる業務は、電話に出る、顧客と実際に通話する、通話終了後に対応内容を記録する後処理業務の3つに分類できます。業務効率化を図って生産性を上げるためには、これらにかかる時間の短縮化は不可欠です。AIを活用することで、これらの課題は解決できます。
たとえば、AIを用いた音声対応システムで問い合わせ内容に合わせた窓口へと顧客を誘導しておけば、オペレーターはどのような問い合わせがされるのか、ある程度予測を立てることができます。それだけでも、業務の効率化にはなりますが、電話に出ると同時にパソコン上に、その問い合わせの解決法などを表示できれば、顧客に待機時間を与えることなく対応ができるでしょう。
また、営業部やマーケティング部などで保存しているものを含め、すべての対応履歴を一元管理できれば、さらに応対品質は高まります。そのほか、AIは顧客のちょっとした発言も取りこぼさずにまとめるため、それが商品の改善や企画のヒントになる場合もあるのです。
導入システムと業務のバランスが大事
AIを導入すれば無条件に業務が改善できるわけではありません。既存の業務とうまくバランスを取りながら活用する必要があります。
たとえばAI導入にあたり、オペレーターが画面上で新たな操作をする必要が生じるなど、オペレーターにこれまでになかった負担がかかり、一時的にでも生産性が落ちることもあります。そうならないためにも、AIによってどういった業務をどのように改善したいのか明らかにしたうえで、必要となるシステムを選びましょう。
説明責任を求める傾向の強い昨今では、仮にコンタクトセンターで誤った案内をすればそれが大きな問題となり、企業イメージを損なう結果にもなりかねません。AIを導入するときには、信頼のおけるベンダーから要望に合う商品を選択・購入すること、ベンダーときちんと話し合うことが必要です。
また、AIを最初に導入するときにPoC(概念実証)を行う企業も多いですが、金銭的にも時間的にもコストが発生してしまい、かえって効率が悪くなることもありえます。数あるAIプログラムの中には、コンタクトセンターでの運用において、すでに相応の実績をあげているものも多いです。それらを自社の状況に合わせて使うことも、効果を速やかに発揮するためには有効でしょう。
まとめ
人材不足や対応時間の短縮化など、コンタクトセンターが抱える課題は多いです。そんな中で、これらの課題を解決するために期待されるのがAIの活用です。AIは、コンタクトセンターの業務を効率化し、オペレーター不足を補うのに役立ちます。コンタクトセンターの課題解決には、AIの活用が近道です。
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