BPRとは、業務プロセス全体を可視化し、抜本的な見直しと再構築を行うことです。生産性向上のほか、コストの削減、作業の属人化の解消、サービス・従業員満足度の向上、意思決定の迅速化など、さまざまなメリットをもたらします。
この記事では、BPRでリソースを見直した事例をもとにBPRの手法や手順について解説します。
BPRとは?BPR成功の定義
BPR(業務改革)は「Business Process Re-engineering」の略で、これまでの業務プロセスや経営戦略などを根本から見直し、顧客や市場のニーズに合うように業務全体を再設計する取り組みです。BPRの目的には、以下のようなものがあります。
- コスト削減
- 生産性向上
- 従業員満足度の向上
BPRによって業務全体を変革することで、無駄になっている業務や人件費などが整理され、コスト削減の他、生産性や従業員満足度を向上させる効果が期待できます。
BPRに類似する言葉として「業務改善」があります。「業務改善」は特定の部署や従業員個人など、業務プロセスの中から一部の課題点を解決することが目的です。BPRと業務改善の違いは以下のように整理できます。
BPR:業務プロセスや経営戦略などを根本から見直し業務全体を再構築する
業務改善:課題のある業務に対して、業務プロセスの一部を改善し業務効率化を目指す
業務改善によって、一部の業務を効率化をすることは可能ですが、業務全体としての変革はあまりみられません。業務改善は、BPR(業務改革)の一部と考えると良いでしょう。
BPRの目的は、業務プロセスを根本から見直し無駄や重複を省くことで効率化し、業務全体の生産性や品質を向上させることです。生産性向上や品質の向上、業務効率化の目標を達成することで、BPRは成功と言えます。
特に、少子高齢化が進み人材不足が問題となっている昨今では、働き方の多様化による従業員の負担軽減も求められています。人材不足の状況下で、従業員の負担を減らしながら生産性を向上させるためには、BPRによる業務の改革や無駄を省いた最適化が必要です。
経済産業省の発表によると、2050年には日本の人口は1億人を下回り、生産年齢人口比率は、ピーク時の約50%にまで落ち込むことが予測されています。生産年齢人口が減少していく中、今までと同じプロセスでビジネスを展開していては、業績縮小は避けられません。
さらに、グローバル化の影響によって、今後も競争が激化していくことが予想されるため、組織構成や社内制度、業務プロセスの抜本的な改革が求められています。
人員配置の最適化を図るために「従業員をコア業務に注力させたい」という課題に対して「システムやツールの導入」によるDX推進という考え方もありますが、そもそも業務プロセスに課題や見直すべき点があった場合、既存プロセスをもとにしたシステム導入では根本的な解決とはならないこともあります。
生産年齢人口の減少、減少する生産性をシステムやツールの導入で効率化を図って補う上でBPRが有用であり、BPRによって従来の業務プロセスを見直すことで、抜本的な業務プロセスの改革とDXの推進による効率化に繋がる土壌が形成されるのです。
BPRを実践する企業の課題
業務全体を再設計する取り組みであり、コスト削減、生産性向上、顧客満足度の向上などの効果が期待できることを解説いたしました。また、業務効率化を目的としたDX推進に関してもBPRは有用でありDX推進による効率化に繋げるための土壌形成に欠かせないことを解説いたしました。
ここからは、実際にBPRを実践する企業は具体的にどのような課題を持って取り組んでいるのか、課題解決に向けてどのようなアプローチを行っているのかをみて行きましょう。
ある企業の営業部門の事例をもとに解説していきます。
取り扱っている商材の販売数を増やしていきたいが、現行の運用のままでは販売数を増やせる見込みがない、という課題をお持ちの営業部門で実施したケースです。
この営業部門では会社の方針で大きな目標を掲げられており、そのようなときには端的に業務改善をするだけではなく抜本的な見直しが有効となります。
事例の企業では、販売数を増やしていく体制を構築したいが、業務が煩雑で誰がどのような業務を実施しているのか、最適なプロセスや体制で実施できているのかが見えていないという状況があり、営業部門を担当していた管理職からBPRコンサルティングサービスを提供しているベルシステム24に相談し、ベルシステム24にて業務の可視化と再設計がおこなわれました。
長年の業務の中で営業活動のメインの業務だけでなく周辺の細かな業務が知らないうちに増えていくことは営業部門だけだはなくよくあることかと思います。
そういったメインとなる業務に注力するために周辺の業務も含め業務を可視化し、課題抽出を行ったうえで業務再設計を行った事例となります。
この事例の背景を整理すると以下の通りとなります。
- 営業活動とその前後工程についても対応する営業部門
- 取り扱い商材の販売数を増加させたい
- 売上目標が高く、実績との乖離が大きい
BPRコンサルティングを提供しているベルシステム24では独自のフレームワークとコンタクトセンター運営で培ったノウハウを活かして、現状分析から課題を特定し、課題解決に向けた業務の再設計を行います。分散していた業務プロセスを集約して、外部に委託することでメイン業務への稼働時間の向上を目的として業務の移管を進めていくことも可能です。また、業務移管後もPDCAサイクルを回すことで、継続的な業務の改善、オペレーションの高度化を図るための提案も行っています。
今回の事例のように営業部門の抜本的な見直しの実績も多く、中長期の戦略を見据えて、営業部門のリソースをよりコアなメイン業務に集中させていきたいという背景から、リソースの分配を変革させる手段として、BPRコンサルティングが活用されています。
BPR実践事例にみるBPRの効果
BPRを実践する企業の課題として、販売数増加のために営業部門のメイン業務へのリソース再配分が課題として挙がっていました。営業部門だけではなく、長年の業務のなかでプロセスが煩雑になってしまう、無駄や重複が発生してしまうというケースはままあるかと思います。
リソースを再配分して最適化するための業務再設計においてどのようなことが行われ、どれぐらいの効果が出たのか、ベルシステム24のBPRコンサルティングサービスの事例をもとにみて行きましょう。
ベルシステム24のプロジェクトの進め方は以下の6つのプロセスを踏みます。
- 計画
- 現状分析
- 課題抽出
- プラン策定
- 設計・構築
- 実行
まずは「計画パート」でクライアントと協議を重ねて、目的の明確化や進め方などの計画策定を行います。その後、対象となる組織の全員が参加するプロジェクトのキックオフを行います。この取り組みの目的や必要性を全員で理解し、意識や方向性を揃えること、また、対象組織のメンバーの働き方がどのように変わるのか、どのように効率化されるのか、組織のメンバーにモチベーションを持って取り組んでもらえるように、組織長からのメッセージをしっかりと伝えて高いモチベーションを維持します。
さらに、ベルシステム24のコンサルタントが実務の現場に入り、クライアントのニーズに合わせて、現状分析から課題抽出、最適化プランの策定まで、順番に進めていきます。現状分析では、今ある資料やデータ類をもとに業務のアウトラインから把握が進められます。アウトラインを把握した後、実務担当者へのインタビューやモニタリングを行って情報収集し整理がされていきます。
プラン策定では課題の優先順位を決め、クライアントと協議を重ねながらグランドデザインを描き、グランドデザインに到達するためのロードマップがまとめられます。 基本的な作業はベルシステム24で行いますが、クライアントとともにプロジェクトを進めていく伴走支援が特長です。さらにコンサルティングだけではなく、業務の設計・構築、BPOなどによる実行まで、一気通貫で対応することができることが強みとなっています。
ある企業の営業部門の事例の場合も、業務に従事しているメンバー一人ひとりにインタビューやアンケートを実施し、実際に業務で使用されている資料や営業部門の中で行われているコミュニケーションの状況などの情報を収集、調査し整理が行われていきました。
その調査結果を、販売数増加に耐えうる体制構築という目的を持った営業部門にとってのあるべき姿と照らし合わせていき、企業にとっても業務に従事している社員にとっても非効率なプロセスで業務が行われていること、業務に従事している社員が本来の役割から逸れるような業務を実施していること、計画達成に向けた仕組みがないこと、という課題を特定するに至っています。
これらの課題に対して、ベルシステム24では一部業務移管を請け負い、受託した業務を実施しながら体制を整理し、PDCAサイクルを回して改善活動を行っていき、営業成績を伸ばすための営業企画に充てられる時間やサービスの運用保守、開発に充てられる時間を確保できるように業務を再設計していっています。
その結果、従来の運用と比較して営業活動に充てられる時間は約7%増加となりました。最終的には従来比で1.5倍の時間がコアとなるメイン業務に充てられるようになっています。
効果的なBPRの実践に必要なこと
ある企業の営業部門においてベルシステム24のBPRコンサルティングサービスによって従来の運用よりも営業活動に充てられる時間が増加する効果が出ていることがわかりました。このような効果を創出するために必要なポイントは何か、併せて確認してみましょう。
今回の営業部門での事例のポイントは、顧客への販売に直結する営業行為だけではなく、ターゲット選定や販売後のアフタフォローなども含めた営業活動全体に対して必要な工程を全て可視化したことです。
営業部門というと販売に直結するような営業活動や営業戦略の検討、立案がメインかと思われがちです。しかしながら、実際には受注後の顧客からの問い合わせ対応であったり、商品を顧客に納品するにあたっての社内の手続き等に忙殺されている、ということも考えられます。こういった前後の工程や関連部門との手続きなども可視化して把握していくことが重要です。
またこの営業部門の事例においては販売した商品の納品に関して、納品作業を委託している協力会社の社員が納品を行っていた関係で、顧客からの意見や要望などのフィードバックを営業担当者がキャッチアップして商品の改善に反映する、他の商品の販売に繋げるなどができない状態となっていたことも発覚しております。
このように営業活動に関わる全ての工程を可視化していくことで、営業戦略を実行する体制についても課題があることがわかっていきます。
こういった課題は営業部門だけではなく、他の組織においても関連部門が多くなればなるほど連携が煩雑になってしまい様々な事象のキャッチアップが遅れてしまうことで改善が後手に回ってしまう、ということがあると思います。業務における前後工程や関連部署との手続きについても広く可視化していくことが本質的にコア業務となるメイン業務の稼働時間を増やすポイントです。
今回の事例のように効果的なBPRには、現状分析が最も重要な工程といえます。
BPRのおけるよくある課題として、現状分析を詳細に行わず、表面上の課題を解決しようとしてシステムの機能ありきでCRMツールやRPAなどによる自動化などをはじめとしたシステム導入を先に進めてしまい、結果作業が煩雑になった、逆に工数が増加したなど、業務改革のプロジェクトが失敗してしまうケースです。
まずは、前後工程も含め抜け漏れなく現状を把握・分析し、課題を明確化した上で、その課題に対する最良の打ち手が何なのか?それを検討することが効果的なBPRの実践には必要不可欠です。
まとめ
生産性向上や品質の向上、業務効率化の目標を達成することを目的にBPRは実践されます。BPRによって従来の業務プロセスを見直すことで、抜本的な業務プロセスの改革とDXの推進による効率化に繋がる土壌が形成されるといえます。
今回ご紹介した事例ではBPRによって営業活動に充てられる時間を向上させることに成功していました。そのような効果を創出するためには対象業務の前後工程、関連部署との手続きも含めて全て可視化し、把握することが最も重要です。
ベルシステム24ではBPRを成功に導き、効果を最大化させるために独自のフレームワークとコンタクトセンター運営で培ったノウハウを活かして、現状分析から課題を特定し、課題解決に向けた業務の再設計を行うBPRコンサルティングサービスを提供しております。
効果的なBPRを実践したい場合は、ベルシステム24のBPRコンサルティングサービスを検討してみるのも良いでしょう。
執筆者紹介
ベルシステム24入社後、通信系クライアントのオペレーション部門にてカスタマーサポート部門のマネージメントを約13年経験。
その後BPR担当部門に異動し、過去の豊富なオペレーション経験を活かし通信系をはじめとした様々なクライアントにおけるBPR業務および業務改革提案を遂行。
直近ではコールセンターだけではなく、営業部門・企画部門におけるBPR案件を数多く対応。
現在は本部内におけるBPR担当部門のマネージャーとしてプロジェクトの全体統括・管理を行っている。
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